第581話~獣人の国の国王への挨拶~
「それじゃあ、マロン。私たちはもう行くから元気でね」
「うん。ネイアお姉ちゃんも元気でね」
マロンの昇進祝いから数日後。
最後にネイアとマロンがそうやって別れの挨拶を交わした後、俺たちはヒッグス家の商館を離れエルフの王都を出た。
残る国王への挨拶の予定は獣人の国とフソウ皇国。この二つだ。
まずは予定通り獣人の国へ行くことにする。
「『空間操作』」
俺は転移魔法を使用すると、獣人の国へと向かうのだった。
★★★
獣人の国へと到着した俺たちは、そのままの足で獣人の国の王都にあるヒッグス商会に向かった。
ここも以前獣人の国に来た時に利用したことのある場所だ。
それにネイアの勤務地でもある。
ネイアは今は一時的にヒッグス商会の勤務から離れて、邪神の復活を阻止するために俺たち行動しているが、それが完了したら、再びここで働くようになると思う。
ただその場合でも寝食は俺たちと一緒になると思う。
その場合、毎日俺が魔法で家とここを送り迎えすることになるのではないかと思う。
何だか大変な毎日になりそうだが、ネイアのためだ。仕方がない。
「その時は、よろしくお願いしますね」
ネイアにもそうお願いされているので、その時が来たら頑張ろうと思う。
★★★
さて獣人の国の王都ブレイブのヒッグス家の商館に着いた俺たちは、商館の支配人であるコッセルさんと打ち合わせをした。
内容は獣人の国の国王である獣王陛下との謁見の件である。
具体的に言うと、コッセルさんにはエリカのお父さんから事前に連絡してもらって、獣王陛下と謁見できるように申し込んでもらっていたので、その経過がどうなっているか確認した次第である。
「それで、コッセルさん。今現在、獣王陛下との謁見の見通しは立っているのですか?」
「はい。ホルスト様。先方に申し込んだ所、いつでも良いとのご返事をいただいておりますので、すぐにでも大丈夫だと思います。何なら明日や明後日でも行けそうな感じです」
なに?すぐにでも謁見できるのか?それはラッキーだな。
コッセルさんの話を聞いた俺はそう思った。
今までの国では謁見の申し込みから実際に謁見するまでタイムラグがどうしてもあったからな。
それが無いというのらありがたい話であった。
「そういうことなら、できるだけ早く謁見できるように話を進めてください」
「畏まりました」
ということで、俺はコッセルさんに早く謁見できるように頼んだのだった。
★★★
その二日後。俺たちは獣人の国の王宮にいた。
もちろん、獣王陛下と謁見するためだ。
あれからコッセルさんに交渉してもらったところ、謁見日が今日になったので、こうして王宮に参内したのである。
王宮の待機室で待つこと三十分。
「ホルスト殿。謁見の間へどうぞ。獣王陛下がお待ちでございます」
侍従が俺たちのことを呼びに来た。
どうやら俺たちの謁見の順番が回ってきたようだった。
「さて、それでは行くとするか」
俺達は侍従に案内されて、謁見の間へと向かうのだった。
★★★
「ホルストよ。よくぞ参った。久しぶりだな。息災なようで何よりだ」
「ははっ。獣王陛下。お久しぶりでございます」
俺達と獣王陛下との謁見はそんな挨拶から始まった。
「それで、ホルストよ。此度はどのような用件で参ったのだ?少しだけ聞いた話によると、世界の危機が間近に迫っているという話であるが」
「実は……」
獣王陛下に問われた俺は今現在世界で起こっていることを如実に話した。
地脈の封印は完成したが、邪悪なる存在の魂が復活してしまっていること。
そして、その魂はクローンという仮の肉体に宿って活動していること。
一度はクローンを倒したもののまだ予備のクローンがあり、邪悪なる魂はそちらに宿っていること。
そういう事を正直に話した。
俺達の話を聞いた獣王陛下は、「う~む」という唸り声をあげ、悩ましい顔をした。
まあ、これは当たり前の反応だと思う。
一見平和そうな世界の裏でそんな重大なことが怒っているという話を聞いたのだから。
簡単には信じられる話ではなかった。
思考が混乱して、どう返事をすればよいのか悩むのは普通だった。
とはいえ、そこは一国の国王。
しばらくして考えがまとまったのだろう。俺たちにこう聞き返してきた。
「ホルストよ。それはまことの話なのか?」
「残念ながら……すべて本当の話でございます」
「そうか。簡単に信じられる話ではないが、そなたたちは軍神マールス様の加護を受けた者たちだ。それにこの国に巣食う害悪を討伐してくれた者たちでもある。その者がここまではっきりと言うのだから間違いはないのだろう。よし!ワシもそなたらの言うことを信じるとしよう」
と、最終的に獣王陛下も俺たちの言うことを信じてくれたのだった。
それを見て、俺もうまく行ったとホッとしたのだった。
★★★
「それで、ホルストよ。世界がそのような危機にある中、我らにできる事があるかな?さあ、遠慮なく申すがよい」
俺達のことを信じてくれた獣王陛下は、今度はそうやって何か自分たちにできる事はないかと質問を投げかけてきた。
それに対して俺は他の国の国王たちに言ったのと同じことを頼むのだった。
「実はその邪悪なる存在が潜んでいる場所があるのです。そして、そこへ行くための鍵の一つがこの国にあるようなのです。その鍵に関する調査をこの国でしたいのですが、その調査の許可をいただけないでしょうか?」
「邪悪な存在を炙りだすための調査か?そういうことならば自由にするがよい」
「ありがとうございます。それともう一つお願いします」
「もう一つのお願い?何かな?」
「はい。万が一の場合に備えて、この国の警備の強化をお願いできないでしょうか。敵の勢力は大分落ちているとはいえまだ油断できるものではありません。ですから警備体制を強化した方が良いと存じます」
「なるほど、ホルストの申す通りだな。よし!我が国も万が一に備えて警備を強化するとしよう」
「お願いいたします」
こうして獣人の国でも俺たちの願いは聞き入れられたのだった。
その後、しばらく獣王と雑談を交わした後、俺たちは王宮を退出した。
★★★
さて、謁見を終え、この国での用件が終わった俺たちは次の行動に移ることにした。
今回俺たちの調査対象となる国のうち、ヴァレンシュタイン王国、ドワーフ王国、エルフの国、獣人の国の四つで国王との謁見を終え、俺たちの頼みを聞いてもらうことができた。
残るはフソウ皇国だけである。
「よし、それじゃあすぐにフソウ皇国に向かうとするか。お前ら、準備しろ!」
「「「「はい!」」」」
ということで、俺は嫁たちに指示を出し、すぐにでもフソウ皇国へ向かう準備を調えるのだった。




