渡り廊下の外陰《そとかげ》で。
本校舎と体育館を繋ぐ渡り廊下の外。
僕らはそこで、食後の休憩をした・・・。
本校舎から体育館へとつづく渡り廊下の外で、その外壁を背にしてコンクリートの敷地の上に座った僕と藤谷は、背中から聞こえる生徒達の足音と話し声を感じながら、誰も居ないグランドを眺め、食後の休憩をして居た・・・。
胡座をかいて座ってる僕は、靴を脱ぎ・・・そして、更に寛ごうと・・・いや、『寛いだ振りをして』靴下も脱ぎ始めた・・・。
すると、真夏の暑さと湿気を含んだ空気が、僕の足を舐める様にゆっくりと流れて行くのが感じられた・・・。
「意外と気持ちいいな・・・。」僕はそう言って、今度は両足を前に投げ出して寛いだ・・・振りをした。
「藤谷も、やってみなよ。気持ち良いぞ。」と、僕は彼の方を見て言った。
すると藤谷は「靴を脱ぐだけじゃなく・・・裸足になるかなぁ・・・普通。」
と言ったので、僕は「こう言うのも『普通になったら良いな』って、僕は思うけどな・・・。」と、先日の藤谷の言葉を引用するような事を言った。
すると藤谷は「なんか・・・引っ掛かるけど?」と言った。
僕は、少し意地悪に「どこが?どんなふうに?」と、訊いた。
藤谷は「それは・・・だって・・・。」と、言い淀み、僕の目を見て少し黙った後・・・「知ってて、そう言うんだから・・・もう、しょうがないか。」と言って、靴を脱ぎ始めた。
藤谷は靴を脱ぐと、自分の右側に、靴を揃えて置いた。
そして、僕がその様子を見てると「じっと見られてたら恥ずかしいから、ちょっとグランドの方でも見ててよ。」と言った。
僕は「え?・・・恥ずかしい?・・・それは。」と言って、内心(よく分からんが・・・。)と思ったが、仕方無いので、グランドの方でも見る振りをした・・・。
そんな僕の横目の視線を藤谷は感じてるのだろうが、彼はそれ以上の事は言わず、紺色の靴下を脱ぎ始めた・・・。
(ここは日陰の筈なのだが・・・。)と、僕は思った。
それは、靴を脱いで露になった彼の足が、白く光って見えるからだった・・・。
藤谷は、少し恥ずかしそうに、自分の足を手で払っていた。それはきっと、靴下の糸屑か・・・何かを気にしての行為なのだろう。
それで、彼のそんな行動を見た僕も、自分の足が気になり見てしまった。
しかし、僕の足には、たった今、着いたと思われる砂粒が見えるだけだった・・・。
僕は「どう?気持ち良い?」、藤谷に聞いた。
彼は「そうだね・・・確かに気持ち良いかな・・・。」と言った。
正直なところ、僕はそんなに気持ちよくも無かったので、藤谷のそんな言葉は意外だった。
しかし彼はその後に、もっと意外な事を言った。
それは「足に当たる風が気持ち良いって言うよりも・・・その・・・ペディキュアを塗ってる足を学校で解放してるってのが・・・ね?」・・・だった。
この時迄の僕の目的は『藤谷が本当に今もペディキュアを塗ってるのか、学校で確かめたい。』だった。
それは藤谷が僕に嘘を言ってると疑ってる訳では無かったのだが。僕はあの日以来、学校で彼のペディキュアを見たことが無かった・・・。
しかも、あの保健室での時は、彼の爪先のキラキラがペディキュアだとは知らずに見て居た。
だから、もう一度、学校でペディキュアを塗った彼の足指を自分の目で確かめたいって欲求が燻っていたのだ。
それが、今日の今、僕はやっと実現できるチャンスを手にした・・・!・・・のだが・・・。
「・・・その・・・ペディキュアを塗ってる足を学校で解放してるってのが・・・ね?」
そんな藤谷の言葉を聞いた瞬間。
僕は(藤谷の心の内の・・・『何か妖しい部分』を解放させてしまってるのではないのか?)・・・と、思い始めた・・・。
それで(僕の小さな企みに藤谷を引っ掛けたつもりで居たのに、どちらかと言うと、僕が藤谷の魅惑の糸に引っ掛かってしまったのではないのか?)と思い、少し焦り始めた・・・。
だから僕は(藤谷の言ってる事は・・・あまり深入りして聞かない様にしよう。)と思ったのだと思う・・・。
それで、その事について、これ以上は聞かないで済むようにと本来の目的を果たそうとしたのだろう。
「藤谷の足の指・・・近くで見ても?」と、僕は彼の方を見て聞いた。
それは自分でも不思議な程にストレートな聞き方だと思った。
藤谷は「良いよ・・・。」と、ちょっと照れて答えた。
僕は、裸足の足裏が汚れるのも構わずに足裏をコンクリートの上に着け、両手も使って藤谷の方に向き直り、彼の爪先が見易い位置に体をずらし胡座をかいて、上半身を倒す、前のめりの格好になった。
藤谷もそんな僕に応えて、僕から見易い位置に両足を延ばしてくれた・・・。
藤谷の小さくて子供の様にも見える白い足・・・。
その5本の足指に塗られたペディキュアは、確かに僕が3日前に見て・・・そして、撫でた時のペディキュアの色・・・薄紫色にラメが入ってキラキラして・・・それでいて、それほど目立ちもしない・・・始めて彼のペディキュアを見た時と同じ色のペディキュアだった。
「どう・・・?見える?」
藤谷は『見えてる?』って意味で、僕にそう言ったのだが、僕には同時に『どう見える?』って聞かれてる様にも聞こえた。
だから僕は「き・・・綺麗に見える。」と、言ったのだが、それもまた『良く見えてる。』って意味でしか無い返事になってしまった様にも思えたので「そうじゃなくって・・・いや。そうだけど・・・綺麗な爪先だなって・・・。」と、言葉を続けたものの・・・その後の言葉は、それはそれで妖しい告白の様になってしまった事に気が付いた。
僕は急にドキドキとして、顔に汗が吹き出してくるのを感じた・・・。
だから「やっぱり・・・日陰でも外は暑いな。」と言って、何とか誤魔化そうとした。
藤谷も「そ・・・そうだね・・・暑いよね・・・。」と言って、僕に見つめられ続けてる爪先をモジモジとした。
そんな彼の戸惑いが混じった返事と、爪先の仕草を見た僕は、彼の顔を見ずには居られなかった。
少しうつ向き加減の藤谷の顔は、この暑さだけとは思えない程に赤くなり、額と頬には、汗が流れ始めていた・・・。
僕は「爪先に触っても良いか?」と、彼に聞いた。
「男どうしなんだし・・・別に良いよ・・・。」と、藤谷。
僕は(男どうしだから・・・余計に変なのでは?)と、思いはしたが(ここで自分の欲求に従わないのは、自分にも藤谷にも失礼なのでは?)と思い直し「それ、じゃあ・・・。」と、掛け声らしい事を言って、彼の右足を持ち、胡座をかいた自分の左太股の上に置いた。
「大胆な事をするんだね・・・君って・・・。」と、少し上擦った声を出した藤谷に、僕は「学校にペディキュアを塗って来る方が、ずっと大胆だと思うけどな。」と、言いながら、右手で彼の爪先に触れた。
藤谷は「ん・・・」と、擽ったさを我慢してる声を漏らすと「こんなとこ、人に見られたら困っちゃうね・・・。」と言って、クスッと笑った。
僕は、彼の足の指を間近で観察しながら「困るのは誰かな?僕?藤谷?・・・それとも、こんな場面を見た人?」と言った。
藤谷は「きっと・・・その全員。」と言って、またクスッと笑った。
「今日は暑いし湿気も多いから・・・藤谷の足も少し湿ってる・・・。」と、僕が言うと「そんな恥ずかしいこと言わないでよ・・・。」と、藤谷は僕に預けてた右足を引っ込めようとした。
しかし僕は空かさず、そんな彼の足を掴まえ離さなかった。
それで少しの間、僕と藤谷はちょっとした力比べをする事になったのだが・・・僕が彼の足裏をちょっと擽っただけで決着した。
悶絶する藤谷が涙目で首を横に降ってギブアップしたからだった・・・。
少し怒った藤谷は「もう・・・酷いよ・・・こんな所で声をあげられないのに・・・。」と言って、不機嫌になった。
僕は「別に・・・足裏が汗ばむなんて、誰でもなる事なのに、何も変じゃ無いのに。そんなに嫌がるかな。」と言って、藤谷の足を触った。
すると、そう言ってる自分の手が汗ばんでる事に気が付き、僕は少し恥ずかしくなった・・・。
そんな僕に「もう良いよ・・・好きにすれば。」と藤谷は不機嫌に言てくるので、僕は「悪かったよ。靴下を履かせてやるから、許してくれ。」と言って機嫌をとってみた。
すると思いの外、藤谷は「ふ~ん・・・そう。」と言って、僕に靴下を手渡した。
僕は、彼の足に着いた砂や埃を手で払った後に、彼の足を口元まで持ち上げた、藤谷は「え?・・・なにを?」と、驚いた顔をしたが、僕は思い切り息を吸い込んで、そして彼の足の指の股に息を吹き掛け、埃を飛ばそうとした。
そうして僕は数回、息を吹き掛けるのを繰り返した。
藤谷は、そんな僕の行動を、少し潤んだ目を細めて見て居た。
それから藤谷は、やけに大人しくなった。
僕が彼に靴下を履かせてる間も何も言わないで、ただ靴下を履かせやすくしてくれる動きをして僕を助けてくれた。
藤谷に靴下を履かせて、彼の両足を左の太股の上に置いた僕は「靴下を汚さないように、靴も履かせてあげるよ。」と、僕の手が届く所にあった彼の靴を取り、僕の太股の上で履かせてあげた。
それで僕のズボンの左の太股のところは、少し白くなって汚れたが、僕はさほど気にしなかった。
それで僕は藤谷の両足をコンクリートの上に置いた。
それから僕は、自分の靴下を取って履き、靴も履き立ち上がると、僕の動きに合わせて藤谷も立ち上がった。
僕は、ズボンに着いた埃などを手でパンパンと払った。
すると藤谷も、自分のズボンの埃を手で払い始めた。
僕は「ちょっと後ろを向いて。」と藤谷に言った。
藤谷は「え?後ろ?」と言って、僕に尻を・・・じゃなく背を向けた。
背中は汚れて無い。
汚れてるのは尻・・・ズボンの尻だった。
だから僕は、彼の尻を左手でパンパンっと、軽く払ってあげた。
ズボンの上からでも彼の尻が柔らかいのが伝わる。
「も・・・もう良いでしょ?」っと、彼の尻を払うのを止めない僕に藤谷は言った。
そこで「え?」っと、僕は我に返った・・・。
「そうだな・・・うん。もう尻はキレイだ。」と僕が答えると「何か、変な言い方に聞こえる・・・。」と藤谷は笑った。
僕は「そうか・・・なら。いつも尻はキレイだ。」と言った。
藤谷は「なにそれ?・・・見たのは一度だけでしょ?」と言って笑い、僕よりも先に学校の玄関へ向かって歩き始めた。
昼休みの終わりを告げるチャイムが鳴ったのは、僕らが上靴に履き替えた時だった・・・。
教室へと戻る廊下を早足で歩く藤谷の弾む尻を、僕は少し遅れて追いながら見ていた。
そして(藤谷は・・・今も、ペディキュアを塗って居て・・・その秘密を知ってるのは、この学校内では僕だけなんだ。)と、改めて思っていた。
それで、なんだか胸がワクワクするのを感じた・・・。
(もう少しで学期末テストなのに・・・楽しい気持ちになるなんてな。)
そう思った僕は、上がる気持ちに戸惑いを覚え・・・立ち止まった。
そんな僕に気付かなかった藤谷は、僕を置いてくようにして、先に教室に入ってしまったのだった・・・。
この時、僕は。
藤谷に何を期待してるのだろう?・・・と、自分の中の想いに戸惑ったのだと思う。
教室に入ると、藤谷は僕の方を見て、笑顔を向けてくれた・・・。
つづく
つづく!




