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第三十七話 オウギという道具与えられ、いとにつかはし・その二

 ツルバミ百本鳥居ダンジョンを抜け、ツルバミの都へと。

 入り口の鳥居を抜けた瞬間、空気が変わります。


「成程。このトリイというものは高い魔力を帯びていますね。そして、邪悪なるものの侵入を塞いでいる」

「その通りです。ただ、他の百本鳥居では、乗っ取られ逆にその力を悪用されている同胞もいるようです」

「ふむ、そうですか。その方たちは早く助けてあげねばなりませんね」

「で、コイツがあの黒狐が化けた姿か?」

「クロと申します。お見知りおきを」


 リンカさんが親指で指した先にいる私の言葉に返してくれた浅黒い肌の男性の姿をした黒狐さん、クロは丁寧に皆さんに挨拶をしています。


「ふむ。では、あちらが、あの黒い狐が本来の姿なわけか」

「はい。平時はあの姿でいる事の方が多いですね」

「なんで、わざわざ人の形に化けるんだ?」

「主に近しい姿でいたいというのは、自然な事かと思いますが」


 クロさんはそう言うと、ヨーリの方を見つめます。


「ぽん!? ぽっぽぽーん!」

「ふん。人に化けられぬとは未熟者よ。必ず、私の方が主の役に立ってみせる」

「ぽぽぽーん!」


 ヨーリとクロが睨み合って、仲良くしています。


「ふふ、微笑ましいですね」

「も、もしかして、さや、私達もあんな風に見えていたのか?」

「な、仲良くしましょうね、リンカさん」


 さや様とリンカさんはぎこちなく笑ってらっしゃいます。


「あ、そういえば、私はあの、小さな光に頂上に来るよう伝えられた気がしたのですが」

「ああ、それは私の術だ。伝心の術。思いを魔力に変え、伝える技術だ」


 さや様の疑問に、クロさんが睨み合いを止め答えます。

 とはいえ、ヨーリが勝ち誇ったように笑うので、また始まってしまいますが。


「そんな術があるのですか!? 素晴らしい!」

「あ、いえ、我が主。伝心の術は非常に曖昧な内容しか伝えることが出来ません。虫の知らせをちょっと強くした程度でして」


 クロさんがヨーリを抱きかかえながら応えてくれます。

 なるほど、であれば、難しいですね。戦闘中もそうですが、距離のある中で正確に情報交換が出来れば大きく戦略・戦術が変わるのですが。


「ただ、キュウビ様の主様は、式神に手紙を運ばせたりしたそうです。ヴィオラ様であれば、技術を磨けば使えるようになるのではないかと」


 結局、混乱を巻き起こす結果となるので、私は仲間内ではヴィオラと呼ばれることになりました。いずれにせよ、二つの名があることで、呪い返しが出来るようになっているらしく、ひとまずは慣れるまではヴィオラとクロさんにも呼んでもらうことになりました。


「まあ、名前は徐々にでいいとして、この紫黒ノ扇に関しては早く慣れなければ」

「ヴィオラ様は十分使いこなしているように見えますが……」


 さや様が、私が歩きながら扇を躍らせている様子を見ながら仰ってくださいます。

 ですが、


「単純な武器としてはそこまで違和感なく扱えますが、この武器の最大の利点は五行陰陽術と武術を同時行使出来ることです。それに慣れていかなければ……!」


 と、そこに、魔物達が現れます。

 子供より大きいくらいのその魔物は一つ目で、三人並んでこちらをじいっと見つめています。


「ふむ、一つ目の巨人(サイクロプス)の配下といったところでしょうか」

「ひ、一つ目小僧……!」


 ヒトツメコゾウ、なるほど、こちらではそんな呼び名なのですね。

 ですが、小僧と言うには多少大きな気がしますが。


「主様! 私におまかせを!」

「ぽぽーん!」


 クロさんとヨーリが競うように飛び出していきます。


「はん! 狸! お前は下がっていろ! あんな短い手足でもお前よりは長い!」

「ぽぽーん!」


 走りながら互いにちょっかいをかけているようで、集中力に欠けているようです。

 それでは……


「二人とも。お座りなさい」


 私は、魔力で威圧しながら、二人に声を掛けると、二人は大人しくその場に座り込みます。


「は! 思わず……んぐぅ、これ、は……!」

「ぽ、ぽーん……」


 直撃は避けることが出来ましたが、多少の影響は受けてしまうようですね。

 私は、ヒトツメコゾウの視界から離れながら彼らを観察します。

 どうやら、彼らの大きな目から魔力の波のようなものが放たれ、振動による衝撃を与えているようです。恐らく完全に目を合わせ、目から送り込まれればひとたまりもないでしょう。

 〈魔眼〉と呼ばれる目玉の大きなモンスター達が使う能力と同じようなものでしょう。


「ふむ、練習台というには、中々に強そうです、油断せず参りましょう」


 私は、紫黒ノ扇を構え、ヒトツメコゾウ達に迫ります。

 ヒトツメコゾウ達はばっと私を視界に捉え、〈魔眼〉を放ってきます。

 私は、紫黒ノ扇を広げ魔力を壁にして塞ぎ、そのまま、風を起こし宙へと跳び上がります。

 ヒトツメコゾウ達は私を追いますが、空にはまだ太陽が浮かんでおり、眩しそうに目を細め、魔眼が放てず、その場で硬直。

 その間に、私は空中で身体を回転させ、ヒトツメコゾウ達の後ろ側に着地。扇に魔力を込め振り向きざまに、水を放ち、視界を奪いながら、ヒトツメコゾウ達を薙ぎ払う。

 ヒトツメコゾウ達は大きく吹き飛び、木に衝突。なんとか立ち上がろうとする所を、【金】によって強化し、畳んだ紫黒ノ扇で打ち込み、気絶させます。


「ふむ、まだちょっと魔力操作と武器の操作がうまく噛みあいませんね。イメージでは、宙から落ちる時に、終わらせられていましたからね」


 反省です。やはりもっと多くの魔物と戦い、実戦経験を積まねば。

お読みくださりありがとうございます。

また、評価やブックマーク登録してくれた方ありがとうございます。


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