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あの夜と星空の思い出

作者: ねこもち

初投稿作品です。

 深夜12時半、俺は今屋上の扉の前に立っている。いつもは開かないドアのドアノブを開かないと思いながらひねる。

「え?開いた?」

いつもは閉まっている扉が今は開いている。混乱しつつも一歩踏み出す。そこには暗い顔をしたどこか生気のない女性がいた。

「誰?」

「えっとあの奏です。」

「いくつ?」

「17歳です。」

「同い年なのね。」

「君は?」

「雫よ。」

「なんでこんなとこに?」

「それはこっちのセリフよ。」

「あぁちょっと外の風を吸いに」

「屋上は立ち入り禁止のはずだけど。」

「それは君も同罪だろ。」

「フフッ」

雫が笑った。

「それ、言っちゃうんだ。」

「というか、君はなんでここにいるんだ?」

「まぁちょとね。色々あって。」

俺は雫が本当のことを言っているとは思えなかった。しかし俺は深く詮索しないことにした。

「そうなんだ」

「意外。もっと詮索すると思ってたのに。」

「まぁ人それぞれの事情ってものがあるからな。てか初対面の人に言う言葉か?それともそう見えてるのかい?君には。」

俺が言えることでもないが。

「ええ。いかにも首を突っ込みそうな顔をしているけれど。」

「それ失礼だと自覚してる?」

「フフッどうかしら。」

「はぁ?」

「フフフッ」

「そういえば奏は高校生よね。こんな夜中に出歩いてていいの?」

「君はさっき僕に同い年だと言ったはずだけど。」

「......」

雫はあからさまに目を逸らす。

「おい?」

「そういえば、私の名前、君じゃなくて雫なんだけど。私だけ名前呼びはどうかしら?」

「名前で呼んだ方がいい感じ?意外とかわいいとこあんじゃん」

「はぁ?」

「はいはいわかったよ。雫。」

「なんだか適当ね。ちゃんぐらいつけてもいいんじゃないの?」

「へぇ、ちゃん呼びされたいんだ。」

「そういうわけじゃないわよ?」

「じゃあいいじゃん。」

「あっ!」

「なに?」

「用事思い出したんだ。帰らなくちゃ。雫ももう遅いんだし早く帰りなよ。」

「保護者みたい。」

「レディへの気遣いのお返しがそれか。」

俺は荷物を背負い直す

「奏」

「ん?」

「ありがとう」

「何が?」

「名前、しばらく呼ばれてなかったから。」

「え?」

「嬉しかった。ありがとう。」

雫は微笑む

「こちらこそ。」

そう言い、俺は屋上を出た。


 屋上の重い扉が閉まる。

俺はそのまま階段にへたれ込んだ。

「なんだよあれ...反則だろ。」

俺は真っ赤に染まった頬を手で仰ぐ。効果があるとは思えないがそうもしないと頬が火傷でもしそうだった。


 そうして俺らは何度かいっしょに話し、仲良くなっていった。


 そしてとある星の輝く夜の日、俺らは今日も屋上で集まっていた。

「雫、今日は流星群なんだって」

「そうなの?私、星好き。」

「そっか。じゃあ今日は天体観測でもしようか。」

「そうね。」

しばらく俺らは空を眺めていた。

「あっ流れ星っ。」

「えっどこ?」

「もう消えちゃった。」

「流れ星って結局消えちゃうんだよね。」

「うん。」

「どうせ消えちゃうんなら生まれてこない方が楽だったりするのかな。」

「そんなことないんじゃないかな。」

「なんで?」

「俺は消えちゃうからこそ一生懸命生きられることもあると思うよ。」

「そう思えたら、楽なのかもしれないわね。」

「消えないでね。」

「それは私が決められることではないわ。」

「雫はずるいね。」


 あの言葉に引っ掛かりを感じながら、帰宅した部屋の中、時計の音で無情にすぎていく時間を感じている。なんだか今日の雫は儚げにみえて、手を離せば消えていってしまいそうで、それが苦しいと思った。でもいつもなにか諦めたような顔をしてるのにたまに見せる暖かい笑顔やどこか芯の強いとこだったりとか、そういうとこについ惹かれてしまう。

 だからこそ

「そろそろなのかな。」


 俺は昨日の決意を胸に抱え扉を開ける。そこにはいつものように雫が立っていた。ただ雫はどこか悲しそうな顔をしていた。

「奏、話しがあるの。」

「奇遇だね。俺もだよ。」

「驚かずに聞いてね。」

「うん」

「私はもうこの世にはいられないかもしれない。」

「つまり?」

「私、もう死んでるんだ。」

「そっか。」

「一年前私はここから飛び降りた。」

「うん。」

「気づいたらここにいて、最初は失敗したんだと思った。」

「だからもう一度飛び降りようと思った。でも飛べなかった。」

「うん。」

「それからは気づいたら朝がきて夜がきて夜が明けていく。そんな日々が続いた。」

「うん。」

「そのときの私は空っぽで何も感じなかった。ただ時間が過ぎていた。」

「そんなとき、奏がここに来た。」

「そうだね。」

「その日から、私は変わった。」

「毎日が楽しかった。」

「居心地が良かった。」

「心が暖かかった。」

「幸せって思っちゃった。」

雫の瞳から大粒の涙が零れ落ちる。

「だからもう私はいかなきゃ。」

「奏ともういっしょにいることはできない。」

「ごめんね。」

「そうだよね。なんとなくは気づいてたよ。」

「奏は勘が鋭いもんね。」

「でも最後に言わせて。」

「あなたが好きでした。最後まであなたの隣にいさせてくれてありがとう。さようなら。」

「奏は....ずるいね。」

雫の体が消えていく。

そして、僕らの屋上での日々は終わりを迎えた。

お読みいただきありがとうございました。わからないことだらけですので教えていただけると嬉しいです。

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