第649話~これぞ神属性魔法の神髄! 陸橋を創造せよ!~
マウントオブスピリットの神域への山道を進んでいると、現在地から少し行った場所に渡れそうにない湖があることが分かった。
オルトロスは湖について何も言っていなかったのに、どういう事だろうか?
そう思い悩んでいると、横にいるヴィクトリアがアドバイスをくれた。
「この先の湖が何か知りたかったら、オルトロスちゃんに聞けばよいではないですか」
「それもそうだな。考えるよりもそっちの方が早かったな」
そんなヴィクトリアのアドバイスを受け、早速オルトロスを呼び出して、聞いてみると。
「ああ、その湖はクイーン湖ですね。とてもきれいな湖ですよ」
そうやってこの先の湖について教えてくれたのだった。
「というか、オルトロス。お前、ここの湖のことを知っていたのか?」
「もちろんです」
「だったら、前もって渡れない湖なんて難所が途中にあるって教えてくれていたら良かったのに……」
「渡れない湖?」
俺の言葉を聞いたオルトロスは怪訝そうな顔をしつつも話を続ける。
「そんなことはないと思いますよ。確かクイーン湖には大きな橋が架かっていたはずです。だから別に難所でも何でもないはずです。ですから、私も特に何も言わなかったのです」
「え?そうなの?でも、ヴィクトリアの風の精霊の話だと渡れそうにないって……。ヴィクトリア、そうだろう?」
「はい、風の精霊の話だと、橋とかは無くて渡れそうにないみたいですよ」
オルトロスの話によると湖には橋が架かっている。
しかし、風の精霊の報告によるとそんな物はなかった。
混乱する話ではあるが、こうなっては湖のすぐそばまで行って確かめる必要がありそうだった。
「行くぞ!」
俺は状況を確かめるために湖に近づいて行った。
★★★
問題のクイーン湖のすぐ側までやって来た。
オルトロスが言っていた通りクイーン湖は直径五キロくらいの大きさのきれいな湖だった。
青い澄み切った水がとてもきれいで、朝日が水面に反射して光り輝く光景が素晴らしかった。
ただ、見渡す限りでは橋はかかっていないので渡れそうな感じはしなかった。
それに湖の周囲は断崖絶壁で覆われており、湖を迂回して渡ることはできそうもなかった。
さて、どうすべきか?
今の状況を見て俺が悩んでいると、横にいたオルトロスがこんなことを言い始めた。
「ホルスト様。ここに架かっていた橋。どうやら落ちてしまったようですね」
「橋が落ちた?」
「はい。落ちていますね。あちらをご覧ください。橋の残骸が見えます」
そう言いながらオルトロスは頭を湖の方へ向ける。
そちらの方を見ると。
「あれは橋の支柱かな?」
確かに橋の残骸らしきものがそこにあった。
★★★
もう少し詳しい状況を知るために橋の残骸の方へと近づいてみる。
すると。
「これは酷いね。橋がバラバラにされて、その残骸が湖に沈んでいるのがここからでもはっきりと見えるよ」
と、リネットが言うようにバラバラにされた橋の残骸が湖の底に沈んでいるのが見えた。
それは見た俺は悩んだ。
「本当に橋が落ちてしまっている。こんな長い橋、修復は不可能そうだ。本当に困ったものだ」
そう呟きながらどうやって渡るべきか、考え込んだ。
すると、そんな俺を見て、ヴィクトリアがこんなことを言って来た。
「ホルストさんって、確か『天地創造』の魔法が使えましたね。それで陸橋を造ってはどうですか?」
「陸橋?」
「はい。前にワタクシのお母様が『天地創造』の魔法で絶海に島を造っていたでしょう?あれと同じように、魔法で馬車が通れるような道を造ればいいと思います」
「……それだ!」
それは良さそうな考えだった。
確かにここに馬車が渡れるような陸地があれば無事にここを渡れそうだった。
とても素晴らしいアイデアだ。ヴィクトリア、いいことを言ったな。
そう思った俺はヴィクトリアの頭を撫でながら褒めてやることにする。
「ナイスアイデアだ!偉いぞ、ヴィクトリア!」
「えへへ、それほどでもないですよ」
俺に褒められたヴィクトリアは満更でもなさそうな感じで、嬉しそうな顔をするのだった。
それを見て、本当こいつ可愛いよな、そう思う俺なのであった。
★★★
さて、それでは早速陸橋を造って行くとするか。
俺はこの魔法を使うのは初めてだが、前にヴィクトリアのお母さんが島を造るのを見ているので、それを参考にやってみることにする。
「すー」
深呼吸し、魔力を集中させ、準備を調えると。
「『天地創造』」
魔法を発動させる。
すると、効果はすぐに現れた。
「ホルストさん、すごいです!湖の底から陸地が生えて来ています!」
と、、この魔法を見るのが初めてのネイアが興奮気味にそう言っている。
その言葉通り、まるで木が成長するかのように湖の底から土がどんどんと出現して行き、十分も経たないうちに。
「旦那様、この道なら問題なく通れそうですね」
「ああ、そうだな」
馬車さんだいくらいが通れそうなくらい道幅が広い陸橋が出現したのだった。
しかもその長さはおよそ五キロほどもあった。
自分でもこんなものをあっさりと造りだせてしまうとは驚きであった。
それはそれとして、これで問題は解決だ。
「さて、それでは先に進むぞ」
俺達は移動を再開した。
★★★
陸橋を移動している途中、俺はオルトロスと話し合った。
俺の隣には先程と同じくヴィクトリアが座っているのだが、俺たちの真後ろでは馬車の隙間からオルトロスが頭を出して俺と話している。
話す内容は、なぜ橋が落ちたのかということについてだ。
「何とか俺の魔法で乗り切ることができたけど、ここにかかっていた橋が落ちていたなんて意外な展開だったな」
「ええ、そうですね。私もまさかと思いました。ここの橋って、山の精霊の聖なる力で保護されていたのですよ。それが落ちるとは想定外でした」
「え?ここの橋って山の精霊の力で守られていたの?」
「はい、その通りです。ですから、焼こうが、衝撃を与えようが簡単に壊すことはできないのですが……」
「それがぶっ壊れていたということは」
「やはり山の精霊に異変が発生しているとみて間違いなさそうですね」
「まあ、そう考えるのが自然だよな」
まあ山の精霊に守られていた橋が壊れていたということは、山の精霊に異変が起きているということで間違いなさそうだった。
予想していたことではあるが、こうして現実を突きつけられるとやるせない気分にならざるを得なかった。
とはいえ、ここで立ち止まる訳には行かない。
早く神域に辿り着いて、山の精霊の情報をもっと得なければならない。
そう改めて思いながら、俺は陸橋を渡るのを急いだ。
★★★
そんな感じで陸橋を渡っていた俺達だが、三十分くらい陸橋を走って、そろそろ陸橋を渡り切るころになって異変が起こった。
俺の隣に座っているヴィクトリアが警告の声を発する。
「ホルストさん。偵察に出していた風の精霊からの報告です。前方から魔物が迫ってきているようです」
どうやら魔物が迫ってきているようだ。
俺は馬車の中に声を掛けた。
「おい!魔物だ!戦闘準備をしろ!」
そう馬車の中に声を掛けつつ、俺も剣を抜き、戦闘に備えるのだった。




