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1. 何事も気の持ちよう?

 レイアは侯爵家の令嬢として生まれてこの方19年、家族からいびられて育ってきた。妹のフローラばかりを優先する両親、姉を心底見下している妹、主人達に追従する使用人、ただ見ているだけの親戚達。これらに傷つき、何故愛されないのか悩んだ日々も今は昔。レイアは人を見下すことで安心する、この浅はかさは実に人間らしくて最高では?と妙な境地に辿り着いた。

「お前なんか産むんじゃなかったわ」

 と、母に言われても、そうやって当たり散らすことで、心を保っているのだな。現状は何も変わらないのにただ喚くとは浅はか浅はかとレイアは楽しんだ。

「こんなこともできないのか、この穀潰し!」

 と、父に言われ、ご飯を抜かれても、できているにもかかわらず、できていないことにする。自分の望んだ結果以外認められないとは浅はか浅はかとレイアは飯代わりにした。

「お姉様にはこれがお似合いよ!」

 と、妹に泥だらけにされ、嘲られても、人を蹴落とすことでしか自分が上位の存在と認識できない。その地位の不安定さにも気付かないとは浅はか浅はかとレイアは鼻歌交じりで泥を落とした。

 そんなハッピーライフを送っていたある日のこと。

「何ですって!」

 母の金切り声が聞こえた。日常茶飯事のことである。苛立った気持ちをそのまま表に出す、とても素晴らしい。

「私は嫌よ!絶対にイヤ!」

 妹の甘ったるい声が聞こえた。何かをお願いする時に使う声音である。人を道具としか思っていないその傲慢さ、大変良い。

「お前を行かせはしないよ、フローラ!」

 父の大きな声が聞こえた。一家の大黒柱振りたい時は決まって無駄に大きい声を出すのだ。無駄な虚勢はどんどん張っていこう!エクセレント!

「レイア!来なさい!」

 家族の浅はかを堪能していると、名前を呼ばれたので、レイアは家族三人がいる部屋に入った。

「ゲオルク将軍から縁談の話がきた。お前が行け、いいな?」

 と、父は言い捨てると、用は終わったとばかりにレイアを追い出した。

 将軍ゲオルクとは若干25歳にも関わらず、数多くの功績を上げ、国王の信頼の厚い、まさに英雄であった。ぱっと見、優良物件のように思えるが、噂によると、傲慢不遜、冷酷無比で野蛮らしい。つまりは、超怖そうで、妻のわがままも意に介しなさそうな唐変木なのだろう。フローラのお眼鏡にはかなわなかったようだ。だからと言って、国王の寵臣からの申し出を袖に振るのも角が立つ。そこで白羽の矢が立ったのが、レイアということなのだろう。嫌なことを不用品(わたし)に押し付ける、お見事!家族の愚かな人間の手本振りを鑑賞できないのは残念だが、行くしかあるまい。それ以外に選択肢はない。

 そのようなことを考えながら、レイアは日課の風呂掃除をこなしていた。








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