第626話~次に行くべき場所は?~
宴の翌日。
「うげ~、昨日は飲み過ぎた」
昨日調子に乗って飲み過ぎた俺は、二日酔いに苦しんでいた。
頭の中を金づちでガンガン叩かれるような感じがずっと続いていて、横になって苦しんでいた。
とはいえ、別に苦しんでいること自体に後悔はない。
昨日は久しぶりに勝利の美酒をみんなと味わえた。
とても楽しかった。
だからそのせいで例え二日酔いになったとしても、勝利の快感を味わった代償だと考えれば何ともなかった。
ただ、今日はこの後、午後からこの村の司祭から『地脈のエネルギーが豊富で人がいない場所』の話を聞くことになっている。
それまでには何とか体調を回復させたい。
そこで。
「ネイア。前みたいに二日酔いの薬をくれ」
と、ネイアに頼むことにした。
「しょうがないですね」
そう言いつつもネイアは俺の頼みを聞いてくれて。
「ほら。これを飲んでください」
「ありがとう」
すぐさま薬を作って飲ませてくれた上。
「ホルストさんが良くなるまで膝枕してあげます」
そうやって膝枕までして、俺を介抱してくれたのだった。
おかげで晴れやかな気分になれた俺は、司祭との面会の時間までゆっくりできたのだった。
ちなみにこの様子は他の嫁たちも目撃していたらしく、この状況を羨ましく思った彼女たちが。
「膝枕してあげますね」
その後しばらく、夫婦の時間になると全員がそう言って膝枕をしてくれたのだが、それはまた別の話である。
★★★
午後になって約束の時間になった。
「ホルスト、それじゃあ行こうか」
「ああ、頼むよ」
セイランが迎えに来てくれたのでそのまま一緒に村の礼拝所へといった。
礼拝所には、すでにセイランに話を通してもらっていたので、村の司祭が待っていた。
「『蛇神様の戦士様』。ようこそいらっしゃってくださいました。ここ『静かなる谷』と同じような場所の情報が欲しいのですね。この年寄りが知っていることでよければお話ししましょう」
司祭は一言俺にそう言うと、話を始めた。
「それで司祭様はどのようなことをご存じなのですか?」
「私が知っているのは名高き霊山の話ですね」
「霊山?」
「はい。マウントオブスピリットという名の霊山です。蛇人たちに伝わる『精霊の宴』という話に出て来る霊山の名前です」
そこまで言うと、司祭は喉が渇いたのか、一口お茶を飲んだ。
そして、喉が潤ったことに満足したのか、続きを話し始めた。
「マウントオブスピリットは獣人の国の北の僻地にあるという山です。名前の通り強大な力を持つという精霊が住んでいるという伝説がある山です」
「強大な力を持つ精霊?」
「はい。いるそうですよ。かつては年に一度その精霊の周囲に各地の精霊たちが集まり宴を催していたとか。もちろんこの地の精霊もそれに参加していたということで、我々にも『精霊の宴』という形で伝承が残っているのです。もっとも、伝説だけで誰も姿を見た者はいないとか」
「そうなのか?」
「はい。それで、その山はここと同じく大地のエネルギが強いということを聞いたことがあります」
大地のエネルギー。多分地脈のエネルギーのことだと思う。
「さらにその周囲にはたくさんの高山が取り巻いており、普通の人間には近づくことさえ困難だとか」
「普通の人間は滅多に来ないのか。それに地脈のエネルギーも存在している……と。確かに俺たちの出した条件にピッタリの場所だな」
これだけ条件にあった場所なら十分に探してみる価値はあるだろう。
そう考えた俺は。
「司祭様。本日は貴重な話を聞かせていただきありがとうございます」
「いえ、いえ。『蛇神様の戦士様』のお役に立てて何よりです」
最後にそうお礼を言うと、礼拝所を後にするのだった。
★★★
その晩、嫁たちと会議をした。
ホルスターと銀を先に寝かせて、寝間着姿の嫁さんたちと布団の上で会議をした。
布団の上でと言ったが、嫁さんたちはちゃっかり飲み物やお菓子を用意していつでもくつろげるような準備をしていた。
多分、会議が終わったら飲み物や食べ物を食べながら楽しくおしゃべりでもし出すんだろうなあ。
そう内心で予想しつつ会議を開始する。
「それで、昼間村の司祭様に聞いた話だと、獣人の国の北の方にマウントオブスピリットとかいう霊山があるそうなんだ」
俺はそうやって会議の口火を切ると、昼間村の司祭に聞いてきたことを話す。
俺の話を聞いた嫁さんたちがそれについて意見を言って行く。
「アタシは行ってみても良いと思うよ。他に手掛かりもないし」
「私もリネットさんに賛成です。そのマウントオブスピリットとかいう山。条件にピッタリですし」
「そういうことなら早速獣人の国の図書館に行きましょう。私がまた図書館に行って調べてきましょう」
「図書館へ行くのは良い考えですね。図書館といえば智の宝庫ですからね。きっと情報が手に入ると思います」
そんな感じで全員賛成のようなので、今度の目標は獣人の国にある霊山マウントオブスピリットに決まったのだった。
そうやって予想通り会議が早々に終わった後は、嫁たちがはしゃぎ始めた。
「旦那様の隣に座るのは交代制ですよ」
「はい」
そうやってエリカが陣頭指揮を執り、嫁たちのうち一人が常に俺の側に座り、俺に酒を注いでくれたり、食べ物を食べさせてくれたりする傍らで、他のメンバーはゲームをして遊んでいた。
今回のゲームはブロック崩しなるゲームで、積み上げたブロックを順番に一本ずつ抜いて行き、積み上げたブロックを崩したやつが負けというゲームだった。
「げっ。やっちゃいました」
「ああ、ヴィクトリアちゃんの負けだね」
「それじゃあ、リネットさんと私でクッキーはもらいますよ」
といったふうに楽しそうにやっていた。
実は俺もちょっとやりたかったりするが、嫁たちの一人が常に俺に甘えて来るので、そっちの相手が忙しくて参加できなかった。
というか、俺的には嫁とイチャイチャしていた方が楽しいので、これでよかったとは思う。
こうして夜はふけて行くのであった。




