第607話~今、川の上流で何が起こっているのか? ……って、やっぱり犯人はあいつらかよ!~
「実はな……」
「上流で人間が静かなる谷を汚している」と族長が話した件についてセイランが説明してくれた。
「これは私がきれいな水を探し求めた後の話なのだが、川の水量が減ったことに対して周辺の他の部族たちと会議が行われたのだそうだ」
「会議?そんなことがあったのか?」
どうやらセイランが水を探しに村を離れた後に周辺の部族で会議を行ったらしかった。
それがどういう会議だったのかというと。
「ああ。それでその会議の席で分かったことなのだが、周辺の部族の村でもここと同じように前に言っていた周辺の川の水量の減少の他にも、村の大事な水源である泉や池の水が枯渇しつつあるとのことだった」
「村の水源の枯渇。他の村でもか?」
まあ、これだけ川の水が減っているんだ。
だから村の水源がやばくなっているのはここの村だけではないと何となく感じてはいたのだが、案の定そうだったようだ。
「そうだ。他の村でも水源は枯渇していたのだ。しかも他の村では水源が枯渇するだけではなく別の事件も起こっていたのだ」
「別の事件?なんだ?」
「他の村では何人も村人が攫われていたのだ」
★★★
蛇人たちが攫われている!
セイランのその話を聞いた俺は驚いたが、ここで驚いたところで仕方がないので、今は話の続きを聞くことにする。
「攫われた?それはどういう状況なんだ」
「うちの村の泉に異常が起き始めた半年より少し前くらいから、うちの村より上流にある村から次々に村人が攫われ始めたそうなんだ」
俺に質問に対して、セイランは蛇人たちが攫われているという状況を詳しく説明してくれた。
セイランの話を要約するとこんな感じだ。
『静かなる谷』の水が減り始める少し前から、蛇人たちが行方不明になるという事件が起こり始めた。
この周囲には三十ほどの蛇人の村があるそうなのだが、そこの村人たちが少しずつ行方不明になり始めたのだ。
ただ行方不明になり始めた当初は問題にならなかった。
というのも、行方不明になった蛇人たちは狩りや木の実の採集の最中に行方不明になっていたからだ。
何せここ静かなる谷は物凄い量の植物や魔物が生息する密林地帯だ。
狩りや採集の最中に魔物に襲われて命を落とすことなど珍しいことではないのだ。
だからこそここの村人は最初異常に気付かなかったのだ。
しかし、行方不明になった者たちが皆上流の方へ狩りや木の実の採集に行った際に行方不明になっていること、それに川の水が急に減ってきたので川の上流の方がおかしくなっているのではと、蛇人が気付き始めたこと。
この二つが合わさって、行方不明者たちが魔物に襲われた理由以外で行方不明になったのでは?と、蛇人たちは疑い始めたというのだ。
「それで、セイランが水を探しに村を離れたすぐ後に、水の件と行方不明者の件を調べるため各村の精鋭を集めて川の上流の方へ調査団が派遣されたという事か」
「そういうことだ」
「それで、その結果はどうなったんだ?」
「上流の方で人間たちが行方不明、いや攫って行った蛇人たちを使って川をせき止めるべくダムを造っていたんだ」
ふ~ん。こんな人間が住んでいない密林地帯に人間がダムを造っていたのか。
無茶苦茶陰謀しか感じない話だ。
俺はさらに詳しく話を聞くことにした。
★★★
「上流で人間がダムを造っていたのか?蛇人たちを使って?それは間違いない話なのか?」
「ああ、間違いない。調査団に加わっていたうちの村の戦士長が発見したんだ」
「そうか。セイランの村の戦士長が発見したのか。それは信じるしかないな」
セイランの村の戦士長という立場のある人物が発見したというのだ。
これは間違いないと思った。
「それで、発見した後はどうしたんだ」
「調査団で連合して攫われた村人たちを奪い返すべく人間たちに襲い掛かったんだ。だが……」
「だが?」
「失敗してしまい、逆に調査団の何人かが捕えられてしまったんだ」
「そうなのか?村の精鋭を集めた調査団という話だったが、相手はそんなに手強かったのか?」
「私は見ていないが、戦士長の話によると、敵はアダマンタイトの武具で武装してたり、強力な魔法を使ってきたりとかなりの強敵だったらしい」
「アダマンタイトの武器に、強力な魔法かあ。確かにそれは手強そうな相手だな」
そこまでの準備をした連中となると、人間の中でも強力な集団だった。
そんな手強い相手とは一体どこの誰だろうと思っていると、ここまでセイランの話を聞いていた族長が口を挟んできた。
「おい!人間!息子に聞いた話だと、お前たちも強力な魔法であっさりと魔物を退治したそうではないか!そんな強力な魔法を使える人間などそうはいない。実はお前たち、連中の仲間なのではないか?」
そうやって、俺たちのことを疑うようなことを言って来たのだ。
あまりに一方的に決めつけられ、一方的に言いたい放題に言われたので、一瞬だけ腹が立ったが、よく考えると蛇人たちもその人間たちに一方的に被害を受け、その腹いせで俺たちに文句を言っているだけの気がしたので、ここは我慢することにした。
ただ、俺は我慢したがセイランは我慢できなかったようで。
「父上!何をおっしゃるのですか!ホルスト殿は私の命の恩人!とても気が良くて優しい人物だと、先程から何度も説明しているでしょうが。絶対に人攫いの仲間なんかではありません!」
「そんなのは分からないではないか!お前に優しくしたのだって、我らを騙すための演技かもしれないし」
「言わせておけば!このクソ親爺が!」
そうやって父親と口げんかをしてまで俺たちを庇ってくれようとしたセイランがとうとう父親の言い草にブチ切れて、取っ組み合いのけんかになりそうになった。
俺のせいで親子の殴り合いになっては困るので、急いで止めに入る。
「落ち着け!セイラン!別に俺は怒っていないから、お父さんと喧嘩をするのは止めてくれ」
「しかし、ホルストよ。私は父上の言い方が気に入らんのだ。私の命の恩人に対して礼儀を欠きすぎている」
「だから、俺が気にしないって言うんだから、落ち着いてくれよ、それよりも、さ。そのダムにいた人間たちに他に特徴があったら教えてくれよ」
そうやって必死に説得し、セイランは何とか暴れるのを止めてくれた。
正直、俺はホッとした。
俺のせいでセイランが親子喧嘩なんかしたら困るからな。
そして、しばらくしてセイランが落ち着いたところで、続きを話し始めた。
「それで、連中に何か特徴がないかという話だったな。……そうだな。聞いた話によると、連中の中にはあまり見たことがない神官服を着た者たちがいて、そいつらが指揮を執っていたらしいぞ」
神官服。
その話を聞いて俺は相手の正体にピンときた。
今まで俺たちは神官服を着た連中と何度もやりあっている。
というか、よく考えたらこんな何もない場所でダムを造るなんて怪しげな行動をするの何て連中以外にいるわけがないのだった。
そんな訳で、気がついたら俺はセイランにこう話していた。
「セイラン。そいつら、多分俺たちが追っている奴らだ。神聖同盟という連中だ」




