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第三十八話 オウギという道具与えられ、いとにつかはし・その三

「……というわけで、良いですね。戦闘中に邪魔をし合うなど愚か者の極み。これからは絶対にしないように」

「も、申し訳ありません、我が主」

「ぽぽぽーん……」


 目の前には正座をした浅黒い肌の青年クロと、タヌキのヨーリ。

 私に良い所を見せようとするのは嬉しいですが、あろうことか仲間の邪魔をするのは頂けません。どんなに強者であろうと、相手が弱者であろうと、最善を尽くす。そして、いかなる怪我も受けぬよう努力する。とても大事なことです。

 にしても、ヨーリは人には化けられませんが、器用に正座をしていますね。


「ともかく、大切なのは反省し、次に生かすことです。あなたたちが傷ついたら私は悲しい。肝にめいじておいてください」

「ぽぽーん……!」

「我が主……! なんとおやさしい言葉……! キュウビ様なんて怪我しても唾でもつけとけと……! 私は! もう過ちを犯しません! 狸! 休戦だ! これからは我が主の為に共に頑張ろう!」

「ぽん!」


 仲良くなれたようで何よりです。


「で、ヴィオラ。こいつら、一つ目小僧共はどうする?」


 リンカさんが指し示す先には私達を襲ったヒトツメコゾウさん達が。

 ヒトツメコゾウさん達は、縛られ、目を塞ぐとすっかり大人しくなってしまいました。


「ふむ……どうやら、お使いの様でしたので、主が来るまで待とうと思っています」

「使い?」

「ええ。ジンジャは結界が貼られていたはず。恐らく魔力を隠す為でしょう。にも拘らず、あのタイミングで現れたというのは少し不自然。一番妥当なのは、私達が此処にいたことを知ることが出来、かつ、キュウビ様の邪魔は出来ない、神というところではないでしょうか」

『その通りだ』


 声が空気を震わすように響き渡り、黒い砂が引き寄せられるように集まってきます。

 そして、現れたのは……ヒトツメコゾウさん達よりも巨大な独眼の大男でした。


『儂はアメノマヒトツカミ様に仕える者。クロガネノマヒトツとでもお呼び下され』

「クロガネノマヒトツ様、お初にお目にかかります。キュウビ様より菫の名を賜りました陰陽師にございます」


 一つ目の巨人(サイクロプス)にも似たそのクロガネノマヒトツ様は、ドワーフによく似た体形で、とても身体ががっしりしており、いくつかの槌を下げていらっしゃいます。

 鍛冶にかかわりのある神なのでしょうか。一つ目の巨人(サイクロプス)も元を辿れば、鍛冶の下級神だったはずですが、関りはあるのか、気になるところです。


「金髪碧眼ノ陰陽師殿、貴女の推察通りキュウビ殿との話が終わり、ここを出て来られるのを待っておりました。アメノマヒトツカミ様はともかく、儂はただの下働きに過ぎませんのでな」

「それで、ご用向きは?」


 クロガネノマヒトツ様は、跪きこうべを垂れ、私に向かって仰います。


「はあ! 我が主、アメノマヒトツカミ様より、金髪碧眼ノ陰陽師殿と契りを交わす命を受けやってまいりました。我が主も、金髪碧眼ノ陰陽師殿の鋼の如き心に心打たれ、是非にと」


 なんとまあ、早速勧誘にやって来られたようです。


「成程。では、契約のお話ですね?」

「え? あ、はあ、まあ、そうですな」

「では、美辞麗句を飾り付けるのは置いといて。具体的な話をしていきましょう。こちらの利とそちらの要求についてですが……」

「おいぃいいいいい!」「ちょとぉおおおおおお!」「あるじぃいいいい!」


 リンカさんとさや様とクロが同時に飛び出してきます。


「あんたなあ! いくらアンタがシュカ様の生まれ変わりでもあっちは神の使いだぞ!」

「そうです! それをそんな仕事のように淡々と」

「その主の姿は素敵ではありますが、もう少し言葉を柔らかく……」


 奥ではゴウラさんがあわあわしてますね。ヨーリは毛づくろいですか、流石です。


「ふ、はっはっはっは! 流石、金髪碧眼ノ陰陽師殿! いや、皆さん、そう心配なされるな! 儂の主はこのような竹を割った性格を気に入られたのです」


 クロガネノマヒトツ様が豪快に笑ってどかりと地面に腰を下ろされます。


「では、早速腹を割って話しましょう」


 私もクロガネノマヒトツ様にならって、正面に胡坐をかいて座ります。


「よろしくお願いいたします」

「うむうむ! 真に美しく鍛えられた鋼の魂にございますなあ! では! よろしくお願い致す!」


 こうして、私と鍛冶の神の使い様との話し合いが始まるのでした。

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― 新着の感想 ―
[一言] 鍛治の神マヒトツとはしぶいですな。谷川健一の青銅の神の足跡とかお読みになった?自分はそれで知った。カタカナでカジノ神と書くと強運そうですな。
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