表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
君の足指 僕 色ぬって・・・。  作者: 天ノ風カイト


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

21/27

うら若き男子は、一人の夜はいつも悶々とする

僕は突然、藤色にプールに誘われた。

それには、どんな意味があるのだろうか?

高校生の男子二人だけで行く市民プールって・・・一般的には楽しいのか分からない。

でも僕は、とても楽しそうに思えた・・・。

それは、きっと男子は男子でも、藤谷と二人で行く市民プールだからだ・・・。



 土曜日の放課後の藤谷の部屋での勉強会の時に、僕は藤谷に「明日は一緒にプールに行かない?」と、誘われた。

それは屋内プールでは無く、夏季限定の屋外市民プールの事だった。

その誘いを断る理由(りゆう)など、一つも思い当たらなかった僕は、彼の提案を驚きと喜びの表情を押さえながら快諾(かいだく)したのだった。

約束の時間は午前8時半。

藤谷が僕の家まで迎えに来てくれる事となった。

思えば、藤谷が明日の朝に僕の家に来るのなら、それが初めて彼が僕の家に来るって日になる。

僕は、明日のプールも楽しみだったが、そんな事も嬉しく思っていた・・・。


 藤谷家の玄関先で、僕が藤谷に見送られて帰宅する夕暮れ・・・。

徒歩で家に戻る途中の僕は、押さえ切れなくなりそうなワクワクとする気持ちを感じていた。

きっと、時々すれ違ったり、後ろから歩いて来る他人の目が無ければ、僕はワクワクを押さえ切れずに爆発させて跳び跳ねたり、奇妙な踊りをしてたかも知れない・・・。

そんな、僕の頭の中は(日曜日は土曜日の翌日である。だから一晩寝れば、また藤谷に会える・・・。)と、当たり前過ぎる事と(市民プールって言っても、屋外のプールだからな・・・真夏らしい遊びかぁ・・・。)と、特別な事とが待っているって事がごちゃ混ぜになった思考を繰り返していた。

そして、僕は意気揚々と帰宅した。

帰宅後にシャワーを浴びた僕は、仕事から帰った母さんが作ってくれた夕食を、食卓テーブルに向かい合って座る母さんと二人で食べてた。そして、その時に僕は「明日は藤谷と一緒に市民プールへ行って来るから。」と話した。

母さんは「そう。危ない事はしないようにしてね・・・色んな意味で。」と、僕を辛かったが、それは『水遊び』の事なのか、『プールに居る女子』とかとの事なのか・・・或いは、それとも『僕と藤谷との関係』の事なのかが、分からない事を言ったので、僕は返答に困って苦笑いした。

すると、そんな僕を見た母さんは「ニュースに成るような事故とかは勿論嫌だけど・・・。」と前置きした後に「変な事件に成らないように・・・気を付けてね。」と、更に意味深な事を言った。

僕は「分かった。兎に角、『何も無い』ように気を付ける。」と答えて、その場を誤魔化して食事を続けた。

それから食事を終えた僕は、母さんと僕が使った食器を洗い、2階にある自分の部屋に入ると、藤谷とのお勉強をする様になってから、帰宅後にする様になった勉強の復習を短時間だがした。

そして、明日のプールに備えて、部屋のクローゼットの中の引き出しから、黒色の水泳パンツと、同じく黒色の水泳用のインナーを探して取り出した。

今年は一度も使って無かった水着だったが、去年にしっかりと洗濯してたので、キレイなままだったので(カビでもあったら急いで洗濯しなくては・・・。)って思ってた僕は一安心した。

思えば、今日に限っては、勉強の復習よりも、こっちの準備の方が先だったのだが、最近のルーティンに馴れてしまってた僕は、プールへの大事な準備を後回しにした自分に、少し焦った・・・。

(去年の備えが、こんな形で今日の役にたつとは・・・。)

そんな気持ちで去年の自分の行動を振り返った僕は、そう事を思った。

そして、去年。僕がこの水着を仕舞う時に、こんなワクワクとした気持ちで水着を探して手に取る事になるとは思って無かったとも考えて、ちょっと不思議な気持ちにもなって、少しの間、手を止めて水着を見て居た・・・。

それから気を取り直した僕は、明日への用意の続きを始めた。

水泳帽や水中ゴールと、それらを入れて持ち運ぶ為のナイロン製の巾着袋も揃えて準備した。

((あと)・・・足りないのは・・・お金ぐらいか?)と、思った僕は、独りでクスクスと笑ってしまった・・・。

それは高校生では自由に使えるお金が限られてるって思いからの自虐的な笑いでもあったが、同時に『明日の僕はリア充組の仲間入りなんだ』って思いからの笑いでもあった。


 その(あと)は、僕は、いつもの対戦型のビデオ(テレビ)・ゲームを始めた。

そうして、これも何時ものルーティンとしてのゲームをしてる内に、時間は夜の10時を過ぎていた・・・。

僕はゲームをしてる時でも、頭の片隅では、明日の藤谷とのプールでの事を思って居た。

それはマッチングが成立する迄の間や、対戦中のちょっとした()で思った。

(藤谷は、明日もペディキュアを塗ったままで来る・・・。あの色に気が付く人は居ないと思うが・・・それでも、気が付く人も居るかも知れない。それが、全くの他人なら、きっと『ほっとかれる』だろうから、良いが・・・。もしそれが、僕らが通う学校の同級生だったら・・・どうなるだろうか?)

そう考えた僕は「それが、同級生だったら・・・僕は、どうするだろう・・・。」と、呟いた。


僕は、その時に、藤谷(かれ)の見方になれるだろうか?


それとも、自分はペディキュア(それ)に気が付かないままで、藤谷と一緒にプールに来たと言い訳するだろうか・・・?


先の方の選択は、勇気と覚悟が要るだろう・・・。

対して後の方の選択は、その後の僕の立場は守られるだろうけど・・・それは藤谷を見捨て・・・裏切るって行為になる・・・。


『僕は藤谷を裏切れないと思った。』

藤谷のペディキュアの事で、僕がクラス・メイトに変な目で見られたり、学校の噂の(まと)になってしまう事よりも、藤谷との間に修復不可能な亀裂が入ってしまう事のほうが、怖いと思った。

そして、そうした消去法的な考えよりも、やはり『僕は藤谷を裏切りたくない』って思った。

だから、その時の僕の選択は、もう決まってると言って良かった。

だけど、人は『その時に成らなくては、どんな選択をするのか分からない。』って言われたりする。

実際、僕の短い人生の過去を振り返っても、自分を嫌悪する選択をした事は何度もあり、その度に、自分の弱さに打ちのめされて、自信を無くしたりもした・・・。

だから、僕は藤谷を守りたい!・・・って言うか、藤谷と同士に成りたいって思った。

「後は・・・僕の覚悟しだいって事なのか・・・。」

そう呟いた僕は、ゲーム機のコントローラーを握りしめながら、目の前のモニターに写し出される対戦ゲームの状況に対して、(なか)ば反射的に操作をして居たのだが、その呟きと同時に建物の影から飛び出して来た対戦相手に、秒(さつ)されてしまったのだった・・・。

そこでゲームをやる気を無くした僕は、明日に備えて早々に寝る準備を始めた。

そして、夜の11時前にはベッドに寝転がり、布団の中に入って目を瞑った・・・。


 気が付いたら、深夜の1時を過ぎていた。

たった今、ベッドの枕元に置いてたスマホの時計を見たらそうだったのだ・・・。

気が付いたと言っても、それは『たった今、目が覚めた』って訳では無かった。

ずっと眠れなかったのだ。

それは明日、藤谷とプールへ行くことを思っての事だった。

不安と期待・・・。

男同士で高校生がプールに行く事に期待する事と言ったら、多くは『異性との出会い』じゃないだろうか・・・?

そうでなければ、ちょっと寂しい二人組となってしまうような気がする。

それとも今の時代はもっと進んでるのだろうか・・・?

僕と藤谷は『時代の最先端』を行ってるって事になるのだろうか・・・?

(いやいや・・・。最先端ってそれは、どんな意味なんだ?)って僕は思った。

それは『異性を必要としない友人の集まりでの遊び』なのか?

それとも『同性との親密な関係性を深めるための遊び』なのか・・・?

僕は、自分でも変だと思ったが、僕と藤谷がプールに行く理由(りゆう)は、単に二人でプールで遊ぶって意味を超えてる・・・いや『越えるんじゃないか。』って思った。

いや、それは、藤谷がそう思ってる訳では無いのだろうけど・・・だから、それは『僕の期待』でしか無いのだろう・・・。

僕が藤谷に期待してる想い・・・。

それは・・・自分でも信じ難い事だけど・・・。

(僕は・・・藤谷に・・・好きになってもらいたいのか・・・?)

そうだった・・・。

僕は、それをどこかで誤魔化そうとしてた・・・。

自分は、女の子を・・・『女の子だけを恋愛対象とする』んだと思って生きて来た・・・。

でも、もし・・・それが違っていたら?

女の子が恋愛対象なのは、僕の性的な好みからして明らかだった。

それは、これまで、全く疑った事も無かった。

しかし、あの日、サッカーで捻挫した藤谷に付き添って、そして彼の家まで送って・・・そして彼の裸同然の様な姿を見て、触って洗って・・・。

その時から、僕は藤谷のあらゆる部分に引かれてしまった・・・。

それは、今までの男友達に魅力を感じると言った意味とは、まるで別次元の意味で引かれてたのだ。

藤谷の性格や考え方、そして・・・(からだ)も・・・。

(もしかして・・・僕は、藤谷と改めて知り合ったあの日に・・・。)

「藤谷を・・・好きになったのか・・・!?」

深夜の自分の呟きに、僕はこれまで一度も感じた事の無い、心臓の高鳴りと胸の軋みを感じた・・・。

それは、漫画やアニメで見知ってる・・・『恋に落ちた反応だった』



 翌日の日曜日の朝。

藤谷が僕を迎えに来た時。

僕は爆睡していた・・・。

それは、深夜から明け方に掛けて、僕が藤谷の事を色々と思って眠れなかったからだった。

つまり、自分の気持ちに気が付いて異様な興奮で寝付けなくなり、その悶々とした堂々巡りのような想いが少し収まったのが明け方で、僕はそこで疲れて果てるようにして眠ったらしいのだ・・・。



 つづく


つづく!

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ