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君の足指 僕 色ぬって・・・。  作者: 天ノ風カイト


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生ぬるいプール

『ぼっち死』しそうになってた僕は、藤谷と言う名の天使によって救われた。

そして僕は、リア充になろうとしていた!


藤谷は僕の視線に戸惑ってる様だったが、僕がそれに気が付くには後少しの時間が必要だった。

 僕が彼の姿の全体像を把握するのに時間が掛かったからだ。

それは、暫く僕が彼の爪先に見惚(みと)れてしまって居たからだった・・・。


 藤谷の爪先から可愛らしい足、足首、(すね)、少し赤みのあるひざ、ちょっぴり豊満な太股、そこから色々と大事な部分を隠す青い水泳パンツが邪魔だったが・・・その謎を隠すパンツのお陰で、その前の小さな膨らみが強調されてる気がする・・・!・・・ので許す!!

そのパンツの上には、これもちょっとポッチャリとしたお腹の肉が、パンツのゴムと紐に締め付けられて、盛り上がっていた。

そして小さなヘソ・・・。

更に上には、多くの男女に平等に取り付けられて、二輪の薄紅色の花が咲いていた・・・。

『この可憐な花は、真夏の炎天下の下に晒してても良いのか?色々と大丈夫なのか・・・?』って、僕は思った。

それは性的な心配と、日焼けして黒くなってしまわないかっていう心配だった。

先の方の心配は、本当は全く問題無いのは僕も分かっていた。

それなのに心配するというのは・・・僕は彼の胸が誰しもが見れる状態で晒されてる事に、嫉妬したのだ。

そして後の方の心配は・・・それは何だか本当に心配になってきたのだった。


「あ・・・あの・・・。」


端から見ると動きを止めて固まったまま、彼の胸を凝視して居た僕は、藤谷のその声で我に返って、彼の顔まであと少しだった視線を一気に上げた。

そこには藤谷の不安気(ふあんげ)な表情と視線があり、その視線は真っ直ぐに僕の両目に向けられていたのだった。

彼に見詰められていた事に気付いた僕は、もう一度視線を戻して、彼の指先や手や腕、そして何よりも、女性的な盛り上がりと曲線をした鎖骨や、肩からのしなやかな曲線から繋がる首筋など、色々じっくり堪能する事が出来なくなってしまった。

それは勿論『これ以上、藤谷の身体を見続けたなら、彼の不安は(いぶか)しみへと変化するだろう・・・。』って思ったからだった・・・。


そんな状況で僕が彼の顔を見ると同時に、さっきまで静かっだと感じてた二人だけの世界には、辺りのザワメキを越えた喧騒と言える騒音が、まるでスピーカーの音量を一気に上げた時の様に僕の耳に聞こえ始めた。

(そうだった・・・ここは市民プールだった。)

僕は、自分でも『何を今さら。』って思う事を思った。


「なんか・・・人の多さに圧倒されちゃうね?」

藤谷は苦笑しながらそう言うと、僕の方を見た。

「そうだな・・・確かに。」

藤谷には『何て事も無い』という振りをしたが、確かにそうだった。

(何を隠そう、僕は君が来る少し前まで、辺りのリア充の圧力で『ぼっち死』しそうになったのだからな・・・。)と、僕は思った。

「ねえ?何しようか?」

藤谷のその言葉に、僕は(二人で何をするって・・・それはプールdeデートってヤツなのでは・・・?)って思ってから。(いやいや!これはデートでは無い・・・。男同士の友情とかってヤツを深め合う『通過儀礼』とかってヤツの一環だ。)って思った。

後で思えば、そう無理に思ったのだ。

そして、そもそも年頃になってから一度だって異性とのデートをした事の無い僕は、それよりはもっとハードルの低い筈の『同性の藤谷とのプール遊び』という事でも、いきなりの大舞台に上がってしまったのと同じ様な感覚である事に気が付いた。

それなのに僕は、全くの『ノー・プラン』だった・・・。

『仲の良い二人が市民プールに二人で来たら、それで楽しくなるだろう。』って、勝手に思ってたのだ。

「な・・・(なに)って・・・プールなんだし。泳いで遊ぶんだろ?」そう言った僕の声は、少し上ずってただろうか?

「う~ん・・・でも・・・こんなに人が居たんじゃ、泳げるスペースは無さそうだよ?」

藤谷の言葉を聞いて僕は改めて辺りを見渡した。

『芋洗い状態』って言葉を聞いた事があるが、目の前の流れるプールの光景は、まさにそれなのだろうと思った。

いや。

『まさに』って言うには、僕の経験は足りてなかった。

それは、僕は母さんがキッチンでボウルに張った水で芋洗いしてる程度の光景しか見た事が無いからたった。

(ポテトチップスやフライドポテトの工場でも見学してたら、本当の芋洗い状態を見られるのだろうか・・・。)

僕はそんな事を思いながら流れるプールを見渡した。

沢山の人達が浮き輪や浮き袋なんかを使ってプカプカと浮いたり、手で水を掻いたりしながら歩いたり。そうして、ゆっくりと、ひたすらに左回りに流れて行く光景は『楽しそうな人々』って言うよりも『楽しもうと頑張って居る人々』っていう光景とも、思えなくも無かった・・・。

「僕達も、あの中に混ざる?」

そう言った藤谷の顔は、困惑してるってよりは、僕の反応を楽しんでいるって感じだった。

だからきっと、この場では藤谷の方が余裕があるのだと思った。

僕はそれに戸惑いながら「え?・・・いや・・・。そうだな・・・。」と言って、彼に気後(きおく)れしながら、もう一度この市民プールの全体に目を向けた。

近くの流れる芋洗いプール。

その向こうの少し離れた所に見えるウオーター・スライダーへと続く長い階段には、長い行列ができていた。

左側を見ると、遠くに沢山の小さな子供達が集まって大騒ぎしてるのが見えた。そこは子供用プールのようだ。

子供達に混ざって居るのは、きっと、その親達なのだろう。

「どうしよっか?」

尚も困惑してる僕の直ぐ隣に来た藤谷は、そう言って僕の顔を覗き込んだ。

「いや・・・そうだな・・・。取り敢えず、試しに二人一緒に流されて見ようか?」と、僕はどう見ても楽しそうに思えない流れるプールを見ながら、苦し紛れの提案をした。

すると藤谷は「うん!」と、なぜか満面の笑みになった。

僕は一瞬、そんな藤谷に困惑した。

しかし、その反面、彼の笑顔を見たことでホッとした。

それは『友人と外で遊ぶ』という、慣れない事をしてる自分が『何とか、良い選択を選べたらしい』という安心感からだったろうと思う。

藤谷は僕の方を時々振り返りながら、流れるプールの水際へと歩いて行くと、そこのプールの端でしゃがみ込んだ。そしてプールの(へり)に腰掛ける格好で両脚を下ろすと、脚だけを水の中に漬けた。

その一連の動作と後ろ姿は、何とも可愛らしかった。

「あは!・・・何か・・・!」

藤谷は、大きな声でそう言って上半身を(ねじ)って、僕の方を振り返った。

その表情は、(くすぐ)ったいのを我慢してる様な感じだった。

彼はその表情のままで、僕を手招きした。

僕は(水に何か問題でも?)と思い、ちょっと焦ったが、表向きは何食わぬ顔って感じで彼の近くへと行った。

(なん)か変なのか?」と、僕が藤谷に訊くと、彼は潤んだ目をして僕を見詰めて、左手でトントンと『自分の隣に座って』という仕草をして僕を誘った。

僕は、そんな藤谷の『仲が良い人にする仕草』に少し回りの視線が気になり、プールで流れてる人達に目を配ったが、(みんな)、他人とぶつからない様にするのに気を使ってるらしく、自分の周囲以外は殆ど見てない様子だった。

僕は藤谷の右隣に座った。

そこにはプールの(へり)とか(きわ)とかって場所で、当然、水に濡れていた。

真夏の日差しで焼かれた床。

そこに、同じ理由(りゆう)で温められたプールの水が(こぼ)れる様になってるので、僕の水泳パンツには『何とも言えない生ぬるい水』が、染み込んで来た・・・。

それは、尻の方から染み渡って上がって来て、股間に広がった・・・。

「ど・・・どう?」と、藤谷が涙目の表情で僕に聞く。

「どうって・・・。」

そう聞かれた僕は内心、ハッキリ言って気持ち悪いって思った・・・。

目の前で流れてる行く大勢の人達の体温や汗や、その他諸々(たもろもろ)が、そこに溶け込んでるような気がしなくも無かったからだった・・・。

「夏・・・真夏の屋外プールの水なんて、どこもこんな感じだろ?」と、僕が言うと、藤谷は「そうかなぁ・・・もっと、気持ち良いって思ってたんだけど・・・。」と、困惑してるしてるようだった・・・。

「だいたい、こんな水温になるから屋外プールは夏しか営業できないんだから、これだけ(ぬる)いのは、真夏の風物詩って事だろう・・・(多分きっとだけど)。」

「そうかな・・・生ぬるくって、ちょっと気持ち悪いよ・・・。」

せっかくのプール遊びなのに、尻込みしてる藤谷に僕は「しょうがないな・・・。」と言って、座った姿勢からプールの縁に両手を着き体を持ち上げ尻を少し浮かせた。それから、そのまま尻を前へと滑らせると、プールの水にドボンっと漬かった。

水深は、僕の胸の下位(したぐらい)だった。

中学生の時に、このプールに入った時には、もう少し深かったと思って居たので、僕は自分の背が・・・いや、脚が伸びていた事に少し驚き、そして嬉しくなった。

不思議な事に、身体の殆どを生ぬるい水に漬けてしまうと、さっきまでの気持ち悪さは消えてしまっていた。

それで僕は「プールに入ったら、意外と気持ちいいよ。」と、まだ尻込みしてる藤谷を見て言った。

「ええ?そうなの?」

「ああ・・・自分でも意外だったけど、そこの中途半端な位置が良くないと思う。だから藤谷も全身入ったら良いよ。」

「そっか・・・じゃあ。」

そう言うと藤谷は、僕の真似をするようにして両手を床に付いて尻を持ち上げると、そのまま滑り台から滑り落ちる様にして水の中にザブンと身体を落とした。

彼を中心に跳ね上がった水しぶきが、僕の顔にかかったので、僕は思わず目を細めた。

「うわ・・・脚だけ入れてたから、温いのは分かってたのに・・・本当に温いね・・・。」

プールの中に立った藤谷は、僕に向かってそう言うと苦笑いした。そして「じゃあ・・・後は、どうしたら()いんだろう?」と僕に聞いた。

よく見ると僕よりも小柄な藤谷は、肩まで水に漬かって居た。

「どうしたらって・・・それは。流れるプールなんだから、立ち止まってたら邪魔だろうし・・・取り敢えず二人一緒に流れるか・・・。」と、僕は彼に言って、流れるプールの流れに乗ってゆっくりと歩き始めた。


 どう見ても、この『流れるプール』は泳げる場所では無かった。

かと言って、25メートル・プールへ行ったとすると、そこはひたすらに泳ぐか、歩いて運動する為の場所なので、水泳部でも無ければ運動不足を解消するのが目的でも無い僕らには向かないと思った。

ウオータ・スライダーの方を見ると、そこも長い行列・・・。

他に遊べそうなのは、噴水広場前みたいなプールだろうか・・・?

しかし、あそこは子供の為のプールなのでは・・・?

流れるプールで歩きながら、僕は辺りを見渡し(まだ来たばっかりの僕らは、流れるプールも楽しめて無いのだから、暫くはこのまま流されてても良いだろう・・・。)と思った。

いや、思うことにした。

そうして前を見ると、水面から出た藤谷の後頭部と背中が目の前だった。

いつの間にか彼は、周囲の人にぶつからない様にと、犬掻きと平泳ぎを混ぜ合わせたような奇妙な泳ぎを僕に披露してくれて居た・・・。

(何だろう・・・小動物的な可愛さがあるなぁ・・・。)

僕はそう思うと、はぐれないように彼の背中を追った。


 藤谷は時々、犬掻き平泳ぎを止めては、プールに足を着いて僕の方を振り返った。

人が多いので僕とはぐれないか心配してるのだろう。

それは僕も同じだった。

だから僕も藤谷を見失わない様にと、常に彼の直ぐ後ろに付けて居たのだ。

お互いの距離が近いので、僕は泳ぐ彼の足に蹴られない様に気を付けた。

それで僕は自然と、彼の肩や背中を見続ける事になって居た・・・。

すると僕は突然。

(色白の彼の肌が、炎天下に晒され続けるのは肌に良くないんじゃ無いか?)って思ったのだった。

(藤谷・・・日焼け止め塗ってるのか?)

そう思った僕だったが、自分は日焼け止めを塗って無いし、塗るつもりも無かったので持っても無かった。

僕は(自分の事はともかく・・・藤谷の為にも日焼け止めを買って持って来れば良かったな。)と、思い、少し後悔した。


「藤谷?」彼の直ぐ後ろにも関わらず、辺りの喧騒に負けない様にと出した僕の声に、藤谷は少し驚いた感じで犬掻き泳法を止めた。そして「え!?・・・なに?」と言って、僕の方へと振り返ると、ゆっくりと後ろ歩きを始めた。

しかし、水中で後ろ歩きをするのは中々困難なのか、彼は両腕を小さく開いて手の平を水掻きとして小さく使いながら後ろへ下がった。

僕は、その動きを何処かで見たきがした・・・。

(何だろう・・・。そうだ・・・クリオネ?・・・クリオネだ!)

冷たい海に居る筈のクリオネが、今。僕の目の前で、生温かいプールで泳いでるのだ。

そう思ったら、藤谷の動きはとても可愛らしく思えた。

しかし僕は、目まぐるしく変わる周囲の状況で、今はそんな思いに浸ってる余裕が無いと思った。

それで、今の二人の距離感が気になったのだ。

後ろ姿の藤谷も近かったが、泳いでる彼の姿勢との関係で、彼の顔は向こうを向いてたし、頭の位置も少し遠かったのだが、目の前でこちらを向かれると、その顔も身体もとても近くなったので、僕は自分の鼓動が早まるのを感じならがも、こうなったのは、意味あって藤谷を呼び止めたからなのだと思い出した。

それで僕は藤谷彼に質問した。

「藤谷は・・・その・・・日焼けは気にしないのか?」

僕のその質問に「え?・・・。あ・・・うん。・・・気にしてる。」と、彼はちょっと照れた感じで答えた。

「えっと・・・じゃあ。日焼け止めは塗ったのか?」と、僕は照れ臭さを隠すようにしながら聞いた。

「うん・・・さっき、君を待たせてる間に、ロッカー・ルームで一人で塗ったよ。」

藤谷のその答えに「そっか・・・なら良いんだ。」と、僕は一安心したのか、それとも落胆したのか自分でもハッキリしない感じで言った。

それで僕は心の中で(それは・・・良かった・・・。)と、改めて思った時。

「でも・・・。」と、藤谷が僕を上目遣いで見た。

「でも?」と、訊き返した僕は(下心を見抜かれた!?)と、内心、不安になった。

すると藤谷は「でも・・・肩の後ろから背中は、手が届かなかったから塗れてないんだ。」と、自分の背中に手を回す動きをして見せた。

(そ・・・そう!それだ!)って僕は思った!

「そ・・・そっかぁ・・・それなら、ちょっと一度、プールから上がろうか。」そう言った僕の言葉に藤谷は「?」って表情をした。

「それなら、藤谷が塗れなかった所を僕が塗ってあげるよ。」

そう言ってしまった僕は、直後、藤谷がどう反応するかと不安になった・・・。

しかし、だった。

「え?・・・良いの?」

僕は一瞬、藤谷の言葉を聞き違いしたのかと思った。それから立て続けに彼が「本当に塗ってくれるの?」と聞いたので、僕はそこで「もちろん良いよ。」と、安心を少し超えて湧き上がる嬉しさを隠しながら答えると「じゃあ・・・一緒に上がろう。」と彼に言った。

そして僕は、殆ど無意識に彼の手を水中で掴んでいたのだった。


 それは僕が藤谷を先導して、プールから上がろうとしたからだったのだけれど、後で思えば、それは藤谷と自分への口実の様な言い訳を頭の片隅に用意しての行動だった・・・。

だから同じく後で思った。

『この時、僕が握った手を藤谷が拒絶してたら、二人のその後は、どうなってたのだろう?』と・・・。



 つづく!!

 

つづく!

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