第三十九話 オウギという道具与えられ、いとにつかはし・その四
「こちらが望むのは、ツルバミの都に、新たに黒鉄の社をおつくり頂きたい」
「黒鉄の社?」
クロガネノマヒトツ様の仰るクロガネノヤシロというものが分からず、首を傾げてしまいます。 勉強不足で申し訳ない限りです。
「あの、ツルバミは製鉄技術に長けた場所でして、それこそ、鍛冶の神に毎年最も出来の良い刀を奉納するのです」
さや様が遠慮がちに仰います。
「その通り、今は、海の外の武器が主として作られ、刀を作るものも減っているようだ。これも時代の流れと儂の主も考えておる。だから、その社には、金髪碧眼ノ陰陽師殿が魔力を込めた刀を収めて頂きたいのだ」
「私の魔力を?」
「うむ、そうなれば、主も儂らも小僧共も神力を取り戻し、この地を豊かにすることが出来る!」
なるほど、この土地の神であれば、土地の者の信仰心が力になり、その力で土地を豊かに出来る。それは素晴らしい事です。
「その礼としては、少しずつ色んなものを返していくつもりだが、明確なものは、より質の良い鉄がとれるようになるだろう」
「契約しましょう」
「「「「早い!」」」」
あら、四人につっこまれましたわ。
「あのなあ、そんな即決でいいのか?」
「勿論、詳しい取り決めは確認しますが、鉄の質が上がることは人にとっては有益です。なによりツルバミは守る力を欲しています。その中で鉄は絶対に必要です」
「うむ、うむ。では、詳しい取り決めとやらを教えてもらおうか」
その後、私はクロガネノマヒトツ様と契約内容に関して詳しく決めていきました。
クロガネノマヒトツ様は、神の使いとあまりここまで細かく決める人間を見たことがないようで一つ目を大きく丸くしてらっしゃいましたが、分かりやすい内容だと感心していただきました。
「では、これで。儂の主も喜ぶことだろう」
クロガネノマヒトツ様はそう仰り、黒い金槌で地面を叩くとガンという音と共に、火花が飛び散り、そして、集まって、小さな獣の姿に変わり走っていきます。
「今のは?」
「ああ、伝心の術だな。主にお伝えしたのだ。ああ、そうそう。契りを交わしてくれた最初の礼をしておこう。お主らの武器を貸してくれ。あと、手を見せてもらおうか」
そう仰るとクロガネノマヒトツ様は、私の手と紫黒ノ扇、さや様の手と矢尻、と、それぞれの手と武器を見比べていきます。
「ふむふむ、なるほどな。では、このクロガネノマヒトツの技、一つご覧にいれよう」
クロガネノマヒトツ様は、じいっと私の紫黒ノ扇を見つめ、黒の金槌で一打ち、そして、そのまま動かなくなってしまいます。いえ、クロガネノマヒトツ様は、動きませんでしたが、金槌の当てた先にある鉄扇が小さく波打っています。
「アメノマヒトツカミ様、儂に御力お貸しくだされ。てったらたらりたたらてらりてったらたらりたたらてたんたん。金は水生み、流れ生み、流れよ流れよ、人器一体。てったらたらりたたらてらりてったらたらりたたらてたんたん。」
玉のような汗を流しながら、じっと鉄扇を見つめ、唱え続けるクロガネノマヒトツ様は、暫くし、大きく息を吐きながら私に紫黒ノ扇を差し出してくださいます。
「持ってみなされ」
「……? え……。あ……!」
手に入れた時から、私の身体の一部になったと感じていた紫黒ノ扇でしたが、今、本当に私の身体になった、半身となった。思いのままに動かせる全能感が私の中で溢れてきます。
「武器は、すぐに斬るもの、殴るもの、刺すものと考える。だが、全て、持つ物。いかに持つ者と持たれる物が、分かり合えるかが重要なのです」
確かに、手に吸い付くような感覚が段違いで、流れ、そう、私の意識がオウギの先までいき渡っているようです。
そして、その後、さや様の矢じりを彼女の腕力に合わせ、細く鋭く、リンカさんの刀をより繊細に扱えるよう髪の毛一本と言えるような繊細な調整を行ってくださいました。
「オ、オレの金棒もお願いする!」
「うむうむ、鬼人の里の金砕棒な。随分と懐かしいもんだ。これはな、儂が作ったんだ」
「ええ!? 本当、ですか!?」
「ああ。あん時の鬼人のは、シュカとかいう女に惚れててなあ。こいつを簡単に振りましたら、シュカも惚れるとか言って……まあ、結局あいつにとられてたけどな、はっはっは!」
あいつ。
恐らく、シュカ様やキュウビ様の想い人の方でしょう。
一体どのような方だったのか……やはり、口封じの術がかけられているようです。
「ふむ、お前さんはどうなりたい?」
「オレ?」
「ああ、言っただろう? 持つ者と持たれる物が分かりあえるようにするのが儂の仕事だ」
「オレは……みんなの力になりたい」
真っ直ぐな瞳でゴウラさんは言いました。
「オレは馬鹿で不器用だ。さややリンカのようにはなれない。オレには腕力しかない。だから、この腕力だけでも磨き続けて、みんなの『力』になりたい。オレがオレに出来ることをやりたい」
クロガネノマヒトツ様は、にやりと笑うと、カナボウに金槌を当て、じいっと見つめ始めました。
ゴウラさんの言う通り、役割がこれからは必要となるでしょう。
サクラの都、そして、キュウビ様救出を目指すとすれば、単独では難しい。
パーティーの結成が必要です。
パーティーなら、戦闘力、ダンジョン攻略の為のスキル、また、長旅での生活に関するスキル、それらが集まり一人では出来ないことが出来るようになる。
命を預けることの出来る信頼出来る仲間達。
それを集め、鍛え、分かりあわなければ。
グロンブーツ王国で作った冒険者パーティーのような仲間達を。
「出来たぞ」
クロガネノマヒトツ様の言葉で我に返ると、持ち手が少し歪になったカナボウが。
「これで大分軽く感じるはずだ。お前の剛力で壁をぶち壊してこい」
「はい! ありがとうございます!」
ゴウラさんがカナボウを受け取り、その感触を味わうようにぐっと握りしめます。
「ありがとうございます。クロガネノマヒトツ様」
「いやいや、では、黒鉄の社、頼みましたぞ。そして、これからよろしくお願い致す。儂の名は、クロガネノマヒトツ、【金】の力を持つ神の使い、何かあれば赤鳥居よりお呼び下され」
クロガネノマヒトツ様はそう仰ると、黒い玉に変わり、赤鳥居の札の中に入っていかれます。
私達は、ヒトツメコゾウさん達を解放し、ツルバミへと向かいます。
まずは、パーティーを作る為に、仲間を集う。
「集めましょう、苦楽をこれから分かち合う仲間を」
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