第640話~魔物に襲われている村人たちを助けたら……~
霊山マウントオブスピリットへ向かう道中、村人が魔物に襲われているのを発見した。
罪のない村人が魔物に襲われているのを見過ごすわけにはいかない。
すぐさま救出にかかることにする。
一報を聞き、武器を取り馬車の外へと出た俺は仲間に指示を出す。
「リネット、ネイア、ヴィクトリアは俺について来い!一緒に魔物を倒すぞ!」
「はい!」
「エリカは残りの人数を指揮して馬車を守れ。ないとは思うが、魔物たちが馬車を襲ってくる可能性もあるからな」
「了解です。お任せください、旦那様」
「それじゃあ、行くぞ!」
指示を終えた俺は、リネットたちを引き連れ、村人が襲われている現場へと急行した。
★★★
「あれはハーピーか。それにあっちの頭の風きり羽が派手な奴。あれはハーピーーキングに間違いないな。敵はハーピーキングに率いられたハーピー軍団という訳か」
現場に急行してみると村人たちを襲っていたのはハーピー軍団だった。
現場に向かいながら様子を窺うと、大体十人くらいの村人たちがに十五匹くらいのハーピー軍団に襲われている感じだった。
形勢は圧倒的に村人が不利な感じだ。
まあ、村人の方が人数が少ない上に敵は空から襲い掛かって来るからな。
村人に勝ち目はなかった。
その状況を見て、急がなければと、足を速めるが一つ気になる点があった。
この前ギルドでもらった霊山に関する資料によると、獣人の国ではハーピーは霊山の近くに生息していてここら辺にはいないはずなのだ。
それがこの辺りまで出張って来て村人を襲っている。
この前のルッフの件と言いやはり霊山の周辺で何かが怒っているのは間違いなさそうだった。
おっと、今はそれどころではなかったな。
さっさと村人を助けるとしよう。
★★★
「『精霊召喚 火の精霊』。『精霊召喚 風の精霊』。さあ、火の精霊と風の精霊よ。協力してハーピーたちを攻撃するのです」
ハーピー軍団に大分接近したところで、ヴィクトリアが先制の攻撃を仕掛ける。
炎の精霊と風の精霊の協力攻撃で炎の風が吹き乱れ、ハーピーに襲い掛かる。
「ピギャー」
二体の精霊の連携攻撃でたちまち半分近くのハーピーが火だるまになり、息絶える。
そのことで俺たちが迫って来たことに気がついたのだろう。
「キシャー」
「ピピー」
ハーピーキングの指揮の下、ハーピー軍団が村人を襲うのを止め、俺たちの方へと向かって来た。
敵の方からこちらへ向かって攻撃してくる。
俺達にとっては願ってもない状況だった。
「俺がボスのハーピーキングを始末するからリネットとネイアの二人で残りのハピーを始末しろ。ヴィクトリアは二人を支援しろ」
「了解です」
こうして役割分担を決めた俺たちは、ハーピー軍団との戦いに臨んだ。
★★★
「風の精霊は風の魔法でハーピーの邪魔をするのです。火の精霊は逃げようとするハピーがいたら焼いてしまいなさい」
ヴィクトリアが精霊たちに指示を出すと、精霊たちがその指示に従って行動を始める。
「……」
風の精霊が風の魔法を使って気流を乱しハーピーたちが空を飛ぶのを妨害する。
ハーピーは空を飛ぶことによる機動力を生かした攻撃を得意とする魔物なのでこれだけで戦力半減だ。
そこにリネットとネイアが攻撃を仕掛ける。
「『真空断』」
「『武神昇天流 気弾』」
そうやって遠距離攻撃を行い、動きが鈍くなったハーピーを次々と撃墜して行く。
あまりにもこちらの攻撃が激しいので逃げだそうとするハーピーもいるが。
「……」
「ピギャー」
そういった奴らは火の精霊の攻撃によりすぐさま消し炭に変えられていくのだった。
こうした嫁たちの活躍を目の当たりにした俺は、安心してハーピーキングと戦えるのだった。
★★★
嫁たちが雑魚ハーピーを退治している側では俺が群れのボスであるハーピーキングと戦っていた。
ハーピーキングは雑魚ハーピーよりも体が一回り大きく、頭に生えている風切り羽が雑魚ハーピーよりも一際派手なのが特徴だ。
動きも雑魚ハーピーよりも断然速く、風の魔法で攻撃してきたりもした。
かなりの強敵ではあるはずなのだが、俺から見れば雑魚ハーピーよりちょっと手強いくらいの存在でしかない。
俺がハーピーキングに接近すると、ハーピーキングの方から攻撃をして来た。
「ピキピキー」
その翼から羽を矢のように飛ばして攻撃してきた。
しかも、その羽攻撃は。
「おや?あいつの羽、『矢加速』の魔法を使って加速しているな。その上、羽攻撃に混ぜて『風刃』の魔法も使ってきている」
ハーピーキングの羽攻撃は『矢加速』の魔法で強化されていた上、羽攻撃に混ざって『風刃』の魔法まで仕込まれていた。
これは『風刃』の魔法に気づかず羽の迎撃に行っていたらひどい目に遭うという攻撃である。
上級の冒険者でも引っ掛かりそうな巧みな攻撃ではあるが、俺に通用しない。
「『天風』」
風の魔法で羽を叩き落し、魔法を相殺すると、敵の攻撃の隙を突いてハーピーキングへと接近していく。
「キシャー」
接近した俺に対してハーピーキングが接近戦を仕掛けて来る。
牙と爪を上手に使い、俺を切り裂こうとしてくる。
中々の攻撃ではあるが、俺にこの程度の攻撃が通用するはずがなく。
「『十字斬』」
逆に必殺技でハーピーキングをバラバラに切り刻んでやった。
俺に切り刻まれたハーピーキングは。
「ピー」
という断末魔の悲鳴をあげながら地面へと落ちて行った。
こうして俺達にはハーピー軍団をせん滅したのだった。
★★★
ハーピー軍団を退治した俺たちは、村人たちの治療を行った。
幸いに命を落とした村人はいなかったので。
「『範囲上級治癒』」
ヴィクトリアの治癒魔法で簡単に治療することができた。
これで魔物も倒したことだし、村人を助けることもできた。
やることはやったのでそろそろ立ち去ろうかと思った時、村人の一人である若い犬の獣人がこう声を掛けてきた。
「助けていただきありがとうございます。是非お礼がしたので、村に立ちに寄って行ってください」
どうやら助けた村人たちが俺たちにお礼をしたいようだった。
それを聞いた俺は迷った。
なるべく早く霊山に着きたいけれど、村人たちの好意を無碍にするのも悪いしな。
そう思って悩んだのだが。
「どうか。寄って行ってください。是非お礼をさせてください」
そう何度も申し出てきたので、ここまで言ってくれているのに断るのは逆に失礼だと思い。
「わかりました。そこまでおっしゃっていただけるのであれば、ご厚意に甘えさせてもらいます」
と、結局村に寄らせてもらうことになったのだった。




