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18. 肚の中身が出た後に

 レイアが目覚めると、そこは馬車の中であった。席で横に寝かせられていたらしい。がらがらがらと日がさす中を馬車が走っている。もうすでに日が昇り、気持ちの良い天気だが、レイアは二日酔いのグロッキーな気分だった。ただ、幸か不幸か、レイアは酒を飲んで記憶を失うタイプではないため、昨夜のことはばっちし覚えていた。

「おはよう」

「おはようございます」

 レイアは身体を横にしたまま、向かいでどっかり座っているゲオルクに対応した。大変気まずい。

「今回のことは悪かった」

「何の話です?」

 レイアはゆっくりと身体を起こした。

「……メラが俺の妻のように振る舞っていたことについてだ。俺の不手際だ」

「つまり、メラさんは悪くないと?」

 全てゲオルクの責任と言うならば、メラに咎はなく、よって、間接的にメラを庇っていることになるぞとレイアは少々意地の悪いことを言った。

「いや、メラも悪いが俺も悪い、というより至らなかった」

 ゲオルクは当然のように言い放った。レイアはそういえば、この人はやり手の将軍、客観的分析はお手のものかと妙な納得を得ていた。

「それよりも、いろいろ聞きたいことはあるが……」

 ゲオルクは言いにくそうに続けた。

「……まさか、吐かれるほど嫌われているとは思わなかった」

「その節はごめんしてね」

 さすがのレイアも本心から申し訳ないと思っていた。別に吐くほど嫌いなわけではない。

「それが素か?」

「まあ。おおよそ」

 レイアは平然と、そして、ぶっきらぼうに言った。ゲロをぶっかけた相手にまで猫を被る気力は二日酔いのレイアにはなかった。

「吐いたのを悪いと思うならば、そのままでいてくれ」

「え?」

 何言ってんだコイツとレイアは怪訝な顔をした。

「俺の前ではありのままでいてほしい」

 ゲオルクは一切のおふざけなく、真摯に伝えた。レイアは繰り返し言われても、何言ってんだ?以外感じなかった。

「あの服は捨てたんだ」

「わかった。……ゲオルク」

 あーはいはい、よくわかりませんが、なら、ありのまま?でいきまっせ、呼び捨てでいっちゃうぞとレイアは開き直った。ゲオルクに着ていた服を弁償しろと言われてもレイアは途方に暮れるし、そして、何より、さすがのレイアもゲオルクにゲロをかけたことに多少の罪悪感を感じていたのだ。

「いいな、それ」

「うっわ」

 うげぇ……とレイアは形容し難い顔をした。

「その方がいい」

 ゲオルクは満足そうに頷いた。レイアはドン引いていた。

「俺はあなたが好きなんだ」

「はぁ……」

 レイアはゲオルクの言葉を聞き流した。

「だから、メラや他の女に目移りすることはない。それは信じてほしい」

「へぇ……」

 レイアは興味ないねとスルーし、二日酔いで具合が芳しくないことも相まって、再び身体を横にした。ゲオルクは寝る体勢に入ったレイアを見て、長期戦を覚悟した。



 ゲオルクとレイアとサブリナが屋敷に帰ると、メラは何と!別の男に乗り換えていた。話によると、一目で恋に落ちた、運命の人と互いに感じているらしい。

「私、素晴らしい人を見つけたの!あの人と幸せになるわ!」

 メラは自信満々にレイア達に言い放った。

 ゲオルクはもうこれでメラに煩わされなくてすむと安心した気持ちと大丈夫かなと幼馴染を心配する気持ちが入り混じっていた。

 サブリナはゲオルク~♡のあれは何だったの?一目惚れってあるの?まあ、幸せならいいのかしらと娘の門出に困惑していた。

 よって、双方、微妙な面持ちとなっている。

 レイアの傍にいたデーテはムカっときて、眉間に皺を寄せていた。そして、デーテは主人のレイアの様子を窺った。

「お幸せに……」

 レイアは一筋の涙を溢していた。ゲオルク以上に良い男 (メラ基準) を見つければ、すぐに取っ替える切り替えの早さ、最高だ!心変わりが早いという愉快な浅ましさもあるが、それよりも、何と清々しさのある浅はかさだろうか!人を蹴落とすためではなく、自分の幸せを追い求めるポジティブな理由からもたらされる浅はかさ!新・感・覚!とレイアは感動していた。涙がつぅっと伝うほど心が揺さぶられていた。

 まさかそうとは思わないデーテは、いろいろ割を食っていたレイアがメラの幸せを喜べるなんて素晴らしいと感動していた。そして、他の使用人も、レイアよりもメラの方がゲオルクにふさわしいと考えていた人間も含め、レイアの姿勢に心を打たれていた。






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