第577話~エルフ国王への挨拶 その1 ネイアのイトコのマロンへの昇進祝い~
ドワーフの国王への挨拶が終わったので、計画通り次の国王への挨拶に向かうことにする。
次の目的地はエルフの国だ。
「それじゃあ、おじい様たち、行ってきます」
「ああ、気を付けて行くんだよ」
そうやってリネットが家族たちと別れの挨拶をするのを見届けた後。
「パトリック。頼んだぞ!」
「ブヒヒヒン」
パトリックを駆り屋敷の外へ出た。
「『空間操作』」
そして、一旦町の外へ出ると、一気にエルフの国まで魔法で転移した。
★★★
エルフの国へと到着した俺たちは、エルフの国の王都であるファウンテンオブエルフへと行き、そのまま王都の中にあるヒッグス家の商館へと向かった。
ヒッグス家の商館は以前にもお世話になったことがある場所だ。
だから、ここで働いている人たちとも面識があるわけで、俺としては安心できる場所であるので、今回もここに滞在させてもらうことにしたのだった。
商館へ着くと、商館の支配人であるハリスンさんが出迎えてくれた。
「ホルスト様。ようこそおいでくださいました。会長よりすでに連絡は受けております。ここの施設はご自由に使ってください」
「ありがとう、ハリスンさん。是非そうさせてもらいます」
先にエリカのお父さんにここへ行くつもりだということは伝えておいたので、お父さんからハリスンさんへ連絡が行っているみたいで、俺たちが宿泊する準備も万全なようだった。
ありがたく使わせてもらうことにしよう。
ということで、早速部屋へと案内してもらい、そこでくつろぐことにしたのだった。
★★★
部屋へ入り、嫁や子供たちとお茶を飲みながら一休みしていると、ハリスンさんが部屋へと入ってきた。
ハリスンさんが来た理由はわかっている。
事前に国王陛下と謁見できるように手配してほしいとハリスンさんにエリカのお父さんから頼んでもらっていたので、その件で来たのだと思う。
この件に関しては俺とエリカで話し合うと決めていたので、他の嫁たちや子供たちをリビングに残して、別室で三人で話し合うことにする。
テーブルにお茶とお菓子を並べ、三人とも椅子に座ってから話し合い開始だ。
三人の中で最初に口を開いたのはエリカだった。
「それで、ハリスンさん。私の父から頼んでいた国王陛下との謁見の件はどうなりましたか?」
「はい。お嬢様。その件に関しては、私の方が積極的に関与して、話が順調に進んでおります」
「それはご苦労さまです。それで、現在の状況はどうですか?」
「はい。すでに謁見の申し込みは済んでおります。向こうの方の感触も良好なようで、数日中には謁見できそうです」
「そうですか。それはめでたいことです」
「はい。何せお嬢様方はルーナ様やソルセルリ様に認められた方々。それに王家から見たらエルフの国の危機を救ってくれた英雄でもあります。国王陛下ともなれば、中々お忙しいお方ではありますが、お嬢様方のために頑張って時間を作ってくれているようでございます」
「そうか。それはありがたい話だな。では、ハリスンさん。そのまま謁見の話は進めて、謁見の日取りが決まったら知らせてくれ。俺たちはそれまでのんびりさせてもらうから、よろしく頼むよ」
「畏まりました。お任せください」
これでハリスンさんとの打ち合わせは終わった。
後は謁見の日取りが決まるまで待機するだけである。
★★★
ハリスンさんとの打ち合わせが終わってしばらくすると、ネイアのイトコのマロンが部屋を訪ねてきた。
マロンはヒッグス商会の従業員でこの商館に下宿していて、俺たちが来たと聞いて、こうしてやって来てくれたのだった。
「こんにちは~。ネイアお姉ちゃん、久しぶり」
「あら。マロン。久しぶり」
仲の良い二人はそうやって挨拶を交わすと、ギュッと抱き合い、再会を喜び合った。
そして、マロンはそのままネイアに連れられてリビングの方へと入って来た。
それを見て、他のみんながマロンを歓迎する。
「マロンさん、よく来てくれましたね」
「マロンちゃん、お久しぶり」
「ささ。こっちにお菓子とお茶があるのでゆっくりお話ししましょう」
そうやってマロンをお茶に誘い、テーブルに座らせてからみんなで談笑をし始めたのだった。
俺はホルスターと銀の遊び相手をしてやりながらその様子を見守っていた。
「マロン、元気にしてた?」
「うん、元気にしてたよ」
「今日は仕事とか大丈夫なの?」
「うん。今日は早番だったから、もう仕事は終わったよ」
「だったら、今日はゆっくりできるね」
「何だったら、ご飯も食べて行くといいですよ」
「ありがとうございます」
と、和気あいあいと言った感じで女の子同士楽しそうにしていた。
俺はそれらの会話を基本聞き流しながら、子供たちとおもちゃで遊んでいたのだが、嫁たちの会話の中で多少気になることがあった。
「私、今度主任に昇進したんですよ」
「「「「へえ、それはおめでとう」」」」
どうやらマロンが主任に出世したらしかった。
主任はヒッグス商会の職位の中ではそんなに高い地位ではないが、かといって誰でもなれるものではない。
マロンは接客とかもそつなくこなしていたし、人当たりも良く誰にでも好かれるタイプだ。
だからその辺を見込まれて出世したのではないかと思う。
何はともあれめでたいことだと思う。
そのことを聞いた俺は子供たちから離れて立ち上がると、マロンの所へ行き、こう言うのだった。
「マロン。主任に出世したのか?それはおめでとう」
「ありがとうございます」
★★★
その夜、食事が終わり、マロンも自分の部屋に帰り、皆でリビングでくつろいでいる時、俺はネイアから相談を受けた。
「ホルストさん。マロンが主任に昇進したということなので、私としてはお祝いをあげたいのですが……」
「お祝い?いいんじゃないか。それで何をあげるつもりなんだ?」
「水晶でできたお守りをあげようかと思っています」
「水晶でできたお守り?」
「はい。エルフの国では、大事な人が昇進したお祝いに水晶獣という水晶の角を持った魔獣の水晶でできたお守りをあげるという風習があるのです。ですから、それをあげようと思うのですが、一つ問題があるのです」
「問題?何だい?」
「先程支配人に水晶の在庫を聞いてみたところ、ここには全然無いみたいなのです」
「そうなのか?」
「はい。一応他の商会にも問い合わせてみるとのことですが、あるかは不明ですね。元々水晶獣は希少な魔物なので、水晶自体数が少ないのです」
なるほどね。
水晶獣のお守りをマロンにあげたいけど手に入るかわからないという事か。
だったら……。
俺はネイアの話を聞いてあることを思いつき、それを提案してみせた。
「なあ、ネイア。もしその水晶が見つからなかったら、その水晶獣の角とやらを手に入れに行かないか?」




