第641話~村人たちとの食事会 そして、オルトロスとの再会~
霊山マウントオブスピリットへ向かう途中、ハーピー軍団に襲われていた村人たちを助けた。
その助けた村人の一人である若い犬の獣人が、「お礼をしたいので是非村に立ち寄ってください」と、申し出てくれたので、その村人の村へ寄ることになった。
その村人について行くと、近くの村に着いた。
「こちらへどうぞ」
そして、村人たちにそう案内されたのは一軒の大きな家だった。
「少しお待ちください」
村人たちのリーダーらしき人物が、彼は俺たちに村へ寄ってくださいと申し出た犬の獣人だ、俺達にそう言い残すと建物の中へと入って行く。
しばらく待っていると、彼は一人の男性の犬の獣人を連れて出てきた。
その男性は俺たちにこうあいさつをして来た。
「どうも、この村の村長です。何でも息子一行が魔物に襲われている所を助けていただいたとか。大したおもてなしはできませんが、どうか我が家でくつろいでください」
どうやら俺たちが助けたのは村長の息子一行だったようだった。
★★★
息子一行を助けたということで、村長が俺たちを大歓迎してくれた。
「ささ。今皆さんのために食事の支度をしておりますので、こちらの広間でお待ちください」
そうやって広間に俺たちを案内すると、とりあえずお茶を出してもてなしてくれた。
「あら、このお茶美味しいですね」
「はい、こちらのお茶は村長さんの親戚の茶葉問屋さんが自分の農園で栽培している茶葉なんです。とてもおいしいと評判で王都でも人気の品なのですよ」
お茶を気に入ったらしいエリカが褒めると、俺たちに給仕をしてくれたメイドさんがそう教えてくれたので、かなり良いお茶を提供してくれているのだと思う。
それだけでも、村長さんが俺たちを思い切りもてなしてくれているのがよく分かった。
そうしてお茶を飲んでいるうちに料理が出来上がって来たらしく。
「うわー。おいしそうな料理がテーブルにどんどん並べられていきます」
と、ヴィクトリアが言う通りに料理が次々と『広間に置かれたテーブルの上に並べられていく。
そして、料理が一通り並べられたところで、村長さんが。
「さあ、皆様。料理が出来上がりましたので、こちらのテーブルにお座りください」
そうやって、俺たちをテーブルへと案内してくれ、食事会が始まったのだった。
★★★
食事会の食事は豪華なものだった。
この地方の郷土料理中心のメニューで、この村の特産品である肉や野菜、チーズが多く使われていた。
「さあ、遠慮なく召し上がってください」
村長さんがそう言ってくれたので。
「ありがとうございます。いただきます」
と、挨拶をして食べることにする。
それで肝心の料理だが……これがとてもおいしかった。
「マーガレット。このお肉、柔らかくておいしいね」
「そうだね。レイラ」
「ほほほ、お嬢さん方、うちの村の肉を気に入りましたかな?うちの家畜は小さいうちからとても上質な草を食べさせているのです。だから、おいしいのです」
「そうなんですね」
と、村長さんの説明を聞いて妹たちが上質の肉料理を喜んだり。
「あら。このサラダに使っているお野菜。とても味が濃くて甘みがありますね」
「そうでしょう。うちの村の野菜は肥料と土にこだわって作っていますからね。だから、王都でも美味しい野菜として評判なのです」
「それは素晴らしいですね」
と、これも村長さんの説明を聞いた嫁たちが野菜の味の良さに驚いていた。
そんな豪華な材料を使った料理が並ぶ中、ヴィクトリアが非常に喜んだ料理があった。
それは……。
「このハチミツとチーズを使ったフレンチトースト。一度食べてみたかったんですよね。いただきます!モグモグ……うん。最高です!」
それはハチミツとチーズを使ったフレンチトーストだった。
このフレンチトーストはどうやら食べたかった料理らしく、ヴィクトリアは非常に満足そうな顔をしていた。
というか、一度食べたかった?
初めて見る料理なのに、こいつはどこでこの料理のことを知っているのだろう。
そう思い聞いてみると。
「実は、この料理、この地方の観光ガイドに載っていたんですよね。とても甘くておいしいって。だから是非食べたいとは思っていたんです。ただ食べられる場所が限られているらしく、今回のような忙しい旅では食べに行く暇がないかと思い、諦めていたんですけど、こうして食べることができたので、大満足です」
とのことだった。
ふ~ん、観光ガイドに載るくらいにはこの料理は美味しいのか。
そう思った俺も一口食べてみると。
「おお。これはとても甘くてうまいな」
と、確かに大満足な味だった。
そんな俺たちの反応を見た他のメンバーたちも次々とこのフレンチトーストに手を出していき。
「うん。これはおいしいね」
「これはクセになりそうな味ですね。是非お土産に買って帰って、他の人にも食べさせたいですね」
と、皆とてもおいしそうに食べていたのだった。
こんな感じで、俺たちは楽しい食事会を送れたのだった。
★★★
さて、食事会の後は村長さんの家で一泊させてもらうことになった。
食事会が終わった頃には外は大分暗くなっていたし、何より村長さんが。
「どうぞ泊って行ってください」
と、勧めて来るので泊って行くことにした。
妹たちとは部屋を分けてもらって、俺たちは一つの大き部屋で寝ることになった。
それで、夜も遅くなり子供たちを先に寝かせた後、寝る前の一時を嫁たちと過ごしていた。
「旦那様。今日の魔物退治お疲れさまでした。ハーピーキングを切り刻んだ時の旦那様。カッコよかったですよ」
「本当、惚れ直しちゃいそうだったよ」
「そ、そうか。そんなに褒められると、何だか照れくさいな」
と、今日の戦いっぷりを嫁たちに褒められたり。
「ホルストさん。お茶をどうぞ」
「お菓子もありますよ」
「ありがとう」
と、お茶を飲んだりしていた。
そうやって、のんびりとしていると、突然部屋の窓をコンコンと叩く音がした。
何事だ!魔物か!
そう思った俺が窓の外の気配を探ると、魔物のような悪意のある気配は感じなかった。
それどころか以前感じたことがあるような懐かしい気配を感じた。
一体何だ?
そう思った俺が、様子を窺っていると、窓の外からこんな声が聞こえてきた。
「ホルスト様。お久しぶりです。この国を守る神獣のオルトロスです。マールス様のご命令でここへ来ました。中へ入れてくれませんか?」
どうやら獣人の国を守る神獣であるオルトロスがここへ訪ねてきたようだった。




