第601話~底なし沼に引きずり込まれそうな蛇人を助け出せ!~
謎の人物の悲鳴を聞き、その人の救助に向かった俺達だが、その前に。
「『神獣召喚 海の主』。『海竜の加護』発動」
海の主の『海竜の加護』を使用しておいた。
この先、水中戦が待っている可能性もあるな。
そう判断したのでこうしておいたのだ。
そして、俺のこの判断は正しかった。
★★★
「旦那様、見てください!人が沼に引きずり込まれようとしています!」
準備を調えて先へ進むと、人が一人沼に引きずり込まれようとしているのをエリカが発見した。
エリカが指し示す方を注視すると、確かに人が沼の底に引っ張られないようにと、水面でバタバタしているのが見えた。
その人物は必死に泳いで頭を何とか水から出そうともがいているが、この分だと長く持ちそうになかった。
どうやらこれはヤマタノオロチに聞いた底なし沼に潜む魔物というやつの仕業らしかった。
というか、これは早く何とかしないと危ないな。
そう思った瞬間俺はボートから飛び出し、現場の水域へと飛び込んで行った。
★★★
ドボンという音と共に水中に飛び込んだ俺は、現在の状況を確認する。
目の前の人物は、水底から伸びてきている植物のツタのような物に足を絡まれて、それによって水中に引きずり込まれていた。
その人物の傍らには水中に沈んだボートが見えるので、ボートの乗っている時に奇襲され水中に引きずり込まれたのだと思う。
この状況を見るに、目の前の人物を助けるにはあの足に絡んでいるツタを何とかしなければならないようだった。
「『天風』」
俺は早速魔法を使ってツタの切断を試みた。
俺が魔法を使うと同時に強烈な水流が発生し、水中に引き込まれた人物の足に絡んでいるツタをずたずたに切り裂いていく。
そうやって水に引きずり込まれた人物をツタから解放した後は、その人物に一気に近づき、『重力操作』の魔法で一そのまま水上へと引き上げ、俺たちのボートへと連れて行く。
その途中で、当該人物の様子を見てみると。
「う~む。この人、意識は失っているようだけど、呼吸はちゃんとしている。どうやら命に別状はないみたいだ」
俺が救出した人物は意識は失っているようだが、きちんと呼吸はしているみたいなので命に別状は無さそうな感じだった。
何とか救助が間に合ったようで、俺は心底ホッとした。
助けた人物が無事なのを確認した俺は、さらに当該人物を詳しく見てみる。すると。
「うん。体中に蛇のような鱗があるな。それに顔つきも蛇っぽいな。多分この人が蛇人で間違いないと思う」
体中を蛇のような鱗が覆っていること、それに顔つきからこの人が蛇人だと判断した。
俺は助けた蛇人をそのまま俺たちのボートへ連れて行くと。
「ヴィクトリア。ネイア。この人の手当てを頼む」
と、二人に助けた蛇人のことを任せると、再び蛇人が引きずり込まれていた現場に戻った。
蛇人の救出には成功したが、魔物はまだ残っている。こいつらを倒さないと先には進めない。
ということで、さっさと魔物を退治してしまおうと思う。
★★★
俺がもう一度水中へ飛び込むと、さっきまで蛇人を水底に引きずり込もうとしていたツタが俺に襲いかかって来た。
ツタは沼の底の底の方から伸びてきているようで、クネクネとまるで鷹飼化の触手のような柔軟な動きを披露しながら、今度は俺を引きずり込もうと俺に迫って来る。
もちろん俺はこんな訳の分からないものに引きずり込まれるなど御免こうむるので、全力で抵抗させてもらう。
「『天風』」
再び魔法で水流を作り出すとツタを攻撃する。
パシュッ、スパッ、ズバッ。
と、小気味良い音が響き、俺に襲い掛かってきたツタをバラバラに切断する。
俺の攻撃はこれで終わりではない。
「行くぞ!今度はツタの大元を排除してやる!」
ツタを操っている大元の魔物を倒すべく、沼のさらに底へと潜って行く。
★★★
さらに水深が深い所に潜って行くと、先程ツタを操っていた魔物の本体が見えてきた。
「敵は植物型の魔物か」
敵は俺が何となく想像していた通り植物型の魔物だった。
まあ、敵はツタで攻撃して来ていたのだから当然の予想ではあった。
それで、敵の姿のだがこれがとても気味が悪かった。
まず魔物の中央には水中に血で染まったような黒の混じった赤色の巨大な花を咲かせていた。
そして、花のすぐ横には口が付いている。
多分、これで引きずり込んだ獲物を捕食するのだろう。
これだけでも相当なものだが、その周囲を無数のツタが取り囲んでいて、本体を守っていた。
中々強固な守りの布陣であるとは思う。
でも、関係ない。
そんなものは俺にとっては無力に等しいし、俺たちの行く手を遮るというのなら始末して沼の魚の餌にしてやろう。
そう考えた俺は、植物の魔物を本当に始末すべく、魔物の本体目掛けて突撃を開始する。
「ブクブクブク」
植物の魔物は俺を威嚇しているつもりなのか、口から大量の空気の泡を吐き出し俺を威嚇してくる。
そして、それは威嚇にとどまらず、俺の接近を阻止しようと、周囲のツタで俺を攻撃してきた。
先程までの戦闘でかなりの数のツタを失っているにもかかわらず、それに倍する数のツタがまた俺に襲い掛かって来た。
とはいえ、数だけで質のない攻撃だ。
「『天風』」
またもや、風の魔法で水流を作り出し、バラバラに切り裂いてやった。
やったのだが……。
「う!何だか、変な感じがする」
ツタをバラバラにした後、呼吸のため水を一口飲み込んだ俺は、『海竜の加護』の力で俺は水中でも息ができるのだ、異変を感じた。
急いで水中を確認すると、バラバラになったツタの中に赤い液体が混じっていた。
何だか毒っぽい液体だった。
どうやら敵の魔物のツタの中には毒が混ざっていたようだった。
幸いなことに『海竜の加護』のおかげで水中での身体能力が向上していた(当然その中には毒への耐性の向上も含まれている)上、飲み込んだ毒の量も大したことが無かったので、一瞬違和感を感じたくらいで済んだっようだ。
本当、あらかじめ『海竜の加護』をかけておいて正解であった。
ただ実害はないのものの、毒を呑み込んで何もしないというのは気持ち悪い。
幸いネイアが作った毒消し薬があるので、こいつを倒してゆっくり飲むとしよう。
ということで。
「『フルバースト 究極十字斬』」
俺は一気に植物の魔物に接近すると、必殺剣を放ったのだった。
★★★
「グボボボボーーー」
俺の必殺剣をまともに受けた植物の魔物は、口から大量の空気を吐き出しながら断末魔の悲鳴をあげ、その体を四分割され、その動きを止めた。
これだけでも十分魔物退治は完了したと言えるが、俺はさらにとどめを刺しに行く。
「『天風』」
再び水流を作り出し、四分割された魔物の体をさらに細かく切り刻んでいく。
え?そこまでする必要があるのかって?
当然じゃないか。
何せこいつ俺に毒まで飲ませてきた強力な魔物だ。
四分割した時点で復活することはないと思うが、植物の魔物はほんの少しでも部位が残っていればそこから復活すると聞いた覚えがある。
ならば万が一のことを考えて、絶対に復活できないくらい細かく切り刻んでおくべきである。
そういう心持ちで念入りに魔法を使った結果。
「これなら大丈夫だろう」
魔物を肉体を全て一ミリ以下の大きさまで細かく切り刻んでやることに成功した俺は、これでミッション成功だと、十分に満足したのだった。
「さて、それでは帰って毒消しでも飲むか」
満足した俺は、その場から離れるべく水中へ浮上しようとしたのだが、その時、俺の生命力感知に引っかかるものがあった。
「うん?俺の生命力感知のよると、何かが高速で俺の方に来ているな。……もしかして、新しい魔物か!」
どうやらようやく植物の魔物を倒したばかりだというのに、新たな魔物が出現したようだった。




