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第633話~リングストンさんの依頼 平和な村を襲う魔物を討伐せよ!~

 リングストンさんの依頼を受けた俺たちはブレイブの町から半日ほど離れたセントバーグという村へと移動した。

 久しぶりに馬車に揺られての移動だった。


「『静かなる谷』でのボートの旅も良かったけど、馬車での移動も情緒があっていいよね」


 パトリックの手綱をひく俺の傍らで、俺の補助の役を担ってくれているリネットがのんびりとした口調でそんなことを言っている。


 この前まで船でジャングルを旅してて、その前は『ヒノヤマヌー』に乗っての旅だったからな。

 それらの移動手段も別に悪くはなかったが、田舎道を馬車で移動するのに比べたら確かに情緒うんぬんという点では劣ると思う。

 それに。


「ねえ、ホルスト君。ちょっと寄りかかってもいいかな」


 そう言いながら、リネットが俺に寄りかかって来た。

 リネットは俺の左腕に自分の腕を絡ませると、そのまま頭と体を押し付けてきた。


 他の人が見るといかにもラブラブカップルと言った感じの雰囲気だ。

 もし通行人人でも見られたら恥ずかしいが、幸いなことに田舎道なので人は少ないし、何よりリネットの温もりが感じられてよかった。

 こういう嫁たちとの大胆なことができるのも馬車の旅の醍醐味だ。


 ということで、俺はわずかな間だが馬車での旅を楽しめたのだった。


★★★


 そんな感じで馬車の旅を続けているうちに目的のセントバーグの村へ着いた。

 村の入口にいた村人に。


「すみません。冒険者ギルドから依頼を受けて来た者ですが、村長さんの家はどちらでしょうか?」


 と、村長の家の場所を聞いたところ。


「ああ、村長の家ですか。村長の家なら向こうの小川の横にある大きなお屋敷ですよ」

「ありがとうございます」


 そうやって村長の家の場所を聞くことができたので、そちらの方へ行く。


「こんにちは」

「はい、どちらさまでしょうか?」

「あのう。自分たちは冒険者ギルドの依頼を受けてきたのですが、村長さんはいらっしゃいますか?」

「まあ、冒険者ギルドの方ですか。ようこそ来てくれました。すぐに村長がお会いになると思いますので、応接室でお待ちください。どうぞ」


 村長の家に着き、出てきたお手伝いさんらしき人に事情を話すと、すぐに客間に案内してくれる事になったので、俺たちはそのまま家の中へと入って行った。


★★★


「ようこそ我がセントバーグの村にいらっしゃいました。私が村長のレッドボアと申します」

「初めまして。ホルストと申します。レッドボアさんのことはリングストンさんから聞いています。何でもレッドブルさんはリングストンさんのイトコだそうですね。レッドブルさんもリングストンさんに似て男前ですね」

「ははは。それはありがとうございます。ささ、どうぞお座りください。お茶でも飲みながら打ち合わせをしましょう」


 応接室で待っていると、村長であるレッドボアさんが入って来て、そうやって軽く挨拶をしてから打ち合わせを始めることにする。


 なお、レッドブルさんはイノシシの獣人で、今述べた通りギルドマスターのリングストンさんのイトコなのだそうだ。

 リングストンさんが駆け出しの冒険者だった頃、援助してもらったことがあるらしい。


 そして、その恩人であるレッドボアさんが今非常に困難な状況に陥っている。

 だからリングストンさんとしてはレッドボアさんが困っているというのなら是非解決してあげたいと思い、こうして俺たちに依頼を申し込んできたという訳なのであった。


 さて、事情の説明はこのくらいにして、そろそろ打ち合わせを始めるとしようか。


★★★


「それで、レッドボアさん。今、この村では次々に魔物に家畜が襲われ、食われるという被害が出ているとか」

「はい。その通りなのです」


 打ち合わせはそんな感じで始まった。

 リングストンさんの依頼はレッドボアさんの村で家畜が魔物に襲われるので何とかしてほしいというものだった。


 一見そんなに難しくなさそうな依頼ではあるが、この依頼はギルドでは難しい依頼に分類されていた。

 というのも。


「で、その魔物は巨大な鳥の魔物で、Aランクの冒険者パーティーが一度依頼を受けたけれど、失敗してしまった。それで間違いないですか?」

「はい。一週間ほど前に来られた方々は失敗して、逆に大怪我を負ってしまいした。前の方たちが失敗してしまったので、魔物は今も現れ続け、少しずつ家畜が襲われ、食われてしまうという状況が続いています」


 と、Aランク冒険者パーティーが失敗したような難しい依頼なのだった。

 Aランクパーティーが失敗してしまったのでリングストンさんは打つ手がなく困り果てていた所に俺達がやって来たので、こうして俺たちに依頼が回って来たという訳なのだった。

 もちろん獣人の国にSランクパーティーがいないわけではないが、生憎と彼らは他の仕事に出かけていていないらしいので、この依頼を解決できるとしたら俺達しかいないのだった。


 ということで、依頼内容の確認も終わったところで具体的な被害の状況について聞くことにする。


「なるほど大体の現状はわかりました。では、今度はその鳥の魔物がいつ襲って来るかとか、そういう話をしていただけますか?」

「そうですね」


 俺の質問に対してレッドボアさんはそう一言発した後、少し考えてから状況を話し始めた。


「連中は早朝、太陽が昇り始めてから一時間ほど経った頃にいつもやってきます」

「太陽が昇り始めてから一時間後?」

「はい。連中は魔物とはいえ鳥なので夜目がきかないのだと思います。だから明るくなって獲物が見えるようになってからやってくるのだと思います」

「なるほど。大体やってくる時間はわかりました。それで、魔物たちはどのような感じで襲ってくるのですか」

「魔物たちはいつも三匹の群れで北の方からやってきます。そして村に着くと、村の上空を周回して様子を探った後、上空から一気に家畜に襲い掛かってきて、その鋭い爪で一気に仕留めに来ます。そして、獲物の息の根が止まったのを確認したら、そのまま獲物をもって上空に飛び立ち、どこか安全な場所まで持って帰って食べているみたいなのです」

「上空から地上にいる家畜を急襲してくるのですか。一応聞いておきますが、家畜を小屋とかに入れて魔物から守るとかいう手段はとれないのですか」

「そんなことをしても無駄です。魔物たちは家畜小屋に家畜を入れておくと、そちらを襲ってくるのです。小屋の屋根をぶち破り、中の家畜を襲うのです。そして、いつものように家畜の息の根を止めて持ち去るのです。ですから、家畜を外に出しておく方が小屋を壊されないだけまだましなのです」


 村長さんの話を聞いた俺はなるほどと思った。


 要は毎朝早朝に三匹の巨大な鳥の魔物がやって来て、家畜を襲って食ってしまうと。

 そして、小屋に家畜を入れておく程度の対策は無駄で、余計な被害が出るだけだと。

 そういうことのようだった。


 村の状況を理解した俺は村長さんにこう言うのだった。


「村が置かれている状況は大体理解しました。すぐにでも対応しますので、安心して魔物を始末するまでお待ちください」

「では、お願いします」


 それだけ言うと、俺たちは村長さんの家を出てすぐさま魔物の対策に乗り出すのだった。

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