第575話~ドワーフ国王への挨拶 前編 嫁たちとスーザンの買い物~
自分の国の国王陛下の挨拶が終わったので、次の王様と挨拶をすることにする。
それで、次の訪問地はドワーフ王国だ。
ここを次の訪問地に選んだのはリネットのコネが使えるからだ。
何せリネットのおじいさんはドワーフ王国の宰相。ドワーフ王国の臣下の中で一番偉い人だからな。
それに俺たちは一度神獣のネズ吉たちと一緒に国王陛下と謁見したこともある。
だから。
「おじい様。アタシたちのために国王陛下と謁見できるように取り次いでいただけないですか」
そうリネットがリネットのおじいさんに頼んだ所。
「まあ、私に任せておきなさい」
と、リネットのおじいさんはあっさりと了承してくれたのであった。
ということで、国王との謁見の準備が整うまで俺たちはリネットのおじいさんの家で待機するのであった。
★★★
おじいさんの屋敷で待機している間、うちの嫁と子供たちはリネットのイトコであるスーザンと一緒になって遊んでいた。
「リネットお姉さまと一緒に遊べるなんて、とてもうれしいです!」
リネット大好きなスーザンは、久しぶりにリネットと会えて非常に感激しているようで、盛大に遊び回っている。
彼女たちの遊びは基本的に屋敷の中でやる。
というのも、スーザンはあまり体が丈夫でないので外へ遊びに行くのが苦手だからだ。
そんなわけで、スーザンは嫁たちと屋敷でボードゲームなんかをして楽しんでいる。
ちなみに今やっているのは、前に遺跡で手に入れた財宝の中にあったボードゲームだ。
ヴィクトリアによると、異世界の品らしく、ボードゲームの絵やコマは異世界風のものになっているということだ。
「あ。また一つ星を手に入れちゃったよ。これで資産額ではアタシがトップかな」
「さすがはリネットお姉さまです!すごいです!」
「おお、やりますね。リネットさん。でも、ワタクシも負けませんよ!」
という感じで楽しそうにやっている。
なお、どんな内容のゲームかというと、宇宙を巡って財宝や星々を手に入れ、最終的に一番資産が多い人が勝ちというゲームらしかった。
前にヴィクトリアに聞いた話だが、空に浮かぶ星は近くまで行くと俺たちが住んでいる大地くらいの大きさがあるそうで、他の世界に行けばそれらの星を行き来するような文明レベルを有する世界もあるのだそうだ。
何とも雄大な話で、俺としてはにわかには信じがたいのではあるが、このボードゲームはそういう世界の物らしい。
だから嫁たちがゲームで使っているコマも宇宙船とかいう星々を行き来する乗り物をかたどったものだった。
これが流線型で意外にカッコが良くて。
「銀姉ちゃん、このお船、カッコいいね!」
「本当だね。ホルスターちゃん」
と、ゲームに参加していないホルスターと銀が使ってない宇宙船のコマをぶんぶんと振り回して遊んでいるくらいだった。
それで、肝心の勝負の方だが、今回はリネットの勝ちのようだ。
「やった!一番でゴールだね!声で一着賞金と試算額を合わせてアタシが一番だね!お菓子のクッキーはアタシのものだね!」
「さすがはお姉さまです!」
「あら、今回はリネットさんにお菓子を取られちゃいましたね」
「悔しいです!次こそはワタクシが!」
「リネットさん。おめでとうございます。でも、私も次は負けないですよ」
と、白熱した戦いをした者通し、リネットをたたえていた。
「「「「「さあ!それじゃあ、次行きますよ!」」」」」
そして、すぐさま次のゲームを始めるのであった。
お前ら本当に仲がいいな。
俺はそう思いつつ、嫁たちが遊ぶのを眺めながらのんびりするのだった。
★★★
基本そうやって屋敷の中で過ごしていた俺達だったが、時には出かけることもあった。
「リネットお姉さまと買い物できるとか……最高です!」
外行きの服に着替えたスーザンがパトリックに乗り込もうとして張り切っている。
今日は皆で買い物に行く予定の日だ。
スーザンは体の弱い子なので、スーザンを心配するおじいさんたちが滅多に外出を許してくれないのだ。
そんなスーザンをかわいそうに思ったリネットが、
「アタシがついて行くから、スーザンと買い物に行かせてください」
と、おじいさんたちに頼んだのだ。すると。
「リネットや他の子たちがついて行ってくれるんなら安心だ」
そうおじいさんたちが納得してくれたので、今日外出となったわけなのである。
「さて、それじゃあ。買い物に行くぞ」
スーザンやスーザンのお母さんとおじいさん、それに嫁たち全員が馬車に乗ったのを確認した俺は、町へ向かって馬車を走らせたのっだった。
★★★
「リネットお姉ちゃん。この服、どうかな?」
「うん、とても似合うと思うよ」
「本当?リネットお姉ちゃんに褒めてもらえると嬉しいな!」
店へ入って買い物が始まると、リネットとスーザンがそんな風に楽しそうに会話をしながら買い物をしている。
「ネイアさん。ワタクシはこっちの服が欲しいんですけど、どうですか?」
「いいんじゃないですか?」
「私はこのスカートを買おうと思うんですが、ヴィクトリアさんはどう思いますか?」
「似合うと思います」
他の嫁たちも嫁たちで集まって、買うべき服を選んでいる。
今回、ドワーフ王に謁見するにあたってドワーフ王国風の衣装で謁見しようという話になったのでそれを買いにこの店に来たのだった。
なお、ここの店はドワーフ王国でもかなりの高級店で、リネットのお父さんの実家であるクラフトマン宰相家御用達の店らしかった。
ということで、店員の接客も、高級店らしく、非常に丁寧でかつ商売上手だ。
「奥様、そちらの黒のドレス。非常にお似合いですね。ですが、こちらのブローチをつければさらに素敵ですよ」
「あら、本当ですね。それじゃあ、これも下さい」
と、今も店員に乗せられたヴィクトリアの奴がブローチを買おうとしている。
まあ、今日は好きに買えと言っているから別に買っても構わないけど、程々にしておけよ。
そう思いつつ、俺は皆の買い物を見守っていたのだが、その時、俺同様女性陣の買い物を見守るだけだったリネットのおじいさんが話しかけてきて。
「ホルスト君。話があるんだが」
と、おじいさんが誘ってきたので、「いいですよ」と返事をし、俺はおじいさんとお話しすることにした。
★★★
さて、嫁たちが買い物をしている間、俺は店の休憩スペースでおじいさんとお話をした。
「どうぞ」
そう言いながら店員さんが気を利かせて出してくれたお茶を飲みつつ、おじいさんと話を始める。
急に話があるって……何だろうか?
急な話にちょっと緊張しつつ、おじいさんの方を見ると、おじいさんはこんな話をし始めた。
「ホルスト君。前にもし前にリネットに娘ができてスーザンに男の子ができたら二人を結婚させたいって話をしていただろう」
「はい。そんな話をしていましたね」
おじいさんの言葉に俺は大きく頷く。
確かにスーザンが将来結婚して男の子が生まれ、俺とリネットの間に女の子が生まれたら二人を結婚させる。
そんな約束をしていたのだった。
それは良いのだが、ここへ来て急にその話をおじいさんがしてくるのはなぜなのだろうか?
そう疑問に思った俺はおじいさんに話の続きを聞くことにする。
「それで、おじいさん。その件に関して何かあったのですか?」
「うむ。実は、ね。今度スーザンの結婚相手が正式に決まったんだよ。多分、来年くらいには結婚すると思う」
「それはおめでとうございます」
俺はそういう事か、と思った。
つまりは俺とリネットの間に生まれるかもしれない娘の義父になるかもしれない相手が決まったので、それを俺に知らせたかったということのようだ。
「それで、お相手は誰ですか?」
「国王陛下の第二王子であるガイウス殿下だ」
国王の第二王子がスーザンの旦那になるのか。
それを聞いた俺はいいんじゃないかと思った。
一度謁見したことがあるドワーフ王は人が良さそうな人だったので、その息子ならやはり人が良いのではないかと考えたからだ。
実際。
「ガイウス殿下は、学問に秀で、武芸も達者だそうだ。その上、下々の者にも優しいお方で、部下に対して怒鳴ったりしたことなど一度もない方だそうだ」
おじいさんの話によると、ガイウス殿下はそんな風に評判が良い人らしいので俺としてはスーザンの結婚相手には良い人物なのではないかと思えた。
それはそれとして、今おじいさんが俺にその話をしてきたのは。
「実は、ね。お前たちの謁見が終わった後、ガイウス殿下がお前たちと一度会ってみたいと仰っているのだ」
「そうなのですか?」
「お前たちは世界中で活躍している冒険者だ。その上、ガイウス殿下から見れば自分の子供と結婚する可能性がある子の親になる可能性もある。だから、一度会っておきたいそうだ。だから、会ってほしいのだが、どうだね?」
「もちろん、構いませんよ」
このおじいさんの頼みに対する俺の返事はもちろんイエスだ。
俺だってスーザンの旦那様には会っておきたかったし、相手は王族だ、知り合っておいて損のない相手だ。
「そうか。では、手配しておくよ」
「はい、お願いします」
こうして、買い物の最中ではあるが、スーザンの婚約者と面会することが決まり、俺たちの予定が一つ増えたのであった。
★★★
そんな風に買い物に行ってから三日後。
「こちらが謁見の間にございます」
俺達は侍従に案内されて、ドワーフ王と謁見すべく謁見の間へと入って行った。
謁見の間へ行くとすでにドワーフ王は玉座に座っていて俺たちが入室してくるのを見つめていた。
俺と嫁たちはそんなドワーフ王の前まで行くと、膝をつき、挨拶をする。
「ドワーフ王陛下、お久しぶりでございます」
「うむ。ホルストよ。達者なようで何よりだ」
「はい、ありがとうございます」
「それで、本日はどのような用件で謁見を申し込んできたのだ。宰相の話によると、世界の命運がかかっているという話だったが……」
「実は……」
ドワーフ王に尋ねられた俺は今世界で起きていることを話し始めたのだった。