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閑話休題92~その頃の神聖同盟 プラトゥーン、部下の不甲斐なさにブチ切れる!~

 ホルストたちが霊山マウントオブスピリットへ向かっている頃、『死出の森』にある神聖同盟の本部ではプラトゥーンクローンが部下から今後の方針について報告を受けていた。


「我が神よ。本日の報告です」

「今日は何についての報告だ?」

「はい、本日は霊山マウントオブスピリットの魔力転送装置の稼働状況についての報告です」


 プラトゥーンクローンの質問に対して、、部下は恭しい感じで頭を下げつつプラトゥーンクローンに資料を手渡してくる。

 プラトゥーンクローンは資料を受け取ると、パラパラッと資料をめくり中身を読んでいく。

 そして、しばらく読んだところでニヤッと笑い、部下を褒めた。


「ほほう。霊山マウントオブスピリットを使った魔力集め、順調そうではないか」

「はい。マウントオブスピリットの地脈エネルギーの収集は順調に行われています。おかげで魔力も想定以上に集まっております」

「そうか。この分なら『静かなる谷』の損失分を補えるだろう」


 プラトゥーンクローンが褒めたのは、そうやってマウントオブスピリットの魔力送信施設の稼働が順調だったからだ。


「はい、その通りでございます。マウンテンオブスピリットの施設からの魔力供給が想定以上で、一時は減りぎみだった予備の魔力タンクとして使用している魔石にも再び魔力を蓄えることができるようになっております」

「そうか。そうか。それは何よりだ」


 本部の結界を維持するための魔力供給が順調であることに満足したプラトゥーンは終始上機嫌で、とても穏やかな感じだった。


 こういう時のプラトゥーンクローンの感じ、ヴィクトリアの手作りお菓子を食べた時のヴィクトリアのおじいさんにそっくりだった。

 この辺親子だけあってよく似ていた。


 ただ、プラトゥーンクローンがニコニコしてきたのはここまでだった。

 マウントオブスピリットの話をするうちにとあることを思い出したプラトゥーンクローンが、部下にこんな質問をしたのだった。


「そういえば。マウントオブスピリットと言えば、山の精霊とかいう上位精霊がいたな。そいつはちゃんと確保できているのか?」


★★★


 山の精霊をちゃんと確保できているのか?


 プラトゥーンクローンのその質問を聞いた部下の顔がたちまち蒼ざめた。

 意外に勘が鋭いプラトゥーンクローン、この辺ひ孫のヴィクトリアによく似ている、部下のそんな変化を見逃すわけがない。

 すぐに部下を問い詰める。


「お前、まさか山の精霊を捕らえることに失敗したのか?」

「いや、それが、その……」

「何を口ごもっておる。はっきり言わぬか!」


 口ごもる部下に対し、プラトゥーンクローンは激しく追及する。

 追及された部下の方は観念したのか、事の次第を正直に話し始めた。


「実は一度は山の精霊を捕らえることに成功していたのですが、その後捕縛のための結界の隙を突かれて逃げられてしまいました」

「はあ?逃げられただ、と?」


 折角捕えられたという山の精霊に逃げられたと聞き、プラトゥーンクローンの目がつり上がり、怒りマックスの顔になる。


 こうなっては彼は我慢しない。

 部下をさらに激しく追及し始める。


「逃げられるとは何事だ!捕縛に失敗するよりもはるかにひどい醜態ではないか!しかも、それを私に報告しようとしなかったのは何事だ!洗いざらい全部説明しろ!」


 と、部下を激しく叱りつける。


 こうなることが分かっていたから説明を省略したかったのです。


 部下は内心そう思いつつも、少しでもプラトゥーンクローンの怒りを鎮めようと言い訳を開始する。


「我が神よ。お言葉ですが、今更山の精霊が逃げ出したところで問題はありません。山の精霊を捕らえた時点ですでに山の精霊の力をほぼすべて奪っております。力を失った山の精霊が逃げ出したところで、何もできやしません」


 そう言って、山の精霊が逃げても問題ないということを強調して、プラトゥーンクローンをなだめようとする部下だったが、そのくらいでプラトゥーンクローンが黙り込むはずがない。

 すぐに追加の説教が始まった。


「魔力供給装置に問題が出るかどうかの話ではない。これはお前たちの気が緩んでいるかどうかの問題だ。確かに山の精霊を逃がしたところで魔力の供給に影響は出ないのかもしれない。しかし、山の精霊は上級精霊で神の力を帯びている存在。そんなものを野放しにしては、この先どんな事態になるかわからない。だから絶対に逃がしてはならない存在なのだ。それをお前たちはみすみす逃してしまった。これは大いなる失態である!」

「しかし、我が神よ……」

「これ以上の言い訳など聞きたくない!もう一度山の精霊を捕えて、今度こそ逃がさないように封印せよ!」

「はっ、分かりました!直ちに実行いたします!」


 このままではプラトゥーンクローンの怒りに油を注ぐだけだと判断したのだろう。

 部下はそう返事をすると、命令を実行すべく、慌てて部屋を出て行くのであった。


★★★


 慌てて出て行った部下を見送ったプラトゥーンクローンは自室で一人あふれ出てくる怒りを抑え込むのに必死だった。


「しかし、私の部下たちはどうしてこうも間の抜けた奴らばかりなんだ。愚息の送り込んできた連中との戦いには負け続けるし、この前はダムをぶっ壊されるし、今回は山の精霊を逃がしてしまう。本当に不甲斐ない連中ばかりだ!」


 彼は怒りを抑えつつも、そうやって部下たちの不甲斐なさにブチ切れている。

 そして、そうやって怒りつつもこれから先のことについて思いを巡らせる。


「やはり今使っている部下だけでは魔力供給施設の防衛が不安だな。マウントオブスピリットはガルーダが味方になってくれたから良いとしても、残りの二つは心配だな。よし!本当ならあまり神気は使いたくないのだが、神の力を行使して援軍を呼ぶことも検討せねばなるまいな」


 そこまで言うと、彼はどうしようかと思案に暮れるのだった。


 彼の言う援軍。

 果たして何者なのであろうか。

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