第645話~オルトロスと一緒に神域の入口へと向かう でもその前に寄り道しよう~
オルトロスの話を聞いた翌日。
「お世話になりました。それでは」
「いえ、こちらこそ息子たちを助けていただきありがとうございます。お気をつけて旅を続けてください」
そうやって村長さんたちと別れの挨拶を交わした後、俺たちは村を離れた。
そして、馬車を走らせ再び北にあるマウントオブスピリット方面へと向かった。
★★★
オルトロスが旅の仲間に加わったことで、馬車の中がさらに賑やかになった。
「うわ~、お兄ちゃん。この白い犬なに?どこで拾って来たの?」
「「「きゃ~、かわいいね」」」
そうやってオルトロスと会うのが初めての妹やその仲間の子たちがはしゃいでいる。
こいつ、犬じゃなくて一応オオカミなんだが……。
そう思いつつも、一応妹の奴にオルトロスのことを紹介しておくことにする。
「一応言っておくけど、こいつは犬じゃないぞ。オオカミの神獣オルトロスだ」
「皆様、初めまして。私はオルトロスというオオカミの神獣です。よろしくお願いします」
「「「「ええ~。オオカミがしゃべった!」」」」
俺の紹介でオルトロスが自分で自己紹介したことに妹たちは驚いた顔をした。
が、すぐに「まあ、お兄ちゃんの知り合いだから何でもありか」と、落ち着くと、今度は自分たちの方から挨拶をする。
「ホルストの妹のレイラです。それでこっちが私の仲間のマーガレットとベラとフレデリカよ。オルトロスちゃん、よろしくね」
「「「よろしくね」」」
と、そうやって挨拶をした後は再び妹たちがオルトロスをいじりだす。
「オルトロスちゃん。毛、ふさふさで気持ちいいね」
「オルトロスちゃん、お菓子食べる?」
そんな感じでオルトロスを撫でてやったり、おやつをあげたりしていた。
触られるオルトロスの方も別に嫌がるでもなく。
「このケーキうまいですな」
と、もらったケーキをおいしそうに食べながら、のんびりと妹たちにかわいがられていた。
お前、オオカミなのに完全に犬扱いだぞ。
とは思ったものの、オルトロスに不満はないようなので放って置いて、旅を続けることにする。
★★★
さて、そんな感じで旅のメンバーにオルトロスが加わった俺達だが、このまま真っすぐマウントオブスピリットに向かうのかというと、そういう訳でもなく。
「ホルスト様、ここを右に行ったところの森ですよ」
ちょっとだけ寄り道して、オルトロスの指示に従って道中にある森へと入って行く。
ここの森に何があるのかというと。
「なあ。オルトロス。ここの森にネイアが育毛剤を作るのに使っている材料の薬草が群生しているのか」
「はい。この森の奥には清流が流れている場所あるのです。そこには妹殿がお求めの育毛剤の材料となる薬草が大量に生えています」
そうオルトロスが言うように妹が欲する育毛剤の材料となる薬草が生えているのだそうだ。
問題の薬草は結構珍しい物のようで探すのは大変な物らしいので、オルトロスがそのありかを教えてくれるのはありがたい話しであった。
というか、そんな珍しい薬草の場所を知っているとか、さすがは獣人の国を管理する神獣である。
本当オルトロス様様である。
え?山の精霊の救出し神聖同盟の装置を壊さなければいけないのにそんな寄り道をしている暇がるのかって?
それがあるのだ。
「ホルスト様。山の神域に行くための道に行くためには満月の日の夜にマウントオブスピリットの特定の場所から入らなければならないのです」
オルトロスによるとそういう事らしい。
それで次の満月は五日後だ。
オルトロスの言う特定の場所には四日もあればつくらしいので、ちょっと寄り道して薬草を採取しようということになったのだった。
今回の旅の目的の一つに薬草の採取は含まれているので、こういった隙間時間にそれをこなせるというのならとても都合が良いのだった。
そんな訳で、ここで薬草を採取してから先に進もうと思う。
★★★
皆様、お久しぶりです。エリカです。
今現在、私たちは育毛剤の材料となる薬草の群生地へと向かっています。
まあ、マウントオブスピリットでのメインイベント前のちょっとした時間つぶしと言った感じの寄り道です。
余った時間の有効活用という意味ではよい方策だと思います。
それで、私は今御者台に座っています。隣にはパトリックの手綱を取っている旦那様がいます。
え?今回の旅では旦那様がホルスターたちに馬の練習をさせるのではなかったのかって?
それはそうなのですが、それについては今日の分は終わってしまったので、二人は今頃馬車の中でお昼寝していますよ。
そんな訳で、私は今こうして旦那様と二人きりなわけです。
何だかこうして旦那様と二人きりで馬車にの御者台にいるのも久しぶりな気がします。
この旅の間、旦那様が御者台にいる時はホルスターたちといることが多かったですし、その前『静かなる谷』にいる時はボートに乗っていましたからね。
夜二人で夫婦生活を営みはするものの昼間明るい所で二人だけというのは本当久しぶりです。
あまりにも久しぶり過ぎてドキドキしています。
ドキドキしすぎるあまり旦那様を直視できないくらいにはドキドキしています。
でも、そんな状況でももっと旦那様を感じていたい。
そう思った私は旦那様に囁きます。
「旦那様、外は寒くないですか?」
「そうだな。少し寒いかな」
「それでしたら、ここに毛布があるので一緒に使いませんか?同じ毛布にくるまるととても暖かいと思いますよ」
「そうだな。そうするか」
旦那様のオーケーが出たので早速毛布を広げて旦那様と二人で被ります。
とても暖かいです。
最高です。
できるならこのまま永遠にこの状況を維持したいところですが、目的地の清流には一時間ほどで着いてしまいます。
なので、そこまでこの状況を楽しむことにします。
★★★
さて、そんな感じで旦那様との時間を楽しんでいた私なのですがその状況は一時間持たずに終わってしまいました。
目的地の清流まであと十分ほどで到着するという場所まで来たところで。
「うん?探知魔法に反応?魔物でしょうか」
何やら私の探知魔法に何者かが引っ掛かりました。
私はすぐに状況を旦那様に知らせました。
★★★
エリカから報告があった。
どうやら魔物が出現したらしい。
オルトロスに聞いていた話によると、ここの泉には川の主と呼べるような魔物がいるらしかった。
多分そいつが現れたのだと思う。
ということで、早速戦闘準備開始だ。
「おい、魔物だぞ」
俺は馬車の中に声を掛けると、自らも剣を抜くのであった。




