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第639話~霊山マウントオブスピリットへの旅 のんびりと旅ができるかと思っていたが、世の中そこまで甘くないようだ~

 買い出しをした日の翌朝。


「お世話になりました」

「ええ、お気をつけて行ってらっしゃいませ」


 コッセルさんをはじめブレイブの町のヒッグス家の商館の人たちにそう別れの挨拶をしてから商館を離れた。


 目指すは霊山マウントオブスピリットである。

 とりあえずは霊山の入口にあるという川にかかる橋まで向かおうと思う。


★★★


 目的地である橋の近くまではのんびりと旅をする予定だった。

 というのも。


「ホルストさん。橋の近くまではこの国の主要産業である牧畜業が盛んみたいなので、生産した商品を輸送するための街道が整備されているらしいです。だからここは盗賊や魔物も少なく気楽に進めるらしですよ」


 と、ギルドで地図を買うついでに、ネイアがそういう情報をギルドで仕入れてきたらしいので、厳しい山へ入る前くらいはのんびりとしようということになったのだった。

 だから馬車の中では嫁さんや妹たちがのんびりと話している声が聞こえてきた。


「田舎の秋の光景は情緒があって良いですね」

「そうだね。もう広葉樹がすっかり紅く色づいちゃってきれいだよね」


 といった感じで、すっかり秋めいてしまった田舎の村の風景を楽しんだり。


「あら、またワタクシの勝ちですね。それではゲームに買ったので、妹ちゃん、このクッキーはワタクシがいただきますよ」

「そんなあ。ヴィクトリアお姉さんずるいです。これで三連勝じゃないですか。私にもクッキーを食べさせてくださいよ」

「レイラさん、諦めなさい。勝負に負けたあなたが悪いのですよ。こうなったらヴィクトリアさんは容赦なく食べちゃいますからね」

「そんなあ」

「いいではないですか。最低限割り当てられた分のお菓子は食べているんですから。それで我慢しなさい」

「それにしてもレイラちゃんは勝負ごとに弱いなあ。今まで全敗だね」


 と、嫁や妹たちとのお菓子を賭けた真剣勝負が繰り広げられたりしていた。


 というか、妹よ。

 お前って勝負事弱いんだな。

 うちの嫁たちは何かあるとすぐにお菓子を賭けてゲームをするからな。

 そんなに負けてばかりだと最低限以上のお菓子は食えないぞ。

 かわいそうだが、うちのルールだから仕方がない。

 せいぜい頑張れよ。


 嫁たちの会話からそんなことを思いながら、俺も交代時間が来たらのんびりしようと思うのだった。


★★★


 そんな風に割とのんびりし旅だったので、俺が御者台にいる時はホルスターと銀に馬の練習をさせていた。


「ホルスター、手綱を握る手に力が入り過ぎだぞ。久しぶりに手綱を握るからと言ってあまり緊張するな。緊張が馬に伝わってしまうからな」

「うん。気をつけるよ。パパ」

「ああ、頑張れよ」


 と、いった感じでホルスターに優しく指導してやったり。


「銀、ちょっと肩に力が入り過ぎているぞ。お茶でも飲んで落ち着きな」

「はい。ホルスターちゃんも飲む?」

「うん」


 銀にお茶を飲ませて緊張をほぐしてやったりしている。


 それはそれとして、本当ホルスターと銀は仲が良いな。

 今も自分がお茶を飲む時にはこうしてホルスターにもお茶を飲ませてやっているし。

 我が子ながら羨ましい限りだ。

 まあ、俺としてはそうやって二人が仲が良い方が将来的に孫の顔が早く見られそうでうれしいけどな。


 さて二人の緊張もほぐれたところで、指導を再開するとしようか。

 とはいえ、二人に技術的に教えることはあまりない。


 二人に馬の扱いを教え始めてから大分経ち、すでに一通りのことは教えている。

 後は技術的な事よりもしっかりと馬と気持ちを合わせられるようになることが重要だ。

 だから今も力が入り過ぎて馬に緊張が伝わらないように注意したのだ。


 ここさえ上手くできるようになれば、一人でも馬に乗れるようになると思う。

 ただ子供だけで馬に乗らせるのは万が一があると危険なので、しばらく大人がついてやる必要はあると思うけどね。


 ということで、俺は二人が馬車を操るのを見守りながらこう言うのだった。


「お前たち。大分馬の扱いが上手くなったな。この分だと一人で馬に乗れるようになる日もそう遠くないだろう。だから、もう少ししたら、パパが見ていてやるから一人で馬に乗ってみるか?」

「「うん」」


 俺に近いうちに一人で馬に乗るように提案された二人は嬉しそうに笑った。

 自分たちも一人で馬に乗れそうなのが嬉しいのだと思う。


 その二人の笑顔を見ると、俺も二人の成長を感じられてうれしくなるのだった。


★★★


 そんな感じでのんびりと旅をしていたわけだが、道中トラブルが全くないという訳ではなかった。


 そのトラブルがあった時、俺はエリカにお茶をいれてもらいながら、馬車の中で子供たちとのんびりとババ抜きをしていた。


「旦那様、お茶をいれましたよ」

「ああ、ありがとう」

「ほら、パパの番だよ。カードを選んでよ」

「おう。……げっ」

「やった!パパがババを引いたね」

「ふふふ、次は銀の番ですね、ババを引かないようにしないと」


 と、言った感じで楽しくやっていた。


 そこへ馬車の御者台で馬車を御していたリネットとヴィクトリアが、警報を発してきた。


「ホルストさん。前方一キロ先に魔物です!」

「どうやらこの辺の村の村人が襲われているようだよ!」


 そんなことを大きな声で言っているのが聞こえてきた。

 その声を聴いた俺は、すぐさま権を握ると、皆に命令する。


「お前ら、魔物の登場だ!行くぞ!」


 そして、命令を発した俺は、そのまま馬車の外へと飛び出すのだった。

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