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第631話~偽薬屋よ!お前も今日から賞金首だ! そして、妹のおねだり~

 翌日、俺は午前中から外出した。

 とりあえずの行き先は冒険者ギルドだ。


「こんにちは。ダンパさんはいらっしゃいますか?」

「あら、ホルストさん。こんにちは。ギルドマスターに面会ですか?連絡するので少しお待ちください」


 そうやって受付でギルドマスターのダンパさんに取り次いでもらって面会する。


「久しぶりだね。ホルスト殿。本日はどのようなご用件かな?」

「実は少し相談したいことがあって来ました」


 そう言いながら妹が使っていたという育毛剤が入っていたビンを見せた。


 実はこのビン、今朝早朝に妹がうちに届けてきて、ネイアが中身を鑑定済みだ。

 結果はもちろん……。


「実はこのビン。この町の薬局で売られていた育毛剤なんですが、うちのネイアが鑑定したところ真っ赤な偽物だったのです」

「偽物の育毛剤?」

「はい。どうやら『赤色カミツキガメの甲羅』入りのよく効く育毛剤として売られていたみたいなのですが、そんな物は入っておらず、これを使ったら逆に髪の毛が傷んでしまうという代物なのです。実は俺の妹も被害に遭ってしまって、それで相談に来たのです」

「ホルスト殿の妹さんも?」

「はい。それにこの薬雑誌で広告を打っていたらしく、妹以外にも被害が出ているかもしれません」

「雑誌で広告ねえ。……そういえば」


 ここまで話したところでダンパさんは何かを思い出したかのような顔をして、こんなことを言い出した。


「そういえばうちの受付の子に聞いたんだけど、最近冒険者の女の子たちでショートヘアにした子が何人かいるらしいね。何でかって聞いたら、変な育毛剤を使ったら髪が傷んでしまって切ったって言っていたな。もしかしてその子たちが使っていたのもホルスト殿の妹さんが使っていたのと同じ育毛剤なのかもしれないね」


 なんという事だ。ダンパさんの話によると妹以外にも騙された子がすでにいるらしかった。

 こうなると最早放置しておいてはダメだと思う。


 だから俺はダンパさんにこう提案した。


「そうですか。どうやら妹以外にも既に冒険者の子にも被害者がいるようですね。これは由々しき事態ですね。こうして冒険者にまで被害が出て放って置いては、冒険者ギルドの名折れというものです。どうですか?今から警備隊に一緒に被害を届けに行きませんか」

「そうだね。ホルスト殿の言う通りだ。冒険者にまで被害が出ているのに、冒険者の元締めである冒険者ギルドが何も手を打たないのは確かに良くないね。ホルスト殿が一緒に来てくれるのなら心強い。よし!警備隊へ行こうか」


 ということで、俺とダンパさんの二人で警備隊に行くことになったのである。


★★★


 警備隊での事情聴取は順調に行った。

 警備隊に行く前にギルドの受付の子に話を聞いたところ、ちょうどギルドに被害遭った女の子が何人かいたのでその子たちを連れて行き、捜査官に詳しい事情を話してもらったので順調に行ったのだった。


 ちなみに、その子たち全員妹と同じ『薬満堂』とかいう薬屋で買った育毛剤を使ったらしく、おかげで妹と同じように髪の毛が傷んで全員妹と同じような耳出しショートの髪型になっていた。

 その子たち全員元々ロングヘアだったようで、それを失ってしまった恨みは相当なものだと思う。


 その恨みもあってか彼女たちの話は具体的で迫力があり、捜査官たちの事情聴取もはかどるのだった。


 それに加えこの町の顔の一人であるギルドマスターのダンパさんと警備隊たちの上司であるワイトさんの知り合いの俺がいるのだから捜査官たちもより真剣になるのだった。


 そんな感じで事情聴取が終わった後は、薬局の店主の似顔絵を描いて手配をしてもらった。

 手配には懸賞金がつけられた。


 懸賞金をつけたのは俺だ。

 身内から被害が出たこともあるが、こんな悪党を野放しにするのは俺の気持ち的にもできなかった。

 だから懸賞金をかけ、似顔絵をギルドや王国中に晒してもらって追い詰めてやるつもりだった。


 さて、偽薬屋。今日からお前も賞金首の仲間入りだ!覚悟しろよ!


 『この顔を見たら冒険者ギルドか警備隊にご連絡ください。有力な情報を提供してくれた方には金貨三枚差し上げます』


 そんな文言と共に偽薬屋の似顔絵が描かれた手配書を見て、俺は早く犯人が捕まることを願うのだった。


★★★


 そうやって昼過ぎまで偽薬屋の手配に時間を費やした後後家に帰ると、なぜか妹の奴が家に来ていた。

 何をしに来たのだろうと様子を窺っていると。


「ネイアお姉さん。昨日言っていたやつ、是非お願いします」


 そうやってネイアに何かをお願いしているみたいだった。


 妹の奴がお願い?あまりいい予感がしないんだが……。


 そう思い、気になったので続きを聞いてみると。


「昨日のやつ?ですか?」

「はい。ネイアお姉さん、昨日育毛剤作ってくれるとか言っていたじゃないですか。それ欲しいんで作ってくれないかと思い、お願いに来たんです」


 どうやら昨日食事会の時にネイアが「育毛剤を作ってあげる」とか言っていたみたいで、その件で来たようだった。

 ただネイアは多少記憶があいまいらしく。


「ああ、そういえば、そんなことも言っていましたね」


 とか、そんなことを言ったかもという感じで返事をするのだった。

 まあ、昨日は皆結構飲んでいたから、多少記憶があいまいでも仕方がないと思う。


 とはいえ約束は約束だ。


「それじゃあ、作ってあげますね」


 そう言いながらネイアは自分のマジックバックを出し、育毛剤を調合するための薬草を揃えようとした。

 しかし。


「あら?育毛剤に必要な薬草が足らないですね。これでは育毛剤は作れないですね」


 どうやら薬草が不足していて育毛剤を作ることができないようだった。

 それを聞いた妹の奴の顔がたちまち落胆したものになる。


「そんなあ~。最後の頼みの綱はネイアお姉さんだけだったのに~」


 そう言いながらとても悲しそうにしている。

 それを見てネイアも心が動いたのか、妹にこんなことを言い始めた。


「そんなに落ち込まないでください。実はその薬草って獣人の国で採れるものなんですよ。私たちはこれからその獣人の国へ度に行く予定なので、少し旅をすれば手に入ると思いますよ。もし妹さんが早く薬を欲しいんだったら私たちと一緒に来ませんか?」


 この提案に対して妹の奴は。


「もちろん行きます!」


 と、即答しやがった。


 あれ?この流れって妹も次の旅についてくるの?


 妹が一緒についてきそうなことに多少の不満があったが、妹がすがるような眼で俺を見てきたのと、ネイアや話を聞いていた嫁たちが、今回の件では髪の毛を失った妹の嫁たちは同情的なのだ、俺をじっと見てきたので、俺としてはこう言うしかなかったのだ。


「まあ、来たいんなら好きにしろよ」


 こうして妹も今回の旅に同行することになったのだった。

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