第二十二話 オニと呼ばれる一族襲われ、いとうし・その二
【登場人物】
ヴィオラ・ディフォルツァ
主人公。金髪碧眼だが、一筋だけ黒髪が生えている。
陰陽師の才能を持つ。
ヨーリ
ヴィオラのペット。「ぽーん」となく。変身することが出来る。
ジパングに来てバケダヌキという種族であることが判明。
ドウラン・アリマ
ツルバミの陰陽師。いずれツルバミの地に救世主が現れると予言していた男。
日焼けした肌、顎髭があり、触るのが癖。
ゴウラ
鬼人族の男。赤い肌と額に一本の角。
「うがあああああああああああ!」
「グギャアアアア!」
ゴウラさんは餓鬼がぶつかり合い、餓鬼を吹き飛ばし、慌ててもう私に迫ろうとする餓鬼に飛びかかります。
流石鬼人の一族。そこいらの冒険者では相手にならないような速さと力を見せつけてくれます。
ですが、その鬼人に敵わないとはいえ、餓鬼としてはあり得ないほどの力でゴウラさんと組み合っているのですが明らかに、
(正気とはいいがたい目……)
心当たりがなくもないのですが、当たって欲しくはない予想です。
私は、ひとまず、まだ慣れない陰陽術を四つ連続で放った身体への反動を確かめながら、深く呼吸し、回復にも努めます。
「ビオラ、だいじょうぶか!?」
私の目の前に迫っていた餓鬼を投げ飛ばし、ゴウラさんは目を前に向けたまま問いかけてきます。
「ええ、ゴウラさんありがとう。もう少しだけ守ってね」
「わかた! けど、ヨーリが」
ゴウラさんは、目の前の二体の餓鬼との間合いを測りながら、一体を相手することになったヨーリに対する心配の言葉を零しています。
「ヨーリが心配?」
「ヨーリちいさい! こいつらつよい!」
「大丈夫よ、ヨーリは弱くないから」
「え?」
そう言った瞬間、私たちの目の前の餓鬼達が白い風に吹き飛ばされていきます。
その風は白馬の、昨日私が陰陽術で作り上げた白馬にそっくりで。
「あたらしいやつ!?」
「まあ、ヨーリ。凄いわ、自分より大きなものにも化けられるようになったのね。やっぱりシオームスビのお陰かしら?」
「え? よーり?」
ゴウラさんが呆けた声を出したのと同時位に、白馬は煙を上げ私の愛するヨーリの姿に戻り、こちらに笑いかけてきて、
「ぽぽーん!」
「ええ、とてもかっこよかったわ」
ヨーリは自慢げに胸を? 腹を? 張っていたのでした。
「す、すごい……ビオラは、もう元気、か……」
「まあ、その心配は置いといて」
慌てて振り返るゴウラさんの横をすりぬけ、再び立ち上がろうとする餓鬼に駆け寄ります。
あの餓鬼は普通じゃない。ただの打撃ではまた立ち上がる。なので、刃物などで筋等を切ってしまうか息の根を止めるのが最善。
もう十分な時間を頂いた私は、吹き飛ばされた餓鬼が飛びかかってくるのをドウラン先生から学んだ動きで流れるように躱し、ナイフで首を切ってしまいます。
残念ながら、餓鬼が本来持つ小賢しい知性も奪われてしまっているので、かける言葉は死者に対してになってしまいました。
「仇となるのかは分かりませんが、必ず討ってみせますので、安らかにおやすみなさい」
もう一体ヨーリが相手していた餓鬼は、流石ヨーリ、大蛇にでも化けたのでしょう。体中をバキバキに砕かれ行動不能となっています。
であれば、やることは。
「ヨーリ!」
「ぽーん!」
「ゴウラさん! 私たちは行きましょう! 里の方へ!」
「お、おう!」
ドウラン先生が心配です。
鬼人族が私達をどれだけ理解してくれているのか。昨夜のゲンブ様の話の雰囲気では、最悪ドウラン先生は鬼人族に背中を狙われながら結界を張らざるを得ないかもしれませんから!
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