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第三十四話 ジンジャという場所に生まれたダンジョン、いとさうざうし・その四

 黒い狐が凄まじい魔力を見せつけながらこちらを睨み続けています。


「ヨーリ! 白馬に変化! ゴウラさん動かずさや様を守って、リンカさんは、側面から攻撃! さや様は狐の攻撃を警戒しながらヨーリに乗って!」


 私の指示を受けて、全員が同時に動き始めます。ここまでの経験が生かされている!

 ヨーリが白馬に変わり、さや様を乗せると急激にスピードを上げて、走り始めます。


 黒狐がリンカさんと逆側に走り、ゴウラさんを躱し、息つく暇もなく直角に曲がり、さや様を狙います。

 黒い風が吹き抜けた瞬間、反転。

 ヨーリによって、誰も居なくなった空間に飛び込んだ黒狐は一瞬止まり周りを見渡します。


「喰らいなさい!」


 私は投擲用ナイフを、一本取り出し投げつけます。


「グルルルルッ」


 しかし、無造作に前足を振るだけで、私の投げたナイフを弾き飛ばしてしまいました。


「なっ……!?」


 そして、そのまま一気に私との距離を詰めてきます。


「させるか!」


 リンカさんとゴウラさんが私の前に飛び込み黒狐の体当たりを受け止めます。

 ですが、


(これは……陰陽術!?)


 金属がぶつかる音が響き、三人纏めて後方、元は黒狐がいた所に吹き飛ばされてしまいます。


「ヴィオラ様! 大丈夫ですか!?」

「大丈夫です! それより、さや様はどこか安全なところまで移動を……我々は囲みますよ!」


 私の言葉を受けてヨーリは何か言いたそうなさや様を連れて走り去っていきます。

 と、同時に私とリンカさんは左右に分かれ、黒狐を囲みます。


「グオオオッ!」


 狙っていた標的が逃げてしまい、怒りの声をあげ、魔力を更に膨れ上がらせる黒狐。


「いきますよ!」

「おお!」

「分かってる!」


 私達は、一斉に黒狐に切りかかります。


「はあああっ!!」

「オラァアアッ!!!」


 私達の刀やカナボウが襲い掛かりますが、黒狐は傷一つ負わず、


「で、あればこれならどうです!」


 私は、【火】のオフダを取り出し、魔力を込め始めます。ですが、


「ぐ、がっ!」


 視界に黒い尾が見えたかと思うと、横から強烈な一撃を受け、再び吹き飛ばされてしまいます。


「ヴィオラ!」


 ゴウラさんが前に立ちはだかり、私と黒狐の間に入ってくれます。


「ヴィオラ、発動早い術は?」

歩く松(ピヌストレント)程度であれば、それでもいけましたが早くて硬い相手にダメージを与える一撃を与えるには十分な時間が必要になりますね」

「そうか」

「ええ、ですから、まずは……」

「分かった。時間を稼げばいいんだな」


 ゴウラさんが黒狐に向かって駆けていきます。

 黒狐もそれに気づき、牙をむき出しにして威嚇し、向かって行きます。


「はああぁああっ」

「ガアアァッ」


 ゴウラさんのカナボウと黒狐の爪がぶつかり合い、激しい衝撃を生み出します。


「ぐぅう」

「ガッ」


 お互いに力比べをするように、押し合った後、距離を取ります。


「グルアアアアアア……」


 今なら……!

 私は【火】のオフダを取り出し天に掲げ、魔力を練り始めます。

 魔力の起こりを感じたのか黒狐は、私の方を見て動き出そうとしますが、ゴウラさんがカナボウを捨て掴みかかり、リンカさんが刀で削り続け思ったように動けなくなっています。


 彼らの作ってくれた時間に感謝し、私は複雑な流れの式を作り続けます。


 五行陰陽術は五つの魔力を操作し、術を作り出すもの。

 四大元素魔法と違い、元々複雑な要素で作られている故に操作には繊細な技術が必要となります。

 ですが、その繊細な技術を手に入れられれば、何でも作りあげられるのではないかという予感が私の中で生まれていました。


 【土】、【金】、【火】を中心に昔聞いた薬の分量を思い出し魔力を練ります。

 あの硬い防御を打ち破る人の知恵を……。


「出来た! 今!」

「だが、一足おそかったようじゃな」


 気付けば黒狐が二人を吹き飛ばし、目の前まで迫っていました。

 このまま私が術を放とうとしていたら、先に黒狐の体当たりを喰らっていた事でしょう。


 していたら、ですが。


「間に合ってますよ。私も彼女も」


 その瞬間、さや様の矢がオフダを貫き、そのまま、黒狐の背中へと。

 私に集中していたのか、黒狐の身体に矢が深く刺さります。


「気を付けてくださいね。そのオフダは、爆発しますから」


 私は、可能な限りの【木】の魔力を練り目の前に風の壁を作り出します。

 そして、黒狐の背に刺さった矢についたままのオフダが輝き始め、爆発。


 凄まじい爆風が周囲に広がり、黒狐は吹き飛びます。


 火薬の作り方をグロンブーツ王国で聞いておいてよかった。

 火薬の材料の分量を思い出しながら魔力を似たように混ぜてみたのですが、やはり、五行陰陽術であれば、ある程度の再現は可能なようです。


 いえ、魔力で作り出す分、もしかしたら、今の火薬よりも強力なものも作れるかもしれません。

 それにしても、さや様達と作戦を練っておいてよかった。


 機動力が上だった場合、どうしても動作が多い弓手は不利となる。

 その場合、変化したヨーリに乗り、直ぐには辿り付けないような距離がとれ、なおかつ、『敵が視認出来て、〈必中〉で狙える場所』に移動し、機会を待つ。


 そして、良く読み取ってくれたのですが、私がわざと天に掲げたオフダ、これを狙って欲しいという動きにさや様は気づいてくださいました。

 そして、見事、私のオフダを貫き、黒狐の油断していた背に矢を突き刺してくださいました。


 遠くで、ヨーリとさや様が喜びを分かちあっているようです。


 しかし、流石にこれは……。

 私もその爆風に吹き飛ばされ、地面を転がり、泥だらけで黒狐の居た場所を見ます。

 黒狐はというと、地面に倒れ、全身を黒く焦がしながらも、まだ生きてるようです。


「よかったですわ。ご無事の様で」

「無事に見えるか?」


 黒狐は悪態をつきながらもゆっくりと私の所にやってきてくださいます。


「試験は、合格と言うことですかね?」

「まあ、そうじゃな。いつから気付いていた?」

「このツルバミ百本鳥居ダンジョン、無事に帰ってきた冒険者は少ないようですが、死者数はほぼゼロに近い。このような数字は不自然です。何かしらの意思の介入があると踏んでおりました。そして、このダンジョンの魔力。私は、この魔力を知っています。私に宿るシュカ様と契りを結ばれたであろう陰陽師の魔力」

「ふん、シュカじゃと? あの鬼女が結ばれたなどと。妾とヤツの絆に比べれば紙のように薄っぺらい関係よ」


 シュカ様の名を上げると、少し嫌そうな、けれど、どこか懐かしむような声で黒狐は呟きます。


「改めて、貴方のお名前をお伺いしても?」

「それはこの黒い狐の名か? それとも、妾の?」

「貴方のお名前を」

「よかろう、我が名はキュウビ。妖狐の女王、キュウビじゃ」


お読みくださりありがとうございます。

また、評価やブックマーク登録してくれた方ありがとうございます。


少しでも面白い、続きが気になると思って頂けたなら有難いです……。


よければ、☆評価や感想で応援していただけると執筆に励む力になりなお有難いです……。


よければよければ、他の作者様の作品も積極的に感想や☆評価していただけると、私自身も色んな作品に出会えてなおなお有難いです……。


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