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君の足指 僕 色ぬって・・・。  作者: 天ノ風カイト


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22/27

不覚転じて仰角と成すも、最後は見惚れて俯角をとる・・・。

藤谷と二人で市民プールへと泳ぎに行く日。

その日の朝。母さんの声で起こされった僕は、昨夜の自分の浮かれた心情を呪った・・・。

 この日は仕事が休みだった母さんが、1階の玄関近くにある階段の所から僕の部屋に向かって「藤谷君が、迎えに来てるよー!」っと、叫んだ声を僕はベッドの布団の中で聞いた・・・。

その声で突然に起こされた僕は、文字どうり飛び起きた!

こんな事になってしまったのは、母さんは今日の藤谷の訪問を知ってたのに、僕を前もって起こしてくれてなかったからなのは言うまでも無い。・・・ってのは僕の言い訳って言うか、自分の不甲斐なさから目を逸らそうとしてるだけだったのだが・・・寝惚けて思うように動かない身体を引き()る様にしてよろめ駆け出す僕は、そんな勝手な事を思いながら、部屋を飛び出そうとしてドアノブを目掛けて走った。


 寝惚け半分の僕は、部屋のドアを開けて2階の廊下へ飛び出すと、そのまま階段を途中まで駆け下りた!

その下には、玄関で僕の寝坊を藤谷に謝りながら待つ母さんと、そんな母さんに恐縮してた様子の藤谷が、階段を駆け下りる僕の足音を聞いて二人で見上げて居た・・・。

二人の突き刺さるような視線で階段の途中で一旦動きを止めた僕は「ごめん!藤谷!直ぐに準備する!」と言うと、僕は呆れ気味の母さんの表情と、驚いた表情の藤谷とを尻目に、二人の返答も聞かないままで更に階段を駆け下りると、そのままの勢いでシャワーを浴びに、玄関からリビングや風呂場へと通じる短い廊下をダダダッ!と駆け抜けた。

そしてこの時になって、僕は玄関で待つ二人の視線を背中と尻の辺りに感じ・・・(そうだ!Tシャツにボクサー・パンツだけの姿だった!)と、今更に思ったのだった・・・。


 そんな朝から失態を晒してしまった僕は、藤谷と二人で市民プールへ向かう道中、昨夜まで想像してた期待感とは、かけ離れた状況に少し落ち込んで居た・・・。

しかし、そんな僕の落ち込みとは無関係に、有り難い事か何なのか、今日も真夏の暑さは健在だった・・・。

ニュース番組で言う『()だるような暑さ』は、今日の僕には歓迎だった。

『藤谷と二人して市民プールへ行くからだ!!!』

そんな『落ち込み 後 晴れ』みたいな心情となりつつある僕の服装は、黒地に白のプリン柄のTシャツに、膝丈のズボンだった。

対して藤谷の服装は、青い襟付きの半袖シャツにグレーの短パン、それに黒いキャップを被っていた。

藤谷は、僕が彼を待たせたにも関わらず上機嫌だった。

それは不本意ながら、ついさっきの僕の慌てようが面白かったからだ・・・。

藤谷は、僕と一緒にバス停へ向かう時も、乗車したバスの中で二人並んで座ってる時も、バスを降りて市民プールへ歩いて向かってる時も、僕との他愛ない会話の途中で、急に一人でクスクスと思い出し笑いをするのだ・・・。

それでも、僕の寝坊と、その後のシャワーや着替えで我が家のリビングで待たされた藤谷は、母さんがお茶を出して時間を持たせてくれたとはいえ、内心は怒ってても仕方無い事を笑って許してくれてるのだと思おうとした僕は、最初の内はホッとして、その次には我慢して、そして最後には釘を刺した。

「今日の僕の失態で笑って良いのは、今日だけだからな?」

家の近くのバス停からバスに乗って市民プールまでたどり着いた僕は、藤谷と一緒にプールの利用券の券売機の前に並ぶ前に『いい加減にしてくれないと、僕は不機嫌である。』と、藤谷に伝える為に、僕は、そう言ったのだった。

にも関わらず藤谷は「そうだね・・・。」と一度、真顔になったあと「でも、あの姿は・・・。」と言ってクスクスと笑い、更に続けて「それに、あの後ろ姿がもっと・・・!」と言って、今度はお腹を抱えながらクスクスと笑い出したのだった・・・。

そんな藤谷の姿を横目に券売機の前へと向かった僕は、本当に不機嫌になって券売機で自分の利用券を買ったのだけれど、その時に僕の後ろに並だ藤谷が、グッと笑いを(こら)えてる気配がしたのが本当に嫌だった・・・。


 「ごめん、ごめん・・・。」

僕と並んで市民プールの脱衣場のロッカーを使う藤谷が、今更になって僕に謝ってきた。

しかしすっかりと不機嫌である僕は、直ぐに返事をする気になれなかった。

だから無言で服を脱ぎ始めた・・・。

「怒ってる?」

服を脱ぎながら、藤谷は僕にそう言ったら。

僕は「ちょっとね。」と、彼の方を見ないで答えた。

「ちょっと笑い過ぎちゃったか・・・。」

藤谷はそう言って「ふぅ~・・・」っと、自分を落ち着かせるためと思われる息をゆっくりと吐いた。

それから藤谷は急に無言になると、着替えを始めた。

僕は、周囲を気にしながら、そんな藤谷の姿を横目で見た。

僕らの近くでは誰も着替えたりしてなかったが、見通せる範囲には数人の大人が居たし、水着に着替えながら賑やかにしてる、小学生らしき三人のグループも居た。

僕の方を上目遣いで見る藤谷は、ボタンの無い襟つきの青い半袖を脱ごうとして、両腕を袖から抜いたところだった。

彼の額と首筋には少し汗が浮き上がってるのが見えた・・・。

「ちょっと待て。」

とっさに言った僕のそんな言葉に、藤谷は少し驚いた様子で動きを止め、僕の顔を見た。

それは、僕の中にまだ不機嫌さが残ってたので少しぶっきらぼうな言い方だったからだと思う。

「あ・・・いや・・・。」

僕は『怒ってるから、そう言ったのではない』と伝えたくて、そう言った。

それから、僕を見たままで動きを止めて居る藤谷を横目に、僕はロッカーの中に入れてあった鞄からバスタオルを取り出すと、藤谷の顔や首筋に浮き上がってた汗を拭いてあげた。

その(あいだ)、藤谷は驚いた表情のまま、僕にされるがままだった。

「これで脱いでも良いぞ。」

僕がそう言うと、藤谷は「帰りに身体を拭くのに使うバスタオルなのに・・・僕の汗で汚しちゃダメじゃない・・・。」と、少し困惑した様子だった。

僕は「藤谷の汗が汚いと思った事は無いから、そんなこと心配するな。」と言って、彼の汗を拭き取ったバスタオルをロッカーの中のハンガーに掛けた。

そして、脱ぎかけの青い半袖をマフラーの様にして首に掛けたまま動きを止めて僕を見てる藤谷を横目に、僕は全裸になった。

そこで「あ・・・。」っと言った藤谷は、急に僕から目を逸らして自分のロッカーに向き直ると、そそくさと半袖を脱ぎ始めた。

藤谷が動きを止めてた事で、結果的に先に水着に着替え終えた僕は、ロッカー・ルームに置かれてる平らなベンチに座って、彼が着替え終わるのを待つ事にした。

その位置は、藤谷の少し右斜め後ろ。

特に狙った位置では無かった。

しかし、そこは藤谷が着替えるのを『少し見上げるように』間近で見られる!って事だってのに気が付くのに、僕が数秒も掛からなかったのは言うまでも無い!

(こ・・・これは何だ?・・・。無意識に取ったけど・・・ベスト・ポジション!?)

そう思った僕は、これは最初から狙ってた構図って訳では無いから、少なくても、『ここまで』は意図も悪意も何も無かった筈だった・・・。

だが、しかし!!

にもかかわらず!!

今からでも『じゃあ、僕は先にプールに行ってるよ。』とか言わないで、ここに居座る僕は、矢張(やはり)言うまでも無く『藤谷の着替えを間近で見たいから居座ってる!!』って事に他なら無かった!!!

(しかも・・・少し見上げる感じで藤谷の・・・お・・・お尻を!?)

藤谷もきっと、これは居心地が悪いって思ってるのだろうと、彼が少しモタモタしてる着替えの動きから感じとっていた。

きっと彼は、僕の事を笑い過ぎてしまったという『負い目』があるのだろう。

だから僕に『見られてると着替え憎いから先に行ってて。』とか、なかなか言えないのだと思う。

僕は『彼の、そんな心理につけこんでいる!』のだ・・・。

我ながら(僕は、何て悪い奴なんだ。)って思ったが・・・『悪い奴!』・・・それさえも今の僕には、どこか悦に入った思いを助長させる言葉に思えた。

(だからと言って、僕は卑劣漢(ひれつかん)じゃ無いぞ!)って心の中で言い訳をしたのは、矢張(やはり)後ろめたさがあったからだったろうと、後になってから思った。

それは、自分でも意味不明な言い訳だったからだ・・・。


 青いシャツから頭を引き抜く形で、それを脱いだ藤谷は、上半身はその下に来てた白いTシャツ姿になると、脱いだ青いシャツをロッカーの中に2つ並んでぶら下げられてたハンガーの1つに掛けた。

彼の斜め後ろからの僕の視線を意識してる藤谷は少し戸惑ってる様子で、動きが少しぎこちなかった・・・。

僕はそんな小さな藤谷の動揺を感じとり、今朝から僕が彼に笑われ続けてた立場が逆転してる事に優越感を覚えた。

続けて藤谷は、下着の白いTシャツに手を掛けた。

(ここは、短パン(した)の方から脱ぐかと思ってたが・・・。)

そんな僕の勝手な希望的予想を尻目に、藤谷は上半身だけ裸になった。

僕は斜め後ろから見てるので、今は藤谷の白い背中しか見えない。

しかし僕は、その彼の身体の前の方が見えないと言う、見たい部分が隠されてるという光景に、奇妙なワクワク感を覚えた・・・。

僕は(藤谷が着替える動作を背中から見るのって・・・しなやかにカーブする白い背中とかが・・・とてもキレイに見えるんだな・・・。)と、同姓でありながら、同姓と思えない緩やかな曲線美をもつ彼の背中に、見入ってしまって居た・・・。

着替えを続ける藤谷は、次も僕の予想・・・と言うか僕の期待に反して、靴下を脱ぎ始めた・・・。

僕は、彼の身体つきだけではなくて、その仕草の全てが他の男子よりもしなやかな印象を与えるって事に、改めて感心して居た。

そして、椅子に座ったまま腕組みをしてる僕は(うん~・・・何か、やっぱり可愛いって感じがするよな・・・。)と思って、そんな自分の感じ方や考えに一人で困って居た・・・。

そして、いよいよだった。

藤谷が腰の短パンに両手を掛けたのは・・・!

(きたー!!)

僕はベンチに座ったまま、無意識に上半身を乗り出して、藤谷の尻に注目した!


「あ・・・あの・・・。」


腰の短パンに両手を掛けながら、腰をひねって上半身だけ僕の方に振り返った藤谷は、少し赤面しておずおずとした感じでそう言った。

そんな彼の顔を見た僕は「な・・・なんだ?早くプールに行こうぜ。」と言った。

「『行こうってぜ』って・・・。君、何か言葉遣いが変だし・・・。それに、そこでじっと見られてると、着替えづらいって言うか・・・。」

「言うか・・・?」

「正直に言うと、ずっと我慢してたんだけど・・・後ろからジッと見られながら着替えるのは恥ずかしいよ・・・。」

そんな藤谷の当然と思える言葉に僕は「男同士なんだから恥ずかしいって事も・・・。」と、言った僕の言葉を(さえぎ)って「い!良いから・・・!先にプールに行ってて!」と、藤谷は少し大きな声で言うので、僕らは、同じ並びのロッカーで着替えたりしてた数人の大人の男性や、それまで騒いでた小学生らしき三人組からにまで注目されてしまった・・・。

それでベンチでの居心地が悪くなった僕は、半ば藤谷に押し切られて、彼の右斜め後ろから、彼の着替えを間近で見られる最高のポジションから追い出されてしまう感じになった・・・。


実際、こんな人気の多い場所では、僕の行動の不自然さはより目立ってたのかも知れない・・・。

僕は改めて、そう思った。

だから、これ以上『これ』を続けるのは出来ないので、仕方無かった。

だから・・・なんて言うか・・・『とっても残念』だった。

(あと少しだったのに・・・。)

僕はそう思いながら、脱衣場からプールへの入り口へと向かった。

そこの途中には、シャワー・ルームがあるので、僕はそこで身体を洗い、藤谷よりも先にプール・サイドへと向かった。


 真夏の休日のプールは、まだ夏休みでも無いのに人で一杯で、様々な音と、話し声と、歓声が入り交じり、僕は(もし、こんな所に『ぼっち』で足を踏み入れてしまってたのなら、きっと僕の精神は秒(さつ)さてれて居ただろう・・・。)と思い、リア充の圧力の恐ろしさを、自ら発するフォースを使って、辛うじて凌ぎ、耐えて居た。

(大丈夫だ・・・藤谷が・・・合流する迄の辛抱だ・・・!)

プール・サイドで、夏の太陽に照らされて仁王立ちし、辺りの群衆から放たれ、僕に向かって『押し寄せる陽気』に当てられない様に耐える僕の額や背中には、冷や汗が滲んだ・・・。

(どうした!?藤谷!?・・・まだか!?・・・まだなのか!?・・・まだ僕にこんな悲惨な光景に耐えろと言うのか!!?)

僕がそう思った時だった。


「ごめん。待たせたね。」


それは、辺りの騒がしい雑音を、いとも容易く突き通して僕の両耳に届けられた『藤谷の透き通った声』だった。

僕は、その救いの声に迷わず振り返った。

ブルーの水泳パンツを身に付けた藤谷。

真夏に舞い降りた天使の様な藤谷の姿。

その可愛らしくハニカム彼の顔と・・・そして、両足の指に塗られた淡い紫色のペディキュア・・・。

藤谷の足指は、僕の視線を意識してなのか、少し落ち着かない様子でニギニギとされていた。

僕は彼のその動きに合わせて変化する、貝殻の裏側のキラキラの様な光を放つペディキュアのキラキラと薄紫色を見ていた。


夏の日差しの下では、薄紫色のペディキュアは少し濃くなって見え・・・それは僕には藤色に見えた。

(藤谷の色・・・藤色・・・。)

僕がそう思った瞬間だった。

辺りの喧騒が・・・突然・・・消えた。

僕ら二人は二人だけの世界に入ったのだ。

不思議と僕は、この小さな異空間に驚かなかった。

それはきっと、一瞬で居心地の良い空間に入れたからだったと思う。


それは僕の錯覚だっただろうか?


藤谷はそうじゃなかっただろうか?


二人だけの居心地の良い異空間。

それは真夏の市民プールの喧騒の中に突然に現れた二人だけの静寂の世界。

そこでは、一瞬がゆっくりと流れた。

そんな所で僕は、恥ずかしそうにモジモジとする藤色の足の指の動きとペディキュアをただ眺めて居た・・・。


 つづく。


つづく!!

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