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第二十九話 カナボウという敵をぶっ潰す武器、いとおもし・その四

「さて、と」


 私は、ゴウラさんと共に、ドウラン先生が捕らえた黒衣の陰陽師の元へと向かいます。


「お前が陰陽師であるなら、聞きたいことがある」

「……」

「何故、鬼人の里を襲った? 」

「……」


 黒衣の陰陽師は無言を貫き通しています。


「何か言え!!」


 ゴウラさんが黒衣の陰陽師に殴りかかりますが、ゴインという鈍い音がして顔を歪めたのはゴウラさんの方でした。


「成程。札を使わずとも、黒桜とやらの魔力で無理やり術を発動させられるからの自信か」


 ドウラン先生はじっと隙間から見える黒い刺青を見ていらっしゃいます。

 あれが、黒桜とよばれる何かと関係があり、魔力を大量に供給することが出来、その膨大な量で術を強引に発動させ身を守っていると。

 その上、口を割らせるために死に至るような事は出来ないと考えているのでしょうね。

仕方ありませんね。

 私は【火】のオフダを取り出します。


「……」


 黒衣の陰陽師はオフダをちらりと見ますが、それ以上は何もせず待ち構えているようです。

向こうからすれば、【火】は【水】で消せるとお考えでしょうか。


「ゴウラさん、カナボウをお貸しください。ドウラン先生お願いしますね」

「え? お、おう……」


 私はゴウラさんからカナボウをお借りし、【火】のオフダでカナボウに熱を纏わせます。

 流石、調和の五行陰陽術。


「では、行きますわね。頑張って耐えてくださいまし」

「……は?」


 あら、声が出ましたね。その調子です。

 私は思い切り熱を帯びたカナボウを振り、黒衣の陰陽師を殴ります。

 金属同士の鈍い音が鳴り響き、そして、


「ギャアアアアアアアアア!」


 黒衣の陰陽師が悲鳴をあげます。思ったより早かったですね。


「お、お嬢ちゃん、やるな……」

「まあ、城での拷問も立ち会うこともありましたし、この位なら。魔法使い用の拷問も色々あったのですが、この分だと早く吐きそうですね」


 金属と氷で防ぐつもりだったのかもしれませんが、振動、そして、溶けた水が湯となり身体を這う事は分かっていなかったのでしょうか。呻き続けています。

 魔法使いは、何かしら拷問を耐えられるような手段を講じていることが多いので、グロンブーツ王国でも手を焼くことが多く、様々な記録が残っています。まあ、もう誰も見てない可能性がありますが。


 それにしても。


「やはり、これは良いカナボウですね」


 カナボウ。正式にはカナサイボウというらしく、鎧ごと粉砕、もしくは、先ほどのように衝撃で倒す武器だとか。


「それは、里で一番の強者に与えられる武器だ。それをそんなに簡単に振り回すとは」

「あら。すみません。そのような由緒あるものを。お返ししますわ」

「いや、今はヴィオラが使っていてくれ。うん」


 ゴウラさんがカナボウを返そうとした私を制します。

 まあ、そうですね。まだ何も喋っていませんもの。


「では、もう一振り、いきましょうか」

「ふざ、けるな……!」


 腹の底から、いえ、別のどこかから吐き出されたような声が黒衣の陰陽師から聞こえてきます。


「ふざけるなふざけるなふざけるな! 黒桜様に与えられた力は無敵なのだ! 貴様ら如きに負ける訳が! ……黒桜様! 私の身体を捧げます! こやつらに、裁きを!」


 黒衣の陰陽師がそう叫ぶと、黒い刺青が明滅し始め、ふっと消えたかと思うと、


「ごばっ……!」


 黒衣の陰陽師の体中から黒い血が吹き出し、その血がぶるぶると蠢いて、今にも……。


「呪われろ! 金髪碧眼の陰陽師ぃいいいい!」


 自ら意志を持ったかのように黒い血が私に襲い掛かります。

 カナボウを振っても多少消える程度で効果は薄いようです。

 で、あれば。


「万物よ、世の理を壊す事なかれ、全てを正しき流れへ。邪を焼き、天へ送れ。天は雨を降らし地へ落ちる。天から与えられし火は、木と交わり、炎と化す。全てを正しき流れへ『白炎』」


 私は、【火】のオフダを掲げ、白い炎を放ちます。

 白い炎は血を喰らうように燃えていき、そのまま、黒衣の陰陽師を包み込んでしまいます。


「ば、馬鹿なぁあああああ!? 黒桜様の御力が! こんな……いとも……簡単に!?」


 黒衣の陰陽師の叫びが徐々に弱弱しいものに変わっていきます。

 ちらりと横目で見たドウラン先生は頷いていらっしゃいます。

 であれば、ここが潮時でしょう。


「どうやら、お別れの様ですね」

「ふははははは! 何も吐かせることは出来なかった! 最後は私の勝ちだったようだなあ!」

「いえ、黒桜とやらの魔力は追えました。鬼人の里は滅びず、ツルバミとの戦争も起こせず、貴方は死ぬ。完全敗北ではありませんか?」

「……は?」


 白い炎に焼かれながら、呆けた顔に一瞬変わるその顔は失礼ながら滑稽なものでした。


「黒桜が良くないものであることはようく分かりました。私の穏やかな日々の為に、全て潰させていただきます」


 私は、再びカナボウを持ち上げると白い炎を纏わせ、苦しそうな陰陽師に微笑み声を掛けて差し上げます。


「地獄で、小鬼共含めあなたが様々なものを奪ってきたであろう方たちに懺悔してきなさい。では、ごきげんよう」

「待っ……!」


 どん! と大きな音が鳴り響き、白い火柱が天を一瞬天を貫くと雲が逃げるかのように散っていき、鬼人の里を襲った影は跡形もなく消えてしまったのでした。


お読みくださりありがとうございます。

また、評価やブックマーク登録してくれた方ありがとうございます。


少しでも面白い、続きが気になると思って頂けたなら有難いです……。


よければ、☆評価や感想で応援していただけると執筆に励む力になりなお有難いです……。

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