第608話~セイランに神聖同盟について話す そして、セイランとの友情を育む~
「神聖同盟?そいつらは何者だ?」
そいつら、多分俺が追っている奴らだ。神聖同盟という連中だ。
その俺の言葉に対して、セイランが質問してきた。
折角の機会なので、説明することにする。
「神聖同盟は、な。俺が前に言っていた邪悪な存在の復活を企む組織なんだ。その為に世界中で様々なことをしている。邪悪なる存在の力を封印している遺跡を荒らしたり、強盗をしたり、人工の魔物を造ったりもしていた。それに、お前たちの崇める蛇神様を変な儀式で支配しようとしたりもしていたな」
「なんだと!連中は蛇神様にも手を出そうとしていたのか」
「ああ、していたな。まあ、俺たちが寸でのところで助け出したので、蛇神様も今は元気だぞ。で、それで蛇神様との交流ができたんで、伝説の湖の水とかももらえたんだけどな」
「そうだったのか。まあ、お前らはとても強いからな。それに伝説の湖の水も持っていたからな。蛇神様の窮地を救ったというのは本当なのだろう。さすがはホルストだ」
ヤマタノオロチの話を聞いたセイランは当初連中に対して怒りを覚えたようだったが、俺が助けたと聞いたら機嫌が良さそうなにこやかな表情になり、最後は俺の事を褒めるのだった。
そんなセイランを見て、蛇人って本当にヤマタノオロチのことを崇拝しているんだなと感心するのだった。
★★★
さて、ヤマタノオロチの話はこのくらいにしておいて、話を続けようと思う。
「セイランに連中の悪事を話していて思い出したんだが、そういえば、神聖同盟の連中、ここでも蛇人たを攫っているという話だったな?」
「ああ、そうだ。というか、『ここでも』ってなんだ?」
「実は連中、ここで以外でも人攫いをしていたんだよ」
「なに?それは本当か?」
「ああ、本当だ。連中はここから遥か西にある獣人の国でも、ここと同じように人攫いをしていたぞ」
「なに?その神聖同盟という連中は他でもそのような悪行を働いていたのか?」
「ああ、そうだ。まあ、こちらでは捕まえた蛇人たちを強制労働させているのに対して、あっちでは売却目的で人々を捕まえていたけどな」
「なんと!たかが金が目的で人攫いをしていたのか。とんでもない連中だな」
ここ以外でも神聖同盟が人攫いをしていたと聞いて、セイランが呆れると同時に怒りの表情を浮かべる。
セイランは正義感が強い男だ。
金のために神聖同盟がここ以外でも人攫いなどという非人道的な行為をしていると聞き、許せないと思って怒ったのだと思う。
そして、そんな連中の末路がどうなったのかが気になるのか、俺にこう聞いてきた。
「それで、ホルストよ。その人攫いをしていた連中はどうなったのだ。お前たちがそんな連中を許しておくとは思えないのだが」
「もちろん、制裁を加えてやったよ。具体的に言うと、獣人の国の軍と組んで人攫い団のアジトを襲撃してやって、人攫い団を壊滅させてやった。今頃全員裁判が終わって、何らかの形で罪を償っている所さ」
「そうか。まあ、蛇神様に手を出したり、強盗したり人攫いをしていたりと、相当にあくどい奴らだから当然の報いだな」
俺に説明を聞いて溜飲が下がったのか、セイランはうんうんと頷きながら嬉しそうな顔をしていた。
ホルスト、よくやった!
そんなことを言いたげな嬉しそうな顔だった。
そんなセイランを見た俺はこんな提案をしてみた。
「なあ、セイラン。今回の蛇人誘拐の事件。俺たちも解決に協力させてもらえないか」
★★★
俺は神聖同盟に連中に捕まっている蛇人たちを救出すべく協力を申し出た。
それに対して、セイランはこう答えるのだった。
「協力してくれるのか?もちろん、私は大歓迎だ。お前たちのような強き者が協力してくれるというのなら心強い。だが、良いのか?相手は相当な手練れだ。お前たちでも苦戦するかもしれないぞ?」
「別にどうってことないさ。俺たちはあいつらの相手には慣れている。今回も今までと同じように壊滅させることは可能さ。大体俺たちはあいつらの装置を破壊するためにここへ来たんだ。だから、俺たちが神聖同盟を討伐するのは当り前のことさ。それに、何より……」
「何より?」
「俺には友人やその一族の危機を放って置くことはできない。だから協力させてくれ」
「私のことを友人と呼んでくれるのか?お前たちと違う種族である蛇人の私のことを?」
「当然じゃないか。種族なんて関係ない。セイランは俺の大切な友達だよ」
それは俺にとっては当然の答えだった。
短い間であるがこの村への旅の間、俺はセイランと心を通わせて来た。
そんなセイランを友人と呼ぶ以外に何と呼べばいいか。俺には思いつかなかった。
「……そうか。友人と呼んでくれるのか。そして、友人の危機を放って置くことはできないと……。分かった。そういう事なら、よろしくお願いする」
「もちろんだ。ただし、一つお願いがある」
「なんだ?」
「俺たちは全力で神聖同盟の連中と戦うつもりだが、相手の人数もかなり多いはずだ。だから俺達だけでは手が足りないだろう。蛇人たちにも協力してもらわないとならないが、その手配を頼めるか?」
俺達だけでも神聖同盟を倒すのは難しい話ではないが、敵の数が多い場合、俺たちの手をすり抜けて逃げられてしまう可能性もあった。だから、これは必要な措置だった。
その俺の頼みに対して、セイランはこう答えたのだった。
「当然だ。そもそも被害を受けているのは蛇人の同胞たちなのだ。彼らを助けるために私たちも全力でお前の手助けをすると約束する」
ということで、俺とセイランの話し合いはまとまり、協力して神聖同盟を倒すことになったのだった。
★★★
こんな感じで俺とセイランの間では協力し合うということが決まったのだが、この場で一人納得していない人物がいた。
「セイランよ。お前たちだけで何を勝手に決めておるのだ!族長のワシは人間との協力など認めんぞ!」
そう言って、セイランの父親である族長が反対してきたのだった。
まあ、族長は人間嫌いで俺たちのこともよく知らないからな。
反対してくるのはむしろ当然の反応だった。
そんな族長に対してセイランが説得を試みだした。
「父上。何をおっしゃるのですか。ホルストたちはとても強いし、とても信用できる人物だ。それに我らが崇める蛇神様に認められた人物である。ここは是非とも協力を得るべきだ」
「セイラン。お前こそ何を言っておるのだ?まあ、確かにこの人間たちは底なし沼の魔物をあっさりと倒してしまうくらいだから、強いのは間違いないのだろう。だが、だからといって信用できるとは限らないだろう」
「そんなことはない!ホルストたちは信頼できる人間だ!一緒に旅をした私が言うのだから間違いない!」
「しかし、そうは言ってもなあ」
ただ、説得は中々効果は無く、族長は俺たちを信用しようとしなかった。
その父親の態度に業を煮やしたセイランはとうとうこんな大胆な発言をするのだった。
「父上がそこまでホルストたちのことを信用できないと言うのなら、私が身をもって保証しよう」
「保証だと?」
「そうだ。もしホルストたちが蛇人たちに危害を加えるようなことをしたら、私が責任を取って自分の首を切って自害する!」
「お、お前、何と言うことを言うのだ」
息子が自分の命をかけて俺たちのことを保証すると言い出したのを見て、族長が動揺し始めた。
というか、俺たちも動揺した。
自分の命をかけるくらい俺たちのことを信用してくれていると知って、正直嬉しかった。
これは是が非でもセイランに協力し、蛇人たちを無事に救出して、その信頼に報いるべきだ。
そう思えた。
それはともかく、息子の発言を聞いて動揺した族長はしばらく固まった後、息子の覚悟が本物であることを悟って多少軟化したのか、こんなことを言い始めた。
「わかった。息子よ。お前がそこまで言うのなら、この人間たちは確かに信頼できる人間なのかもしれない。それは認めてやろう」
「そうですか。父上もようやく認めてくださいましたか。ありがとう……」
「しかし、だ!」
ようやく族長が俺たちのことを認めたことに対し、セイランがお礼を述べようとした時、族長が待ったかけてきた。
「我らは蛇人たちを取り戻すのにこの連中の力を借りるつもりは無いぞ!」
そうやって、あくまで俺達と協力する気っは無いと発言したのだった。
それに対してセイランが呆れたように言う。
「父上、いい加減にしてください。我らだけではダムの人間を倒すのは無理です。ここはホルストたちの協力を仰ぐべきです。何せ彼らは蛇神様に認められた者たち。彼らならきっと我らの助けになってくれるはずです」
「そうかな?相手は人数が多い。こいつらが加勢に加わったからと言って戦況が変わるはずがない。それにお前はこいつらが蛇神様に認められた人間だと言うが、そんな証拠は一切ないではないか。ただの人間と蛇人が協力するのなどありえぬ話だ」
「ほほう。つまり、父上の言い分ですと、ホルストたちが蛇神様に認められた人間であると認められれば協力すると?」
「まあ、本当にそいつらが蛇神様に認められたのなら、そいつらがここに来たのは蛇神様のお導きによるものだろう。ならば協力するのはやぶさかではないな」
どうやら族長。俺たちが蛇神に認められたと証明できれば協力する気はあるようだった。
ということで何をすればいいのか聞いてみた。
「それで、どうすれば族長さんは俺たちのことを認めてくれるので?」
「そうだな……」
どうすればいいのかという俺の質問に対して、族長は少し考えた後、こう言うのだった。
「そうだ。お前、うちの戦士団と戦って勝ってみろ。蛇神様に認められた者ならそのくらい余裕だろう」




