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17. お酒を飲んで理性にグッバイ

 事の次第、つまり、将軍夫人の席にメラが座ったため、レイアが静かに憤慨して帰った、ということを聞いたゲオルクは非常に焦っていた。とにかくまずはレイアに会わなければと急いで屋敷に帰ると、そこにレイアの姿はなかった。

「どこに行った!!!」

 ゲオルクは前代未聞、空前絶後の剣幕で屋敷の人間に問いただした。

「その、サブリナ様と旅に出ると言って、お出掛けになりました」

「は???」

 ゲオルクは目が点になった。


 

 ゲオルクが混乱している頃、宿屋の一室、お酒を両手にレイアは素で楽しんでいた。

「そろそろ説明してもらってもいい?」

「えぇ?」

 レイアはシーフナの地酒、小松菜ビールを抱き締めていた。そこそこに出来上がっている。

「なぜ、あなたが私と旅をしたいのよ!」

 サブリナはガンとテーブルにジョッキを置いた。

「ここら辺の土地に明るいって聞いたから」

 サブリナとメラはこの近くで暮らしていたことがあるらしいと、レイアはデーテから聞いていたのだ。

「なぜ私とって聞いてるの!」

「旅行、したことなかったから」

 やや的を外した回答をレイアは繰り返した。ちなみに、レイアはどこかに行くことはあったかもしれないが、観光や楽しんだ覚えが一つもなかった。だから、非日常感を味わえる楽しい旅行に対する憧れがレイアには少なからずあった。

「……私じゃなくてゲオルクと行けば?」

 サブリナは少し気を削がれていた。しょうがないわねと生来の面倒見の良さが顔を出していた。

「いいじゃない。メラさんは邪魔者がいなくなるわけだからさ!私も楽しいし」

 一石二鳥!とレイアは叫んだ。サブリナは娘のメラが意中の人のゲオルクと屋敷で二人きりになれる、レイアは楽しい、ほら良いことづくめということらしい。

「……なぜ、あなたが楽しいのよ」

 サブリナはつまみの煮干しをボリボリした。少々やけになっているようだ。

「正直な話、あなたと娘さんの浅はかさは最高だ」

「は?」

 サブリナから怪訝な声がした。面倒見の良さが顔を引っ込めかけた。

「妻を追いやる手腕、浅はかなシナリオ!何をとっても愉快!あの自信満々さは見ていて爽快だ……。もちろんあなたの高慢な浅はかさもファンタスティック!」

 レイアはべらべらと熱弁し始めた。

「……意味がわからない」

 何コイツとサブリナは頭を抱えた。

「別にそれでいーよ。でも、私はこの状況が楽しんでいるのはわかってほしい」

「とりあえずそういうことにしておくわ」

 諦めたようにサブリナは酒をあおった。

「ありがとう!」

 レイアはにこにことあどけなく笑った。


 それから、じわじわ時間が進み、酒もがばがばと進んでいった。

「で、浅はかさが素晴らしいって何?」

 結局、気になっていたらしく、サブリナはレイアに聞いてしまった。やや頬が赤くなっている。

「素晴らしいから!」

 レイアは酔っ払いらしく、顔が火照り、声が大きくなっていた。大分、酒が入っている。

「あのね……」

「小難しいことは考えたくないや」

 レイアは子供が澄ました顔をするように、変に大人びた顔をしていた。

「だから……」

 サブリナは何かに気付いたように言葉を途切らせた。

「たしかなことは、私はそんな愚かさが大好き!!!」

 レイアはサブリナの様子に気が付かず、大声を上げた。酔っ払いハイテンションスーパードリームである。

「そうだったのか、しらなかった」

 レイアの後ろから聞いたことのある男の声がした。ギョッとして、レイアはシュバっと振り向いた。

「……ゲオルク、様」

 やばっとレイアは一気に酔いが引いた。冷や水をぶっかけられたようだった。

「つまり、ダメなところが好きなのか?」

「……そうかも???」

 酒と突然のゲオルクのせいで、レイアは状況が理解できていなかった。頭にははてなマークが大量に浮かんでいる。なぜここにいる?何の用だ??こいつは何を言っているんだ???

「では、俺のことを好きなってもらうために、ダメなところを見せるよう努力するよ」

「………………」

 ゲオルクが何を言っているのか、レイアには理解できなかった。酒のせいか、レイアの感情のせいかはわからないが、ただ一つ、確かなことがあった。

「……気持ち悪」

 レイアはそのままの姿勢で、ゲオルクの方に口を向けて、嘔吐した。酒のせいか、レイアの感情のせいか、へべれけな頭ではよくわからなかった。

 幸か不幸か、レイアはそのまま寝てしまった。











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