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第642話~オルトロスから情報を得る その1 オルトロスの用件~

 ヴィクトリアのお父さんの命令を受けて、オオカミの神獣オルトロスが俺達を訪ねてきた。


「まあ、外は寒いだろうからひとまず中に入れよ」

「ありがとうございます」


 とりあえず窓を開けて、オルトロスに中へ入るように促すとオルトロスは足音を一切立てることなく部屋の中へと入って来た。

 この辺はさすがにこの世界のオオカミたちの支配者と言うべき技術であると思う。


 それはともかく折角訪ねて来てくれたのだからオルトロスを歓迎しておくことにする。


「ヴィクトリア。こうしてオルトロスが訪ねて来てくれたんだ。オルトロスに何か食べ物を出してやれ」

「ラジャーです。オルトロスちゃん。何か欲しいものがありますか?」

「そうですね。それでしたら甘いお菓子と水をお願いします」

「わかりました」


 オルトロスの希望に沿ってヴィクトリアがハチミツがかかったクッキーと水を出してオルトロスの前に置いてやると。


「いただきます」


 お腹が空いていたのだろうか。

 オルトロスはぺろりとそれを平らげてしまった。

 ただそれでもお腹がいっぱいになったという感じではなかったので。


「おかわりどうぞ」


 と、ヴィクトリアがもう一皿クッキーを置いてやると。


「ありがとうございます」


 そうお礼を言い、先程ほどではないが割と短時間で皿を空にしてしまった。

 これでとりあえずは満足したのか。


「ごちそうさまでした。それでは、私がここへ来た用件についてお話ししましょう」


 と、ようやくオルトロスの話が始まったのだった。


★★★


「私はマールス様のご命令により、ホルスト様たちを手助けするために駆けつけてきました」

「ヴィクトリアのお父さんの命令で?」

「はい。その通りです」

「ふ~ん。そうなんだ。それはそれでいいとして、何でヴィクトリアのお父さんが俺たちがここへ来た事を知っていたんだ?」


 オルトロスの話を聞いて俺が一番最初に疑問に思ったのはそれだった。


 ヴィクトリアのお父さんに今俺たちが何をしているのかは伝えていない。

 それなのになぜかオルトロスに俺たちを手伝うように命令が出ている。

 ヴィクトリアのお父さんが神様だから知っていたと言えばそれまでなのだが、気になりはする。


 この疑問に対するオルトロスの回答はこんな感じだった。


「それは簡単な話です。白狐殿からホルスト殿たちの現状がアリスタ様に伝わり、さらにアリスタ様からマールス様に伝わり、最後に私に命令が来たのです」

「なに?白狐から俺たちのことがアリスタ様に伝わっていたのか?」

「はい。聞くところによると、ホルスト様は白狐殿から『静かなる谷』のことを聞いて、『静かなる谷』へ向かわれたのですね」

「ああ、そうだ」

「それで、白狐殿がホルスト様に『静かなる谷』の話を聞くきっかけになったのは、銀殿が白狐殿に魔力供給装置の話をしたためだとか」

「ああ、そうだったな」

「その時に白狐殿が銀殿から聞いていたそうですよ。ホルスト様が、フソウ皇国、獣人の国、ドワーフ王国、エルフの国で活動する予定だと」

「それで、その銀が話した内容がアリスタ様に伝わり、お前の所まで命令が来たってことか」

「そういう事です」


 なるほど、それで合点がいった。

 銀から話を聞いた白狐がヴィクトリアのおばあさんに話をして、それが他にも伝わったということのようだった。


 そういう事なら後で銀にご褒美をやらなければと思った。

 今回銀のおかげでこうしてオルトロスが来てくれたわけだし。


 それにこれはオルトロスだけの話ではないと思う。


「なあ、オルトロス、お前に話が伝わっているということは、他の国の神獣にも話が伝わっているという事かな?」

「ええ、アリスタ様はマールス様以外の神々にも話していると思いますから、ホルスト殿が目的の国へ行けば、その国の神獣が来てくれると思いますよ」

「そうか。それはありがたい話だな」


 本当ありがたい話だった。

 その国に詳しい神獣が手を貸してくれるとあらばこれほど心強い話はない。


 白狐に話をしてくれた銀。銀から聞いた話をアリスタ様にしてくれた白狐。白狐から話を聞き、神獣を手配してくれたアリスタ様。その他の神々や神獣たちには本当に感謝の言葉しかあなかった。


「それで、オルトロス。お前もこうして俺たちの所へと来てくれたという訳か」

「はい。いつホルスト様が来るかと思って待機していたのですが、三日ほど前にこの国に来ているとわかり、それから不眠不休で駆けつけてきました」


 不眠不休ね。なるほど、だからさっきあれだけのお菓子をいっぺんに食べたのか。

 オルトロスの食欲が妙に良かった理由が分かった俺は、改めてオルトロスに感謝sるのだった。


「そうか。そんなに急いできてくれて、ありがとうな。そういう事情ならお前もまだ腹が減っているだろう。うちの嫁に夜食を作らせるから、それでも食べながら話そうか」

「ありがとうございます」


★★★


「はい、パンケーキが焼けましたよ」

「ああ、ありがとう」


 ヴィクトリアがパンケーキを作ってくれたので、それを食べながらオルトロスと話をした。


「それで、ホルスト様はもしかしてマウントオブスピリットの方へ向かわれているのですか?」

「ああ、そうだが、よく分かったな」

「ええ。白狐からの情報では、ホルスト様は地脈の力が強いが人がいなくて目立たない場所をお探しとか。それで、ホルスト殿の進行方向には、そういった場所はマウントオブスピリットしかないのでそう思ったまでです」


 オルトロスの話を聞いた俺はさすがは神獣だなと思った。

 白狐と出会った段階では獣人の国で具体的な場所は決まっていなかったはずなのに、白狐が持っていたわずかな情報だけでそれを推測するとはやるなと思うのだった。


「さて、ホルスト様の行き先を確かめさせてもらったところで、まずはマウントオブスピリットについてお話させてもらおうと思いますが、最初に聞きたいこととかありますか?」

「そうだな……」


 最初に聞きたいことか……ならば、あれだな。

 少し考えてあることを思いついた俺はオルトロスに聞いてみた。


「それじゃあ、オルトロス。マウントオブスピリットに棲むという精霊について教えてくれないか」

「マウントオブスピリットに棲む精霊ですか?それは、この世界の山を管理している山の精霊ですね」


 この世界を管理する山の精霊。


 どうやらそいつがマウントオブスピリットに棲んでいるようだった。

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