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第634話~謎の鳥の魔物討伐作戦 前編 謎の鳥の魔物の正体とは?~

 セントバーグの村の家畜を襲うという謎の巨大な鳥の魔物の討伐作戦が始まった。

 魔物は朝になるとやってくるという話だったので、とりあえずその時間まで待機する。


「どうぞ。こちらをお使いください」

「ありがとうございます」


 村長のレッドボアさんが牧場に隣接する物置小屋を貸してくれたので、そこで一夜を過ごすことにする。

 今物置小屋と言ったが、ここにはほとんど品物は置いておらず、広さも俺の家のリビングくらいはあり十分に広かったので、ここに敷物と毛布を敷いて、交代で見張りをしながら時間まで休むことにした。


 最初に見張りをしたのは俺だ。


「まあ、夜暗いうちに来るとは思えないが、念のため……」


 そう呟きつつ、物置小屋の窓から魔物がやってくるという北の空をテレスコープでじっと眺めている。


 俺が見張りをしている横では他のメンバーが夕食の準備をしている。

 とりあえず物置の床の土に穴を掘って焚火を起こし、その火で暖を取り、調理する。


「今日のメニューは野菜と鳥肉のスープと干し肉を炙ったのにしましょうか。私がスープに使うお湯を沸かすので、リネットさんは干し肉を炙ってください」

「了解だよ」

「妹さんたちは材料を切ってください」

「は~い」


 今日はエリカがいないので、ネイアの指示でリネットと妹たちが料理を始める。


 ヴィクトリアも同行していないので、収納リングの食料は使えない。

 だから今使っている食材はギルドで依頼を受けた後、適当に買ってきた材料をつかっている。

 そんな適当な材料でも、エリカに鍛えられて料理の腕が上がっているリネットやネイアの手にかかるとたちまちおいしい料理へと変貌する。


「妹さんたち、切り終わった?うん。均等な感じできれいに切れているね。上出来だね。この分ならおいしいスープになると思いますよ」

「本当ですか?」

「本当ですよ。今からこれを入れて証明してあげますよ」


 と、ネイアは妹たちが切った具材を順番に入れて行き、ある程度煮たところで最終的な味付けをする。


「うん。これはおいしいですね。これで今日の食事が一品完成ですね」


 できたスープを味見したネイアの顔は嬉しそうだったので、おいしい料理ができたのだと容易に想像できた。


 ネイアたちがスープを作っている一方でリネットは順調に干し肉を炙っていた。


「……良し!良い感じで焼けて来たみたいだね。それでは、チーズの準備でもしようか」


 干し肉が焼けてきたころを見計らって、リネットがチーズの塊を取り出す。


「これをこうして、っと」


 そして、チーズを炙ってトロトロに溶かすと焼けたての干し肉にかけて行く。


「じゃーん!干し肉のチーズかけができたよ!」」


 と言った感じで、リネットもおいしそうな料理を完成させたのだった。


 出来上がった料理を早速食べてみると。


「うん。うまいじゃないか。スープはコクが出ていておいしいし、チーズをかけた干し肉甘くておいしいよ」


 と、俺が思わずうなるほどおいしかった。

 俺の高評価にみんなも満足したみたいで。


「本当、ホルストさんに褒めてもらえると嬉しいですね」

「そんなに気にいったんなら、またアタシが作ってあげるよ」

「へへん。どうお兄ちゃん。この鳥肉私が切ったんだからね。良く味わって食べてよね」


 と、言ってはしゃいでいた。


 というか、妹よ。お前だけ妙に偉そうだな。

 お前、調子に乗るといつも痛い目に遭うんだから、ほどほどにしておけよ。


 俺は妹の発言を聞いてそう思ったのだが、俺と同じことを妹の仲間の子たちも思ったらしく。


「「「こら!レイラ!調子に乗らないの!」」」


 と、注意されていた。

 仲間に注意された妹の奴はちょっとだけへこんでいた。

 そんな妹を見るとかわいそうな気もするが、こうしておかないと、こいつ不始末をして他人に迷惑をかけるのでこれで良いとは思う。


 こんな感じで、賑やかにご飯を食べながら、朝の決戦までの時間を過ごす俺たちなのだった。


★★★


 そうこうしているうちに朝になり太陽が昇って来た。

 まぶしい太陽の光が物置小屋の中に差し込んできて目が覚める。

 そのまま起き上がった俺は、見張りをしていたフレデリカに声を掛ける。


「フレデリカ、交代の時間だ。俺と変わろうか」

「はい、レイラのお兄さん」

「それと、そろそろ魔物たちが来る頃だから他のメンバーも起こして戦闘の準備をしてくれ」

「わかりました」


 俺の指示を受けたフレデリカは他のメンバーの所へ行くと、順番に声を掛けて起こしていく。

 起きたメンバーたちは、まだ眠いのか目をこすりつつ起き上がると。


「おはようございます」


 そう挨拶をしながら、ゆっくりと武装を調え、朝食を食べ準備する。


「ホルスト君。パンだよ」

「ああ、ありがとう」


 俺も朝食のパンを受け取ると、それを食べながら見張りを続ける。

 しばらくして、パンを食べ終わった頃。


「おっ!北の空に三つほど何かいるのが見えるぞ」


 北の空に三つほど正体不明の何かが飛んでいるのが見えた。

 どうやら敵さんのお出ましのようである。


★★★


「『神強化』。『神眼』発動」


 敵の姿が見えたので『神眼』を使ってじっくりと観察することにする。


「聞いていた通りでかい鳥だな」


 『神眼』で見ると、敵は村長から聞いていた通りかなりの大きさだった。

 目算ではあるが十メートルくらいはあると思う。


 とても鋭そうなクチバシと爪を持っているのが見える。

 この爪とクチバシなら家畜を仕留めることくらい容易に思える。


「『世界の知識』」


 俺はこの魔物のことをもっとよく知るために魔法で検索してみた。

 すると。


『ルッフ』

 別名ロック鳥とも呼ばれる巨大な鳥の魔物。

 見かけによらずとても動きが素早く、上空からの急襲の戦法を得意とする。

 その鋭い爪とクチバシで獲物を一撃で仕留める力を持つ。

 マウントオブスピリットと呼ばれる霊山に生息する。

 なお、その羽毛は保温性が高く衣服や布団の素材として重宝されるので、高値で売れる。


 ……以上が検索結果だった。


 どうやら敵はルッフという名前の魔物らしい。

 かなりの強敵のようだ。


 というか、こいつらが棲むマウントオブスピリットって俺たちが行こうとしている霊山じゃないか。

 結構遠い場所なのに、わざわざこんな場所まで獲物を狩りに来るとはどういうことなのだろうか?

 もしかして、俺たちの想像通り神聖同盟の奴らが霊山で何かしていて、そのせいで魔物たちの行動にも変化が出ているのか?


 今知ったルッフの情報を見て俺はそんなことを思ったりしたが、今は仕事中だ。

 そういう詮索は後にすることにしよう。


 ということで。


「お前たち、敵が来たぞ。行くぞ!」

「おおおーーーー」


 俺は仲間たちに指示を出すと、仕事をこなすべく物置小屋を出るのだった。

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