第二十八話 カナボウという敵をぶっ潰す武器、いとおもし・その三
夥しい数の小鬼共が襲い掛かってきて私達は少しずつですが後退せざるをえなくなってしまいました。
「くそっ! これじゃあキリが無いぞ!」
「リンカさん、大丈夫ですか?」
「問題ない! この程度の敵ならば!だが、多すぎる!」
「み、みんな!」
その時、ゴウラさんがこちらに向かってやってくる声が聞こえてきます。
「おーい!」
ゴウラさんは、カナボウという大きな金属製の棒を持っていた為、一人遅れて来ていましたが漸く辿り着いたようです。
「そうだわ。リンカさん、ドウラン先生、ヨーリ。隙を突いてヤツの捕縛を」
「な……! ゴウラと二人でやる気か!? この数を? いくらアンタとゴウラでも無茶だ!」
リンカさんがそう言って私に詰め寄ろうとするのを、ドウラン先生が肩を掴み止めて下さいます。
「まあまあ、リンカ殿。お嬢ちゃんは気にするな。任せたぞ」
「はい! ゴウラさん合流しますよ!」
「く! 絶対に死ぬなよ!」
リンカさんの言葉を背に受けながら、私は、再び出来るだけ大きな魔力を広げ、ゴウラさんの元へ向かいます。
すると、案の定、小鬼達は私の魔力にひかれ、こちらに一斉に駆け出してきます。
「な……!なんだあの魔力は……あれもヴィオラの?」
「リンカ殿、ヨーリ! 俺に掴まれ! そして、出来るだけ息をひそめろ! 術で隠す! お嬢ちゃんが心配ならとっとと自分の役割を果たせ!」
三人か小鬼の波にのまれていきますが、ドウラン先生であれば大丈夫でしょう。
「ヴィ、ヴィオラ!」
「ゴウラさん! 貸してください!」
「おう! 俺の力があれば! こいつらなんて!」
「いえ! そのカナボウを!」
「うが?」
私はゴウラさんからカナボウをひったくると、【金】のオフダを貼り付け、
「おおきくな~れ」
そう言って魔力を流し込みます。シンプルな式なので、魔力を込めるだけなのですが、後の事も考え、言葉ものせておきましょう。
すると、枝を大きく広げ葉が生い茂る大樹のような大きさになったカナボウが出来上がります。
「「なあああああああああ!?」」
ゴウラさんと黒衣の陰陽師の絶叫が綺麗に揃ってしますが、それはまあ置いといて。
「うふ」
ただ小鬼に向かって倒す。
すると、カナボウは小鬼共を潰し、地面とぶつかった風圧で偶然生き延びた小鬼共も吹き飛んでいきます。
えーと、また大分派手にやってしまいましたが、ドウラン先生はなんとなく私のやることを察していた様なので大丈夫でしょう。
「ぜ、全滅……!」
ゴウラさんが茫然とした表情で大きく潰れた大地を見つめます。
出番を奪って申し訳ない気持ちは正直あります。
ですが、緊急事態でしたから。それにしても……。
「カナボウって凄いのですね……」
「いやいやいや! すごいのは、ヴィオラの力だ! なんだ、これは?!」
なんだこれはと言われても、カナボウを大きくして叩き潰したという他ないのですが……。
「お嬢ちゃん、捕まえたぜ! っていうか、なんだ今のは?!」
ドウラン先生も叫んでいらっしゃいます。
いえ、ですから、なんだと言われても……。
「カナボウをただ大きくしただけですが……」
「「「「いやいやいや!」」」」
あらま、黒衣の陰陽師まで一緒になって否定して、このあと、その余裕が続くと良いですね。私は、ゴウラさんと一緒に捕らえられた黒衣の陰陽師の元へ向かいました。
真実を明らかにするために。
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