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第73話~希望の遺跡、裏8階層 溶岩エリアは炎の魔物が多くて火傷しそうです~

 裏8階層は溶岩地帯だった。

 真っ赤な溶岩の河が流れていて、その上に岩の浮島が浮かんでいるという感じのエリアだ。


 俺たちはその浮島の一つに乗り、川の流れに任せるままに進んでいる。


「気味の悪い光景だな」

「その通りだな。リネット」


 リネットの感想に俺はそう答えた。


 確かになんとなく気持ちが悪い。

 ドロドロした溶岩が時々薄気味悪く光るのなんか特に気持ちが悪かった。


 それに輪をかけているのが暑さだ。

 ここは砂漠エリアほどの暑さではなかったが、かわりに湿気が高くじめじめしている。

 そのため、じんわりと汗が出てきて、ねっとりとして、肌感覚的に気持ち悪いのだった。


 ちなみに、最初俺がリネットのことをリネットと呼んだ時、エリカとヴィクトリアはちょっと驚いた顔をしたが、特に何か言って来なかった。ただ。


「リネットさん、ようやく旦那様に名前で呼んでもらえるようになったのですね」

「よかったですね」

「ああ、よかったよ」


 俺の後ろでそう言い合っているのは聞こえた。

 それを聞いて、俺は、やっぱり『さん』付けで呼ぶのは他人行儀だとみんな思っていたのかと、思った。

 まあ、いい。先へ進もう。


★★★

 

 このエリアには、結構敵も出てきた。


「旦那様、フレイムドッグとフレイムキャットです」


 このエリアに出現するのは、フレイムドック、フレイムキャット、フレイムフィッシュといったような火を纏ったモンスターたちだった。

 どれも炎のブレスや魔法を使用してくるので、攻撃力が高く質が悪い連中だと言える。

 だが、反面、対処がしやすいともいえる。


「『天凍』」

「『氷弾』」

「きゃん」

「ぎゃん」


 俺とエリカの魔法攻撃を受けたフレイムドッグとフレイムキャットが、その炎の衣を突き破られ、

悲鳴をあげながら絶命する。


 ここの連中は極端に冷気属性に弱いのだ。

 炎という強力な攻撃手段を得たのと引き換えに、冷気という弱点を得たのがここの連中なのだから、

これは仕方がなかった。


 だから、俺とエリカの魔法でサクサク始末できたのだが。


「数がちょっと多いですね」


 ここの連中は粘着質だった。

 倒しても、しばらくしたらまた現れ、それを倒しても次が現れる。

 その繰り返しだ。

 正直、面倒くさかった。


「だが、やるしかないか」


 俺たちはひたすら敵を倒して先へ進んで行く。

 それしか方法が無いのだから。


★★★


「終わった?」


 それからしばらく進むと、急に魔物の襲撃が止まった。


「一体どうしたのでしょうか」


 エリカが首をかしげるが、その理由はすぐにわかった。


「何か遺跡のような建物があります」


 ヴィクトリアが遠くの方を指さす。

 そちらの方を見ると、確かに建物のようなものが見えた。


「成程、いよいよこのエリアもゴールが近いということか」


 魔物の襲撃が止んだ理由に合点が言った俺たちは、早速次の行動に移る。


「『重力操作』」


 今いる浮島から飛び立ち、一気に建物がある浮島へと向かう。


 5分後。

 件の浮島へと到着する。


★★★



 浮島はそれなりの広さがあった。

 少なくとも、裏7階層の島よりは広い。


 俺たちはその浮島をてくてくと歩いて行く。

 すると、目的の建物はすぐに見つかった。


「祭壇だな」


 他の階層でも見たような祭壇が浮島の中央にあった。

 だが、このエリアもただで通してくれる気はないらしい。


「炎の獅子ですね」


 祭壇の前には炎の獅子がいてこちらを睨んでいた。

 10メートルくらいの大きさがあってそれなりに強そうだが、俺たちだってここまでこれたんだ。

 不覚を取るとも思えない。


「さあ、皆行くぞ」


 俺たちは武器を構え、炎の獅子に立ち向かうのだった。


★★★


 ゴオオオ。

 炎の獅子は開始早々炎弾を放ってきた。


「てや」


 それを俺は魔法を纏わせた剣で切り裂く。


 ドゴオオン。

 炎弾が左右に分かれ爆発する。


 さすが裏8階層のボス。強力な攻撃手段を持っていやがる。

 だが、俺たちだってここに来るまで遊んでいたわけではない。


「『氷弾』」


 エリカが魔法を放つ。

 炎の獅子がそれを炎弾で迎撃する。


 炎と氷がぶつかって爆発する。

 その爆発の隙間をかいくぐってリネットが突撃する。


「うぎゃああ」


 エリカに気を取られていた炎の獅子は、足にリネットの一撃をもらい絶叫する。

 リネットに攻撃された炎の獅子は、リネットを踏みつぶそうと前脚を振り上げるが、そうは問屋が卸さない。


 「ちぇすとお」


 すかさず剣に氷と風の二属性を付与した俺が、獅子の口に剣を突き入れる。


「!」


 俺の攻撃を受け、炎の獅子は口の中ばかりか声帯まで傷つき、悲鳴さえ上げられなくなる。


「『水刃』」


 そこへ、獅子の横に回り込んだエリカが、獅子の頸動脈めがけてとどめの魔法を撃ちこむ。

 大量に血を吹き出しながら、獅子はその場に倒れ動かなくなる。


「やりましたあ」


 獅子を倒すとみんなが俺に近づいてくる。


「今回は偉くあっさり倒せましたね。ワタクシたちって、実はものすごく強くなっています?」


 そんなことをヴィクトリアが言い出したので、俺が答えてやる。


「ああ、強くなってると思うよ。この迷宮のボスクラスでも、だいぶ優勢に戦えるくらいには。でも、だからと言って、決して油断したらダメだからな。油断して努力や作戦を練るのを怠るのはバカのすることだからな」

「はい、気を付けます」


 俺の訓示にヴィクトリアが元気に返事をする。

 うん、元気があってよろしい。


 こうして俺たちは裏8階層のボスを討伐したのだった。


★★★


「ところで、エリカ。炎の獅子って、何か素材として売れるのか?」

「はい、旦那様。確か、炎の獅子の皮には耐火性がありますので、炎耐性用の防具の素材として、かなり高く売れたはずです」

「マジか!なら、回収だ」

「ラジャーです」


 このように、炎の獅子を俺たちの明日の生活の糧としたところで、俺たちは先にある遺跡へと進む。


「おっ、あった。あった」


 予想通り、遺跡には転移魔方陣があった。


「それじゃあ、次行くぞ」

「「「はい」」」


 そして俺たちは転移魔方陣を通り、次の階層へと進むのであった。

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