第627話~セイランたちとのお別れの食事会 前編 ヴィクトリアが作った歌を歌う~
神聖同盟の施設の破壊に成功した数日後、セイランの村を離れて帰ることになった。
帰る間際、セイランの家族他何人かと食事会をすることになった。
食事はうちの嫁たちが用意した。
というのも。
「ここの皆さんにはお世話になったことだし、是非お礼がしたいのです」
そうやってお世話になった人たちにお礼として食事を作ってあげたいということだったので、嫁たちが作ったのだった。
そんな訳で、嫁たちが午前中から張り切っていた。
「ヴィクトリアさん。デザートは任せましたよ。おいしいケーキを作ってくださいね」
「は~い」
「ネイアさん。魚のムニエルとサラダは任せました」
「了解です」
「リネットさんは、焼きそばとたこ焼きをお願いします」
「任せて!」
「銀ちゃんは忙しそうな人を手伝ってあげてね」
「はい」
「さて、私はステーキとチキンスープと副菜を頑張らないとですね」
といった感じで、銀まで動員して頑張って作っていた。
その横で俺とホルスターは会場の準備だ。
「ホルスター。パパが肩車するから、その星の飾りを壁に貼り付けて行け」
「は~い」
といったように会場の飾りつけをしたり。
「パパはこっちからお皿を並べるから、お前は反対からならべなさい」
「うん」
といった風に、お皿を並べたりして準備を調えた。
こうして食事会の準備は着々と進んで行った。
★★★
夕方になり食事会の時間になった。
やって来たのはセイラン一家と村の司祭、それに村の戦士団の人たちだった。
場所はセイランの屋敷の広間を借りた。
ここならばこのくらいの人数をもてなすのに十分な広さがあるからだ。
食事会は俺の挨拶から始まった。
「皆様、本日は当方主催の食事会に来ていただきありがとうございます。皆様にはここにいる間お世話になりました。ささやかながら食事を用意しましたので、本日はお楽しみください」
そうやって挨拶をした後、俺が音頭を取り、カンパイする。
「それでは、カンパイ!」
「カンパ~イ!」
こうして食事会が始まった。
★★★
食事会ではとにかく食べ、とにかく飲んだ。
嫁達が作った料理や用意した酒は蛇人たちが飲み食いしたことがない物ばかりで、皆喜んで食べてくれた。
「ホルストよ。このパリッとした食感の料理は何だ?」
「これはソーセージだな。動物の腸に肉を詰めて作る料理だ。うちのエリカの実家の料理長の特製で、エリカの家に行った時にいつも貰うんだ」
「そうか。これはピリッと辛口で、酒にとても合っていてうまいな」
セイランはソーセージが気に入ったらしく、酒を飲みながらぼりぼり食べているし。
「ホルスター君、このたこ焼きっていう丸いやつ美味しいね」
「僕はこっちの焼きそばが気に入ったよ」
「でしょ。たこ焼きと焼きそば。ママたちがたまに作ってくれるんだけど、おいしいでしょ?レップウ君とゲッコウ君が気に入ってくれて僕も嬉しいよ」
ホルスターはセイランの弟たちと仲良く焼きそばとたこ焼きを食べていた。
なおレップウとゲッコウというのはセイランの弟たちの名前だ。
二人ともセイランに似て気立ての良い子たちで、ここにいる間ホルスターたちと遊んでくれていたようだ。
おかげですっかり仲良くなって、今もこうして一緒にご飯を食べているのだった。
「ほら、料理はたくさん用意しておりますから、たくさん食べてくださいね」
「ありがとうございます」
他の参加者たちもうちの嫁たちに料理や酒を勧められるままに楽しそうに飲み食いしていた。
これだけ食べてもらえば、食事会を主催した俺たちとしてもやった甲斐があるというものだった。
こんな感じで食事会は楽しく進んでいくのだった。
★★★
食事会の途中では余興もやった。
まずは俺たちの方からだ。
俺達の方は家族全員で歌を歌った。
ヴィクトリアが歌詞を作り、エリカが作曲したのをバイオリンで演奏し、ネイアが踊りを披露し、他の全員がそれに合わせて合唱した。
「ラララ~。偉大なる蛇人たちよ~。あなたたちこそ蛇神様の加護を受けし者~。その強大なりしその力にて邪悪を打ち破り~、世界に平和をもたらす端緒とした~。その功により、これからも蛇人たち繁栄あらんことを~」
といった感じの歌を披露した。
自分でもちょっと恥ずかしい歌詞を歌ったような気がするが、蛇人たちは気に入ってくれたようで。
「とても上手よ。素敵でしたよ~」
「さすがは蛇が身の戦士様。素晴らしい歌でしたぞ」
という風に褒めてくれた。
そうやってみんなが褒めてくれたので、頑張って練習した俺たちとしてはとても嬉しかった。
そんな俺たちの歌に対して、蛇人たちもお礼をしてくれた。
具体的に言うと、セイランと村の戦士団の人たちが剣舞を披露してくれた。
「はっ!」
「やあっ!」
「そりゃああ!」
と、繊細かつ大胆な動きの剣舞を披露してくれた。
聞く話によると、これは蛇人たちに伝わる伝統的な剣舞らしく、普段は蛇神様への感謝をささげる春祭りの時にしかやらない神聖なものらしかった。
そんな貴重なものを披露してくれるなんて。蛇人たちは俺たちを本当に歓迎してくれているんだな。
俺は秘伝の剣舞を披露してくれたことに感激しつつ、セイランたちの優雅な剣舞を楽しむのだった。




