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第628話~セイランたちとのお別れの食事会 後編 思い出のプレゼント交換 そして、ノースフォートレスの町へ帰る~

 さて、そんな楽しい食事会にも終わりの時間が近づいてきた。


 食事会の最後は、ここでお世話になったお礼に俺たちが用意したプレゼントをあげて締めることにする。

 最初にプレゼントをあげたのはセイランの父親である族長とお母さん、それに村の司祭に対してだ。


 この三人にあげたのはこの村での序列的に最初にあげる必要があったからだ。

 俺的には意地悪された族長にはあまりあげる気にはなれなかったが、俺たちはいい大人だ。

 自分の感情を抑えてプレゼントした。


 それで何をあげたかというと。


「まあ、これは大きなルビーですね。こんな大きなのは初めて見ます。こんなものをいただけるなんて、嬉しいです」


 セイランのお母さんが非常に喜んでいるのを見て分かるようにルビーを使った宝飾品だった。

 これを選んだのは蛇人たちがルビーを非常に好むと聞いたからだ。


 というのも、蛇人たちが崇拝するヤマタノオロチの瞳の色は赤色で、それにちなんで蛇人たちは儀式の時に赤色のルビーを身に着ける風習があるとのことだった。

 だから儀式の時に身に着けられるような見栄えの良いルビーの装飾品をプレゼントしたのだった。


 実際、お母さん以外の二人もこれは嬉しかったらしく。


「「これは良い物をもらいましたな。次の祭りの時にはこれを身に着けて儀式を行いましょう」」


 と、二人とも次の儀式の時使う気満々のようで、非常に満足してくれたようだった。


 次にプレゼントをあげたのはセイランと村の戦士団の人たちだ。


「ホルスト。これは剣か?」

「ああ、そうだ。お世話になったお礼だ。お前と戦士団の人に是非もらってほしいと思って用意したんだ」


 そんな感じでセイランと村の戦士団の人には俺のコレクションの中から選りすぐりの剣をあげた。

 セイランにはアダマンタイト製の剣。戦士団の人にはミスリル製の剣をあげた。

 さらに言えば、セイランと戦士長の剣の柄と鞘には派手で立派な装飾がされてあるのをあげた。


 こうしてあげる剣のランクに差をつけたのは彼らの村での身分を考慮してのことだ。

 だって、この中で身分の一番高いセイランに戦士団の人と同じ物をあげるのはセイランに失礼だろ?

 同様に戦士長に部下の戦士と同じ物をあげるのも失礼である。

 だからセイランに一番良い物をあげ、戦士長に二番手の物を、残りの戦士たちには一番ランクの低い物をあげたのだ。


 本当は全員にアダマンタイトの剣をあげても良かったのだが、これも大人の事情というやつだ。仕方ない。


 それはともかくセイランたちはこのプレゼントを非常に喜んでくれ。


「ありがとう!一生大事にする!」


 と、子供のように何度も剣を撫でて、大はしゃぎするのだった。

 ここまで喜んでくれるとは思っていなかったので、俺としても非常に嬉しい限りだった。


 そうやって、大人たちのプレゼントが終わると、今度はホルスターと銀がセイランの弟たちにプレゼントをした。


「レップウ君にはこの馬のおもちゃをあげるよ」

「ゲッコウちゃんにはこのスゴロクをあげるね」


 そう言いながら、魔力で動く馬のおもちゃとどこかの遺跡で手に入れたスゴロクゲームを二人にあげていた。

 二つともホルスターや銀のお気に入りでここにいる時もセイランの弟たちとこれでよく遊んでいたらしかった。


「え?こんな大事なおもちゃ貰ってもいいの?」


 と、セイランの弟たちはおもちゃをもらったことに驚いていたが。


「うん、いいよ。たまにはこれで遊んで僕たちのことを思い出してよ」


 そうホルスターに返されると。


「うん、大事にするよ」

「ありがとう」


 と、喜んで受け取ってくれたのだった。


 こんな感じで俺たちのプレゼント贈呈は終わったのだった。


★★★


 プレゼント贈呈は終わったと思ったら。


「ホルスト。実は私たちからもプレゼントがあるんだ」


 と、セイランたちがプレゼントをくれると言い出した。


「いや、お前たちにはお世話になったんだから、プレゼントとかをもらう訳には……」

「そんなことはない。お前たちは私たちを救ってくれた。ここでお礼をしなければ私たちの立場がない。だからもらってくれ」

「わかった。そこまで言うのなら頂くよ」


 最初俺たちは断ろうとしたのだが、セイランたちが是非にというので、その気持ちを汲んでもらうことにした。

 それで何をもらったかというと。


「これはお面か?」

「そうだ。蛇族に伝わる『ヒスイの仮面』だ。この仮面は女神アリスタ様をかたどった物で、我らの先祖が蛇神様からいただいた物らしい。何でも一度だけ持ち主の身代わりとなってくれるという効果があるとのことだ」

「蛇神様からの頂き物?それは蛇人たちの宝ではないのか?そんな貴重な物をもらってもいいのか?」

「構わない。これは我らの先祖が『蛇神様の戦士』が現れたらその者に渡すようにと、蛇神様に託されたものなのだ。さらにはその蛇神様もアリスタ様にこれを託されたのだという。だから本来はお前たちが持っておくべきものだろう。遠慮なく持って行くがいい」

「そうか。要はアリスタ様からの預かり物という訳か。そういう事なら遠慮なくもらうことにしよう」


 どうやらセイランたちからの贈り物は蛇人たちがヴィクトリアのおばあさんから預かっている物らしかった。

 という事なら遠慮なくもらっておくことにする。


 といった感じでセイランたちからプレゼントをもらったのだが、この後子供たちの間でもプレゼントの贈呈があった。


「ホルスター君と銀ちゃんにはこの釣竿をあげるよ」

「え?この釣竿って、四人で釣りに行った時に使ったやつでしょ。お気に入りだって言っていたじゃない。もらってもいいの?」

「いいよ。兄ちゃんに作ってもらったとっておきの釣り竿だったけど、ホルスタアークンたちに使ってもらえたら嬉しいよ」

「でも、それだとレップウ君たち、釣りができなくなるんじゃないの?」

「また兄ちゃんに作ってもらうよ。だから、この釣竿を僕たちだと思って大切にしてよ」

「わかったよ。そういう事なら貰うよ、ありがとう」

「レップウちゃんにゲッコウちゃん、ありがとう」


 と、セイランの弟たちから大切な釣竿をもらったようだった。


 お互いに大切なものをプレゼントし合う。

 このことだけでも子供たちの間に固い友情が芽生えたのがよくわかる。

 本当に良いことだと思う。


 ホルスターに銀。その釣り竿、大事にするんだぞ。お前たちの友情の証。一生の宝物なのだからな。


 喜び合う子供たちの姿を見て、そんなことを思う俺なのであった。


★★★


 さて、そんな風に最後にお互いにプレゼントを贈り合って食事会は終了し、その日は早めに寝て、その翌日。


「セイラン、それに村の皆さん、お世話になりました」


 村の入口で村の主だった人たちに見送られながら別れの挨拶をしていた。


「皆さんにお世話になったこと、俺たちは忘れません。本当にありがとうございました」


 そんな風に挨拶をして、一礼をする。

 すると、セイランが俺に声を掛けてきた。


「私たちもお前たちに世話になったことは忘れないよ。もしよかったら、世の中が平和になったらまた来てくれよ」

「ああ、きっと行くよ」


 セイランのその言葉に対し、俺はセイランの手を固く握ると、そうやって再会することを約束するのだった。

 そうやって大人たちが別れの挨拶をする一方で子供たちも別れの挨拶をしていた。


「ホルスター君も銀ちゃんもまた遊びにおいでよ」

「うん、またパパに頼んで連れてきてもらうよ」

「本当?約束だよ」

「うん、約束するよ」


 といった感じで、こちらも再開の約束をしていたのだった。

 それを見た俺は子供たちのためにもまたここへ来ようと思うのであった。


 そうやって別れの挨拶を終えた後は。


「さようなら」

「お元気で」


 と、最後の挨拶を交わして村を出た。

 そして少し離れたところで。


「『空間操作』」


 転移魔法を使って一気にノースフォートレスの町へと帰ったのであった。

 魔法を使いながら俺はこう思った。


 これで神聖同盟の結界の一角が崩れた。次は予定通り獣人の国の霊山へ行くぞ!

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