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湯気に煙る藤谷のルーティング

 藤谷は「大体は洗えるけど、背中とか出来ない部分を洗って欲しい。」と、事も無げに僕に言った。

「ああ・・・そう言う事か・・・。」って、僕は反射的に答えたが・・・どういう事?

「良かったら、さっき棚から下ろしたカゴの、隣のカゴからフェイスタオルを1枚出して、君は、それを使って。」

藤谷は、そう言って笑顔になると、足下のカゴから、腰に巻く為の白いフェイスタオルを取った。


 僕は相変わらずの得体の知れない興奮と、気恥ずかしさから、藤谷に背を向け、トランクスを脱いだ彼が、腰にタオルを巻き終わるのを待った。

すると、ポンっと洗濯カゴに彼が脱いだトランクスと思われる物が投げ込まれる音がした。

それから、腰にタオルを巻こうとする藤谷の動きで、ゴソゴソとか、椅子が軋むギシギシとかの音が聞こえていた・・・。

すると「もう、いいよ。」と、藤谷が言ったので、僕は( かくれんぼ じゃないんだから・・・。)と、思いながら振り返った。

藤谷は、ちゃんと腰に白いタオルを巻いた姿で椅子に座って居た。

僕から見える左の方にはタオルの切れ間が無いので、どうやら右側で縛ったらしい。

しかし当然だが、上半身は裸・・・。

小柄で色白で、少しぽっちゃりとした体型の藤谷は、全体に丸みがあって、どこか子供の様にも見えた。

そして、その少し多い脂肪は、胸を少しふくよかに見せていた。

僕は幼少の頃にしか裸の女性の胸を直接には見たことが無く、だから記憶が曖昧だったけど、藤谷の胸は女性のとは違ってるのだが、一般的な男性とも違ってる感じがした・・・。

藤谷が「僕が一度、立ち上がるから、その間にこの椅子をお風呂場に置いて、シャワーを浴びられるようにして欲しいんだけど。」と、言うので「これは、濡らしても大丈夫な椅子なのか?」と僕は聞いた。

藤谷は「これは大丈夫だから持って来てもらったんだ。」と、笑顔で言って、僕に手を差し出した。

それは、僕に立ち上がるのを手伝って欲しいとの意味だ。

上半身裸の男に抱き付かれる・・・又は抱き付いてしまうのはどうなのかと思ったが「それじゃ・・・。」と、僕は藤谷を支える為に、彼の左側で中腰になると、彼の左の脇に両手を入れ二の腕も掴んで持ち上げた。

手に当たる柔らかな藤谷の二の腕と脇の感触が心地好いと思った直後、そこに脇汗を感じられたので、ドキリとした・・・。

藤谷は脱衣場の壁に右手を当てて、バランスを取りながら立ち上がった。

藤谷が「良いよ。大丈夫。」と、言うので、僕はゆっくりと手を離して彼のバランスを見て、それから折り畳み式の椅子を引き抜き、浴室の扉を開けて中に入った。

そこはタイル張りではなく、システム・バス・ルームっていう感じの今時の浴室だった。

床には高さ40センチ程の石鹸ラックが置かれ、そこにボディーソープ等やシャンプーのボトルが並んで置かれてた。

浴室に入った僕は、シャワー・ヘッドの取り付け位置をざっと確認して、適当な場所に椅子を置くと、直ぐに藤谷の元へと戻った。

そして、また彼を抱える様にして、一緒に移動し始めようとしたのだけれど、服を来てる人なら色々な掴み方があるのに、素っ裸に極めて近い人は掴める所が少なくて、介助するのに迷った。

それで僕は『こちらが、藤谷のどこを掴んだら良いのか?』と『藤谷は、どこなら掴んでも良いと思ってるのか?』が判断できなくて混乱し、あたふたしたのだ。

すると、それを察したのだろう、藤谷が「ちゃんと、しっかり支えて。」と、ハッキリ言ってきた。

いや、言ってくれた。

僕は「ごめん。なんか、遠慮した。」と言うと、自分の右手を藤谷の背中に回し、彼の右の脇腹の下の方に手のひらを密着させて支えた。

僕の右手には、彼の柔らかでモチモチとした肌の感触が伝わった・・・。


 浴室の椅子に藤谷を座らせると、僕はそこに置かれた石鹸ラックを彼の手の届く所まで寄せた。

彼は直ぐに「ありがとう。」と礼を言うと「取り敢えず・・・頭から全身にお湯を掛けて。」と言った。

彼の左側に立って居た僕は、シャワーヘッドを左手に持って、混合栓の温度設定の位置を確認して調節すると、右手で混合栓のハンドを回しお湯を出した。

そして、少しの間、お湯の温度が上がるのを待った。

するとシャワーが作り出す水の放物線に湯気が見え始めたので、僕はシャワーを手に当てて、丁度良さそうな温度になったところで、シャワーを藤谷の手のひらに当てた。

「湯加減はこれで大丈夫か?」と、僕が藤谷に聞くと「良いよ。」と彼が言ったので、僕は自分にお湯が掛からない様に気を付けながら、彼の頭からシャワーを掛けてあげた。

藤谷は目を閉じて黙って座って居た。

僕は、藤谷の全身にシャワーが当たるようにと、自分の身体の位置を変えたりした。

藤谷に当たったお湯は、一部が弾けて線香花火の様に無数の光の玉を作り、放物線を描きながら浴室の床に落ちて行った。そして、彼の身体を伝うお湯は、いくつもの流れとなって、その丸みのある柔らかな身体の形に合わせて這い、多くは床に流れ排水口へと流れて行った。

しかし、一部は腰に巻かれた白いタオルの中に、小さな池を一時的に作り出した・・・。

すると、その小さな池を形成してる彼が腰に巻いた白いタオルは、お湯に濡れて、彼の体にぴたりと張り付き、その下の肌の色と、股の周囲の色と形とを透かし、そして浮き彫りにしてしまった・・・。

その透けて見える黒っぽい下腹部と、ぷっくりとした細長い膨らみに、僕は目のやり場に少し困ったものの、そう意識する自分の方が逆におかしいとも思い、彼のタオルの形と色とを、チラチラと見たり見ないだりしていた・・・。

藤谷が「一回、止めて。」と、言ったので、僕はハットとして、シャワーを止めた。

実際はビクッとしてたのかも知れないが、藤谷は目を閉じてたので、それは見られて無い筈だと思った。

藤谷は、自分の顔に着いてるお湯を両手でピッピッと払うと、シャンプーのボトルのポンプを押してシャンプー〔液〕を手に取り、自分の髪に馴染ませた。

すると僕の顔を見上げて「せっかくだから、洗って欲しいんだけど・・・。」と、言った。

「え?それも?」と僕が言うと「だって。そこにずっと立ってられるより、その方が落ち着くし・・・それに、人に頭を洗って貰うって、凄く気持ち良いから・・・。」と、藤谷は言葉の最後の方は顔をうつ向けながら言った。

それは彼が自分で言って恥ずかしくなったのか、それともシャンプーが目に入ったからなのか解らなかった。

僕は(確かに、床屋とか美容院で頭を洗って貰うと、とても気持ち良いからな・・・。)と思い、彼の頭を洗ってあげる事にしたのだけれど、ここで僕は自分は制服姿だと改めて思った・・・。

それで、僕は制服の両方の袖を(まく)った。

そうして腕捲りをして、藤谷の洗髪をやりはじめたものの、制服が濡れないように洗うとなると、最初は少し腰が引けた。

それでも、シャンプーは粘り気があり泡立つので、やってみると意外と楽だと気が付いた。

それで僕は少し調子に乗って「痒い所はありませんか?」と、冗談交じりに藤谷に聞いた。

藤谷は「特に無いですが。全部です。」と言って笑った。

「全部か・・・。」と僕も笑い、そして指の腹を使って、彼の髪の毛の根元をマッサージするようにゴシゴシと洗ってあげた。

藤谷は染々(しみじみ)とした感じで「凄く・・・気持ちいい・・・。」と、言った・・・。

そうして僕は3分ほど藤谷の頭を洗ったところで「これぐらいでどう?」と、言うと、彼は「うん。ありがとう。」と、言ったので、僕はシャワーのお湯で、彼の頭で泡立ってるシャンプーを、洗い流し始めた。

前屈みになってる藤谷の身体を、今度は白い泡混じりのお湯が伝って落ちて行った・・・。

シャンプーを洗い流し終えると彼は「タオルで背中を洗って欲しいんだけど。」と言った。

僕はこの時になって、タオルを持って来てない事に気が付いた。

それで「ごめん。タオルを取って来る。」と言って、一度、ドアを開けたままにして、隣の脱衣場へ行って棚からタオルを取り出すと、それを手に戻ろうと、浴室の中を覗いた。

すると藤谷は、少し前屈みになって、リンス液を手に取って髪に馴染ませようとしていた。

僕が背中を洗ってる間に、リンス液を髪の毛に染み込ませるつもりらしい。

僕は、浴室の床が滑りにくいのは分かってたけど、それでも滑って転ばないように気を付けてながら、浴室に戻った。

そして、彼の前にある混合栓のハンドルをカランの方に回して、吐水口(お湯も出るのに吐水口とは、なぜだろう・・・。)から出るお湯でタオルを濡らした。

そして僕が「ボディーソープをタオルに着けたいんだけど。」と藤谷に言うと、彼は「僕が出すよ。」と言ってボトルを手に取ると、僕が広げたフェイスタオルに2回プッシュした。

タオルを軽く揉んで石鹸を泡立てながら、僕は藤谷の背中に周った。

藤谷の背中は、なだらかな曲線を描いて、芸能人やネットで見る女性のボディーラインとは、対極的な何かを感じさせた。

首から肩に掛けての柔らかな曲線とか。

背骨が窪んで見えて、脇の辺りと脇腹がちょっと膨らんで・・・。

タオルを巻かれたお尻も、椅子に乗せられた圧力で横に膨らみ、白いタオルと相まって、大きな餅のようにも見えなくも無かった。

僕は又もドキドキしながら、握ったタオルを彼の背中に押し付けた。

そして、力を加減しながら、擦り始めた・・・。

「こんな感じで良いか?」

僕が藤谷に聞くと、彼は「うん。とても気持ちいい・・・。」と、リラックスした感じの声で答えた。

それから少しの間、僕は無言で彼の背中を擦ってあげた。

タオルを通しても、藤谷の背中の感触は柔らかくて心地好かった。

そうして背中を洗い終えた僕は「あとは、自分で洗えるか?」と、聞いた。

藤谷は「ありがとう。あとは自分で洗うよ。」と言ったので、僕は彼に石鹸で泡だったタオルを手渡した。

藤谷は、最初に顔をゴシゴシと洗った。

それから、そのタオルを左手に持って、左側に差し出す様なポーズを取ると「頭に着けたリンスと一緒に洗い流して。」と、僕に頼んだ。

僕は、頼まれたとおりに、流してあげた。

彼は、泡立ったタオルにシャワーが当たらないようにして居た。

次に藤谷は首から洗い始めて、手や腕を擦ってから、腕を横に開いてワキを洗った・・・。

それから柔らかそうな胸の形を少し歪ませながら擦って洗い、これも何だか柔らかそうなお腹も洗った・・・。

それから、脚を洗うのだろうと待っていたら。

藤谷は動きを緩めて、少し考えてる様に見えた・・・そして「脚も洗って欲しいんだけど・・・。」と、言った。

「あし・・・も?」(だと!?)

(脚を洗うとなると、ちょっと色々と見えてしまうのでは・・・!?)

僕は、動揺して、藤谷の顔を見た。 

僕を見た藤谷は「なんか・・・石鹸でお尻が滑って危なそうだし、片足を持ち上げて洗うのもバランスを崩しそうだから・・・。」と、何だか上目遣いで言ってきたのだった・・・。

「確かに・・・しょうがないか・・・。」と、表向き平静を装って答えた僕だったが、藤谷の手から石鹸で泡だったタオルを手渡された瞬間に、指名の・・・いや、使命の重さを感じずには居られなかった・・・。











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