藤谷はペディキュアを二度塗る
手応えのあったテストが終わっり、そのテスト期間も終わった放課後。いつもの様に藤谷と二人で彼の部屋で過ごしてた僕は、これまでの高校生活の中で、最も楽しい時を感じてた居た・・・。
ペディキュアを落とした藤谷の足の親指の爪は、彼本来の色合いを見せてくれた。
そこの外側の多くは綺麗な薄桃色で、爪の生え際は半月形に白くなっていて、健康的なツートーンになっていた。
僕はこうして彼の家に勉強をする為に通ってたので、靴下を履いてない藤谷の爪先のその色合いは見慣れてる筈だった。
僕は正直なところ、ペディキュアを塗った爪も好きだが、藤谷の爪なら、何も塗って無い儘の色の方が魅力的なんじゃないかって思わないでも無かった。
しかも今は、ペディキュアが塗られてるその他の指との色のアンバランス差のせいで、本来の色何だかとても色っぽく見えるので尚更だった。
きっとそれを例えるなら『パンモロ』よりも『パンチラ』の方が惹き付けられるっていう定義に似てるのかも知れない。
いや、僕はパンチラを見たことがあるけど、残念な事にパンモロは見たことは無いので、それは、あくまでも世間一般的な定義だと思っての事ではあるのだが・・・。
「こんな感じで落とすんだけど、あまりやり過ぎると爪が白くなったりするから注意が必要らしいんだ。」
藤谷はそう言って、一応のやり方は見せたっていう感じだった。
僕は「親指以外は落とさないのか?」と、ペディキュアを足指1本だけ落とすのは変だろうと思って聞いた。
勿論、僕は今のアンバランスな感じも気に入ってるので、それは表向きの質問である。
藤谷は「ん?・・・う~ん、そうだね・・・。また同じペディキュアを塗るか・・・それとも全部落とすかな・・・。」と答えた。
それを聞いた僕は「それなら、僕にそのペディキュアを塗らせてくれないか?」と言った。
藤谷は「え?・・・他人に塗ってもらった事は無いけど・・・キレイに塗れるの?」と言うので、僕は「そこまで不器用では無い。それに、中学生の頃までは、たまにプラモデルとか作って、色塗ってたりもしてた。」と答えた。
藤谷は少し考えた後「それなら・・・お願いしようかな・・・。」と、不安と期待を織り混ぜたようにしてハニカンだ。
それから、腰掛けてたベッドから立ち上がった藤谷は、学習机から薄紫色のペディキュアを取り出し、僕に手渡してくれると、それから又、ベッドに腰掛けた・・・。
僕は藤谷の前に片膝立ちになると、ペディキュアのキャップを緩めて、ローテーブルの上に置いた。ペディキュアのキャップの筆を、片手で取り出せるようにしたのだ。
「えっと・・・足はどうしようか?」と、藤谷が少し困ったように聞くので、僕は「僕が左手で支えるから、右足を預けてくれ。」と言うと「ええ・・・?そんな方法なの?」と、またも困ったっという表情をした。
僕は「何も問題ないだろ?」と言って、半ば強引に藤谷の右足を左手で掴んで持ち上げ、一度、自分の目の高さまで持ち上げて、彼の爪先を観察した・・・。
藤谷は「そんなに近くでジッと見られると・・・。」と、僕に不満を言ったが、僕はそれでも、彼の足を間近で見るのを止めなかった。
(やっぱり藤谷の足って・・・男の足ってよりは、子供の足って感じがするな・・・。それに、ちょっと柔らかな輪郭とかが、女の子ぽいって感じもする・・・。)
僕は胸が少しドキドキするのを感じながら、そう思った。
それから、藤谷の足をペディキュアを塗り易そうな高さに持って支えると、右手でペディキュアのキャップを摘まんで持ち上げ、小瓶を倒さないように気を付けながら、筆から余分な塗料を小瓶の中に落とした。
そして慎重に、藤谷の右足の親指にペディキュアを塗り始めた。
藤谷の長四角い爪に合わせて筆をなぞらせる・・・。
二人とも無言のままの作業は、すこし奇妙な感じがした。
それは、ちょっとした儀式のような感じがしたからかも知れない・・・。
「これで良いかと思うんだけど?」
僕は、まだ右手にペディキュアのキャップを持ったままで、藤谷に聞いた。
藤谷は上半身を前に倒して、自分の爪先をジッと覗き込んでから「うん。キレイに塗れてるね。」と言って、満足気な表情をしてくれた。
それを聞いて一安心は僕は、右手に持ったペディキュアのキャップを慎重に小瓶に戻した。そして、塗ったばかりのペディキュアを乾かそうと思い、フーフーと息を吹き掛けた。
すると藤谷は「ん・・・くっ・・・擽ったいよ・・・。」そう言って、藤谷は切なそうに身を捩ったので、それで僕は興奮してしまい、彼の親指を更に口に近づけると、さっきよりも強く息を吹き掛けた・・・。
すると藤谷は「う・・・くくぅっ・・・くっ・・・ん」って、擽ったさを我慢できなくてなのか、何だか変な声を出したので、僕は密かに抱いていた欲望が突然芽吹くのを感じた。
僕が意を決するのに、一度、息を吹き掛けるのを止めた。藤谷は「そ・・・ん・・なに、しなくても・・・。」と言いながら、ハァハァと呼吸を整えていた・・・時だった。
「ふぁ・・・あ・・・!」
それは藤谷が出した、もっと変な声だった。
それは僕が、彼の右足の小指を咥えてしまったからだ。
だから彼は、そんな声を出したのだ(と、思う)。
僕は藤谷の足の小指を口に含んだのは、親指はまだペディキュアが乾燥して無いからだった。
いや、そうじゃ無くて、僕は藤谷の『そんな声』をもっと聞きたくなったから、彼の足の小指を口に含んだのだ。
そんな思考に至ったのは、自分でも不思議だったが、それは男の子の本能的な何かだったのだろう。
そして、彼の小指を口に含んだのだから、次にする事は決まっていた。
だから、極自然に僕は藤谷の足の小指を舐めた・・・。
「ひゃ・・・ちょっ・・・い・・・ひゃ・・・」
僕は口の中に少しの塩気を感じた。
不思議だった。
こんな事をしたら僕は、藤谷に蹴飛ばされるのでは?と思ったのに、藤谷は僕が足の指を舐めるのを、苦悶の表情で見るばかりだったからだ・・・。
「そんなこと・・・汚いよ・・・。」
それが、藤谷の抗議の言葉なのか、それとも僕の行為を受け入れてるからの言葉なのか、僕には分からなかった。
しかし、火を灯してしまった僕のロウソウは、先っぽの熱でダラダラと溶けながら更に熱を発して僕を駆り立てるので、僕は彼の足指を舐めるのに夢中になってしまった・・・。
「はぁ・・・ちょっっと・・・まっ・・て・・・まって・・・!」
小さく踠く藤谷は、言葉では拒んでいたが、行動ではなにもしてこなかった。
僕が彼の右足を掴んで放さないのは事実だけど、彼がもっと本気で足を引き抜けば、きっと僕は彼の足を掴まえてられなかったからだろう。
だから僕はそれを良いことに、彼の足の小指から、薬指、そして、その足指の股へと舌を差し入れた。
「!・・・っ!!」
藤谷が息を止めたのが分かった。
右下を見ると、彼の左足が爪先立ちになってフルフルと震えて、僕の行為に耐えてるのが感じられた・・・。
(どこまで許してくれるのだろう・・・。)
僕はそう思いながら、咥えてた藤谷の足の小指と薬指を吸った。
それに反応してくれたのか、彼の指先が僕の口の中でギュっと握られ、僕の舌と彼の足指が絡みあった・・・。
二人のその行為は、少しの間、繰り返された。
藤谷の足指と、僕の舌先の交わり・・・。
見上げる様にして、僕が藤谷の顔を見ると、彼は目を細め睫毛を震わせながら、潤んだ瞳を僕から隠してるように見えた・・・。
僕はハモニカを吹く時に唇を滑らせるようにして、藤谷の爪先を左から右へと滑らせると、今度は足の中指と人差し指を咥えて舐めた・・・。
それでも彼は、僕を蹴飛ばしもしなければ、強引に足を引き抜こうともしなかった・・・。
ただ悶えながら、耐えて居た・・・。
いや、もしかしたら、僕の行為を受け入れてくれて・・・そして、もしかしたら・・・藤谷は・・・これが・・・?
「だ・・・め・・・」
それは藤谷が言った、拒絶の言葉だったろうか?
それでも僕は止めなかった。
止められなかったのだ・・・。
藤谷の足の味、そして、微かな風味に似た匂い・・・。
(甘酸っぱくて・・・少しショッパイ・・・。)
部屋には、僕が藤谷の足を舐める音と、彼の息づかいが溢れた・・・。
「それ以上は・・・だめ・・・だめだよ。」
ハァハァと肩で息をしながら、やっとの思いで言った感じの藤谷の言葉に、僕は彼の爪先に口付けたまま、一度、動きを止めた。
藤谷は涙目になりながら僕の顔を見ると「ハァ・・・親指は・・・ハァハァ・・・まだ・・・ハァ・・・乾いて・・・無いから・・・。」と、乱れた呼吸を整えながらそう言った・・・。
僕は「乾いて無いのは・・・親指だけじゃない・・・小指も、薬指も、中指も、人差し指も・・・全部だ。」と言った。
藤谷は、肩を震わせ息をしながら「そう・・・だね・・・。」と言って、うつ向いた・・・。
彼の顔はもう、真っ赤だった・・・。
そんな彼の仕草を見た僕は、急に罪悪感が沸き上がって来るの感じ、彼の爪先から口を離した・・・。
そして、彼がローテーブルに置いてたコットンの入った袋を右手で引き寄せ手に取った。
そして、その中からコットンを少し摘まんで千切ると、彼の足に付いた僕の唾液を拭き取った・・・。
僕がそうしてる間、彼は恥ずかしそうにしながら無言だった・・・。
「ごめん・・・。」
サスガにやり過ぎたと思った僕は、藤谷に謝った・・・。
「ううん・・・。」
藤谷はそう言って首を降った。
そして「別に・・・嫌じゃ・・・。嫌じゃ無かったから。」と言って、それから黙ってしまった・・・。
僕も、そんな彼の言葉の意味をどう理解して良いのか、混乱した・・・。
(いやいや!・・・まてまて!・・・「嫌じゃ無かった」ってのは、僕を責めない為の言い回しであって・・・「無かった」じゃなく「無かったから」って・・・「から」って・・・!?・・・え!?)
その後に何が続くんだ!?って、思った。
少し冷静になった筈の僕は、僕の中の謎の衝動に驚き戸惑った。
それと同時に、藤谷の言葉の意味や、さっきまでの反応にも混乱した・・・。
(ええっと・・・なんでこんなんなったんだっけ・・・?)
藤谷の爪先を拭き終えた僕は、気まずい雰囲気に耐えながら、彼の右足を床に置いた・・・。
それは、まるで『さっきまでの二人の間にあった事は、無かった事にしよう』と、互いに伝えようとした行動に思えた。
それは、少なくとも、僕はそうだったから・・・そう思っただけなのかも知れない事だっただろうか・・・?
それから少しの間、僕は片膝立ちのまま、彼の濡らした爪先を見ていた・・・。
子供の様に柔らかな曲線を描く藤谷の白い足は、見てるだけでも軟らかそうだった。
僕の口の中には、さっきまで舌先で感じてた藤谷の足指や、その足指の股の感触や味や風味が甦ってくるのを感じた。
僕は、藤谷に気付かれないようにしながら、口の中に溢れた唾液を飲み込んだ・・・のだが・・・緊張の為か、思いの外、喉が鳴った・・・。
「ねえ・・・?もう・・・乾いたかな?」
藤谷のその言葉に、僕は部屋の中に張り詰めていた空気が急に和らぐのを感じた。
「え・・・?ああ・・・。」と、ホッとしながら言った僕は「もう、ヌルヌルしたりしないのか?」と聞いた。
ハッと慌てた表情をした藤谷は「そうじゃ無くって・・・ペディキュア・・・。」と言って、一度、赤みが引いた顔を真っ赤にした・・・。
それで僕は内心では慌てたが「あっ・・・そうだな・・・。」と言って、彼の右足の親指の爪を少し触った。
そして、乾いた感触を確かめると「ああ、もう、乾いてる。」と言って、片膝立ちの体制を崩し胡座をかいた。
すると、長い間、片膝を床に付いてた僕の脚は、思ったよりも痺れて痛んだ・・・。
「いててて・・・。」と僕が言うと、藤谷は「大丈夫?」と聞くので、僕は「ああ・・・大丈夫、だいじょうぶ・・・。」と言って、膝を摩った。
それから僕は「ごめん・・・汚しちゃって。」と、藤谷の足を唾液で汚した事を謝った。
すると藤谷は「汚れたなんて思ってないよ・・・。」と、言った・・・。
その答えに僕は、内心、驚いた・・・。
でも僕が言ったのは「そうか・・・。」と、それだけだった。
それなのに・・・藤谷は・・・「そうだよ。」と、言って、笑顔になった。
それでも僕は、藤谷に僕の唾液を足に付けたままで居させるのは悪い気がした。
だから「それでも・・・藤谷はいつものルーティンをするんだろ?」と言った。
藤谷は、少し困った様な表情をして「ふぅ~ん・・・。」っと息を吐きながら考えると「そうだね。それだけじゃ無くって、その・・・汗も流したいから・・・シャワーに行こうかな?」と、『そう決めた』って感じじゃなくて『僕に同意を求めてる』という感じで言った。
それでも僕は「そうしなよ。オヤツでも食べながら待ってるから。」と言った。
そんな僕の言葉に、藤谷はなぜか少し寂しそうな表情をすると「うん。」と、小さく頷いて立ち上がり、僕に背を向け部屋を出て行った・・・。
シャワーから戻った藤谷は、ついさっきまでの雰囲気とはまるで違って、一人で楽しそうだった。
それは、さっき二人でした行為を無かった事にしようか、どうしようかと迷ってる感じに僕には見えた。
それは、僕との友情が壊れてしまうのを恐れてるからだと、僕は感じた。
何故なら、僕がそう思ってるからだった。
『だけど』だった・・・。
僕は、さっきの続きがしたかった。
それは『今直ぐ』では無い。
いや、本当は今直ぐしたい・・・。
でも、やっぱり、今直ぐは違うと思った。
だから・・・。
「明日・・・一緒にプールに行かないか?」
そう言ったのは僕だった。
それまで、はしゃいで僕に喋ってた藤谷が、驚いた表情で僕を見た。
それから、僕から視線を外して下を見た藤谷は「でも・・・。」と、言った。
「男二人で市民プールとか・・・ナンパ目的でもなければ変だったか・・・。」と、僕はそう言って、彼に断る理由を差し出した。
「そうじゃないよ・・・ただ・・・。」その藤谷の言葉に「ただ?」と、僕は聞いた。
藤谷は下を向いたまま、一度、目を閉じた・・・そして、目を開けて僕に笑い掛けると「せっかく塗ってもらったペディキュアだけど、塗ったままでは行けないから・・・落とすの手伝ってくれる?」と、言った。
その藤谷の笑顔は、僕には切なかった。
(藤谷・・・作り笑顔なのが見え見えだ・・・!)
「どうして・・・?落とさなくても良いよ・・・。」
自分でも思い掛けない声が出た。
「藤谷がペディキュアを塗ってプールに行くのが嫌なら・・・落とせば良い。・・・でも、少しだけ、世界に抵抗したいって思うなら・・・その薄紫色のペディキュアを塗った藤谷の足指は、一本一本がレジスタンスだ。」
僕は、本気だった。
だから、彼の目を見て、そう言った。
ペディキュアを塗ったままの藤谷と一緒に市民プールに行く事に、躊躇う理由が見付からないと思ったからだ。
なのに藤谷は「あ・・・ありがとう・・・。」と、僕の言動に感動した様子も無く、どちらかと言うと呆気にとられたって感じで、そう言った。
それから「君の気持ち・・・とても嬉しいよ。・・・うん。・・・ありがとう。」と、言った。
そして・・・顔を赤らめ俯いて・・・肩を震わせた・・・。
僕は、藤谷が僕の想いに触れて、感動してくれたと感じ、嬉しくなった・・・。
(今までは、家族だけがお前の見方だったけど・・・これからは・・・)と、僕がそうまで思った時だった。
「くっ・・・くっくくく・・・あは・・・あは・あはははははは!」っと・・・藤谷が爆笑し始めたのだった・・・。
今度は僕が呆気にとられる番となった。
「何がそんなに面白い・・・?」
「だって!・・・だってだって・・・!・・・「ペディキュアを塗った足指の一本一本がレジスタンスだ!」なんて言うから!・・・あは・・・あはははは・・・!」
「何も可笑しく無いだろ?」
「可笑しいよ・・・だって、それじゃあ、僕の足指の一本一本が、それぞれレジスタンス活動をしてる生き物みたいじゃない!」
「はぁ?・・・なんだその想像は?」
僕は呆れた・・・と言うか、それよりも、僕の熱意が笑われた様で、嫌な気持ちになった。
「ああ~・・おかしい~・・・ってか、面白すぎる!」
どうやら藤谷の頭の中では、彼の各々の足指が、指人形にでもなってる様に見えてるらしい・・・。
「あ~あ・・・本気で答えて僕がバカだった。」
僕は腕組みをして溜め息をついた・・・。
「あぁ・・・はぁ・・・ああ、笑っちゃった・・・・・・はぁ・・・。・・・うん。ごめんなさい。」
「・・・。」
「笑っちゃって、ごめんなさい。」
「・・・。」
「でも、面白すぎる事を言う君も悪いんだからね。」
「面白い事など、言って無い。」
「う~ん・・・じゃあ・・・君が面白いって事だね。」
「バカにしてるのか?」
「違うよ。そんな事は、全然、思って無い。多分・・・僕にとって君って存在が・・・凄く合ってて・・・それで、あんな事をされたのに、こんなに笑ってられるんだと思う。」
後で思えば、これは藤谷から僕への告白だったのだろう・・・。
「何だか納得はいかないが・・・。」
「じゃあ・・・明日、このペディキュアを塗ったままで、君と一緒にプールに行くって事で許してくれる?」
そう言って、悪戯な笑顔で小首を傾げる藤谷だったから、僕は彼を許さずには居られなかったのは、仕方無いって事だった・・・。
つづく
つづく!