第三十一話 ジンジャという場所に生まれたダンジョン、いとさうざうし
【登場人物】
ヴィオラ・ディフォルツァ
主人公。金髪碧眼だが、一筋だけ黒髪が生えている。
陰陽師の才能を持つ。
ヨーリ
ヴィオラのペット。「ぽーん」となく。変身することが出来る。
ジパングに来てバケダヌキという種族であることが判明。
ドウラン・アリマ
ツルバミの陰陽師。いずれツルバミの地に救世主が現れると予言していた男。
日焼けした肌、顎髭があり、触るのが癖。
ゴウラ
鬼人族の男。赤い肌と額に一本の角。
ゲンブ・ツルバミ
黒髪長身。礼儀正しそうなサムライさん。
サヤ・ツルバミ
ゲンブの妹。お姫様。
「では、参ります。皆さま、よろしくお願いいたします」
「ああ、任せろ」
「は、はい!」
「うが」
「ぽーん!」
リンカさん、さや様、ゴウラさん、ヨーリの返事を受け、私はトリイと呼ばれるものをくぐり、ダンジョンの中に入っていきます。
このトリイと呼ばれるものは、人々から神の住む世界と現世との境目と言われているそうです。そのせいか、いつもより魔力の充実を感じます。ですが、皮肉なものですね。
そのせいでダンジョン化してしまうなんて。
「ヴィ、ヴィオラおねえさま! がんばりましょうね!」
さや様が緊張の面持ちながら、拳をきゅっと握りしめ、こちらを見られます。
「ええ、がんばりましょう」
「本当はお兄様やドウラン様も来られればよかったのですが……」
「仕方ありませんわ。お二人はお忙しいでしょうし」
先日の鬼人の里襲撃事件のあと、私達はツルバミに戻り、事の経緯をゲンブ様に説明しました。そして、ドウラン先生と一緒にあの黒衣の陰陽師が言っていた『黒桜』と思われる位置を教えた所、難しい顔をされ、
『暫く忙しくなりそうです。ヴィオラ殿のお相手を出来そうにありません。申し訳ありません』
そう仰って、ドウラン先生と家臣の方たちと共に連日話し合いをなされているようでした。ドウラン先生からも、
『まあ、正直教えることはあんまねえし、まずは、教えた術を使いこなすことだな。お嬢ちゃんには悪いが、国の一大事かもしれねえ。もしかしたら、力を借りることになるかもしれん。出来れば腕を磨いておいてくれ』
と、頼まれてしまいました。そこで、私は冒険者ギルドで依頼を受け、それで訓練をしようと考えていたのですが、さや様が来られて、連れて行って欲しいと懇願されたのでした。
一国の姫にそれはと思ったのですが、ゲンブ様からも今の内に色んな体験をすると良いと許可を貰ったらしく、ご一緒することになりました。
そこで、念には念をと、鬼人の里へ立ち寄り、リンカさんとゴウラさんにパーティーを組んで頂くようお願いをしたのです。
「まあ、ヴィオラ。大船に乗ったつもりでいな。このおちびちゃんはアタシが守ってやるよ」
「お、おちびちゃんじゃありません! さやという名前があります」
リンカさんがどんと胸の上を叩きこちらを笑ってみると、さや様が怒って反論なさいます。
「ああん? お前みたいなひょろいのがヴィオラの力になれるかよ。精々足をひっぱらないことだ」
「はあ!? 細いだけで人を判断するなんて随分浅はかですわね。ヴィオラ様ならそんな事しませんよ。それに、足を引っ張るつもりなんてさらさらありません。あなたこそその大きな胸が邪魔にならないといいですね」
あらあら、もう仲良くなって、微笑ましいですわね。
ただ、本当にさや様は気合が入っているようで、赤と白のお召し物に胸当てと足の防具、小手を身につけ、弓と小刀を武器に持ってきていらっしゃいました。
「うふふ、頼もしいですわね」
「は、はい! 頼りにして下さい!」
「ヴィ、ヴィオラ、アタシの方が頼りになるぞ! アタシを頼りにしろ!」
アリアとちゃんと姉妹になれたら、この二人のように仲良くお話出来たんでしょうか。
「仲良くていいわね」
「そう、見えるか? まあ、オレもしっかり見ておくから。長にも絶対にヴィオラを守るよう言われてるからな」
鬼人の里ですが、私やドウラン先生の口添えもあり、まだ公にはされませんが、友好関係を結ぶことが出来ました。ひとまず、冒険者ギルドに頼み、鬼人の里付近の立ち入りを冒険者に、また、ゲンブ様のお家からの御触れで誰も近寄らぬよう命令が下されました。
徐々に、鬼人の里の存在を明らかにして、交流を深めていくつもりの様です。
ツルバミからの支援物資も送られてきて、鬼人族の只人への理解も得られたようです。
まあ、私がシュカ様の生まれ変わりと考えられているという要因が多分にあるようですが、一先ずは、その名を存分に使わせていただきましょう。
「では、行きましょう。ここからはダンジョンですからね。油断せぬよう」
私達が冒険者ギルドの依頼を受けやってきたのは、『ツルバミ百本鳥居ダンジョン』。
ジンジャと呼ばれる神聖な場所に発生してしまったダンジョンの調査及び魔物の間引きでした。ジンジャは神聖な場所なので、魔力も高いらしく魔物にとっては絶好の棲家だったようです。
ただし、神の力か、魔物が侵入できない程の場所もあるらしく、此処は神が不在だったか人々の信仰心の問題かと言われているようです。
百本鳥居の名にふさわしく赤いトリイがずらりと並んでいます。
入口の鳥居を抜け、暫く並んだ鳥居をくぐり続け終わると、ひらけた場所に到着します。
広場の様です。ただ、血の匂いが濃く、よく見れば骨が転がっているようです。
「どうやら、ダンジョン化の影響のようですね。」
一般的にダンジョン化すると魔物等に応じて、その場所が変化していきます。
それゆえに、ダンジョンそのものが生きているのではないかとグロンブーツ王国ではある学者さんから面白い意見を頂いたのですが、彼は元気でしょうか。
ダンジョン核と呼ばれるものを破壊するか、このダンジョンの主を殺せば、徐々に戻っていくのですが、そこまで行けるかどうか。そもそもそれは依頼されてはいませんしね。
そんな事を考えていると、私の式盤に反応が。
「皆さん、右から来ます。陣形を!」
私の号令に合わせ、ゴウラさんとリンカさんが右へ飛び出し、その後ろに私とさや様、そして、後ろにヨーリがついて敵の襲撃に備えます。
ツルバミ百本鳥居ダンジョンのお話は聞いていましたし、そこに出現する魔物の情報も得ていました。そして、陣形や作戦の打ち合わせも終えています。
あとは、ジパング独特の魔物に私がどれだけ対応できるか。
広場の右側ゆっくりと現れたのは、トレント、けれど、私の見たことのない、通称『歩く松』というジパングモンスターでした。
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ちょっと最近エグいの摂取しすぎて、エグみほとんどない。シンプル甘いの欲しい方は是非。
書き終えているので完結までまっしぐらです!




