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第566話~ヴィクトリアのおじいさんたち天界へ帰る 前編 ヴィクトリア、おじいさんたちのために歌を歌う~

 ヴィクトリアのおじいさんたちとのダブルデートから数日後。


「そろそろ私とセイレーンは天界へ帰ろうと思いうのだが」


 ヴィクトリアのおじいさんとセイレーンが天界へ帰ると言い始めた。

 まあ、おじいさんたちが下界へ降りてきたのは俺たちの海底の地脈の封印を手伝うためだったから、その目的が果たされた今、おじいさんたちが帰るというのは理解できた。


 ただおじいさんたちとはここ数か月一緒に暮らしたわけであるから家族中がおじいさんたちが帰ると聞いて、残念がっている。


「クリント様とセイレーン様。帰られるのですか。残念ですが仕方ないですね」


 そんなことを言って、別れを惜しんでいる。

 俺も仕事が終わったからと言って急いで帰らなくてもいいのではないかと思ったりもして、一応そう言ってみたのだが。


「お前も私とクソオヤジの戦いを見て分かっただろう?私たちの力はこの世界では強すぎるのだ。私たちがこの世界にいたままだと、オヤジの奴が私たちにちょっかいを出してきて、それがきっかけでこの世界が滅びるかもしれない。それを避けるためにも私たちはここに長居してはならぬのだよ」


 と、おじいさんが自分たちがこれ以上この世界に居ればプラトゥーンと接触し世界が滅びる可能性があると主張するので、引き留められなかった。


 そういう事ならどうしようもないなと思った俺は、こうなったら精いっぱいの送別会をしておじいさんたちに帰ってもらおうと思い、皆に言ってその準備をしたのであった。


★★★


 それから数日後。おじいさんたちの送別会が開催された。

 場所は俺の家だ。


 本当はどこかレストランでも貸し切ってそこでやろうかと思っていたのだが。


「折角だからヴィクトリアの手料理が食べたい」


 と、おじいさんが言うので、俺の家ですることになったのだった。

 そんなわけで準備したのであるが、まず料理はヴィクトリアが中心となって嫁たち、それに俺の妹とその仲間たちが招集されて皆で作った。


 嫁たちはともかく、何で妹たちまで?と俺は思ったが、妹たちもおじいさんたちと旅行に行ったからな。

 だからおじいさんたちが天界(妹たちには家に帰ると言っている)に帰ると聞いて、「旅行でお世話になったお礼をしたい」と、申し出てきたので、こうして手伝ってもらっているという訳だ。


 それで、皆で協力して料理を作っているわけだがその気合いの入りようがすごい!

 嫁たちと妹たち八人で町へ買い出しへ行ったのだけど、とんでもない量の食材を買い込んできたのだった。


「おい、ヴィクトリア。台所が半分埋まるくらいの食材があるんだが、こんなに作って食べられるのか?」

「まあ、一回で食べるのは無理でしょうけど問題ないです!余った分は妹ちゃんとこにあげればいいですし、おじい様たちがお土産に持って帰ればワタクシのお父様たちも喜んでくれるでしょうし。何より……」

「何より?」

「ワタクシとしてはおじい様たちに気持ちよく帰ってもらいたのです。だから万が一にも送別会で食べ物が足らなくなるようなことはあってはならない。そう思うのです」

「わかった。そこまで言うのなら、頑張って作れよ」


 ということで、俺もヴィクトリアを応援して見守ることにする。

 俺に応援されたヴィクトリアはとても張り切り、得意なお菓子作りを頑張り、他のみんなも気合を入れて料理を作って行くのだった。


 それで、お前はヴィクトリアたちを応援するだけなのかって?


 いや俺はホルスターや銀と一緒に会場の飾りつけをしているぞ。

 ホルスターも銀もおじいさんたちにはかわいがってもらったからな。


「ねえ、パパ。おじいちゃんたち、帰っちゃうの?」

「ホルスト様、クリント様たち、帰られるのですね」

「ああ。そうだぞ。ヴィクトリアのおじいさんたち、帰っちゃうんだ。だから、お前たちもおじいさんたちのために一生懸命飾りつけを頑張りなさい」

「「は~い」」


 そんな風におじいさんたちのために頑張って、部屋に紙テープやお星さま、手作りのアクセサリーを頑張って飾ってくれるのだった。


 こんな感じで俺たちはおじいさんたちの送別会の準備を頑張ったのだった。


★★★


 さて、そうやって準備ができたので、いよいよ送別会の開催だ。

 おじいさんとセイレーンの二人を上座に座らせて。


「おじいさんたち、今までお世話になりました。ささやかながら送別の宴を用意させていただきましたので、今日は心行くまで楽しんでください」


 そんな俺の挨拶で宴の開始だ。

 送別の宴ということもあり、結構物悲しい宴会になるのかと俺は予想していたのだが、全然そんなことはなかった。


「皆さん、今日はたくさんお料理があるのでお腹いっぱい食べてくださいね!それと、ワタクシ、今日のためにエリカさんと頑張って歌の練習をしてきたので、聞いてください」


 そうやってヴィクトリアが場を盛り上げようと、先頭に立って頑張っていたからだ。

 実際、ヴィクトリアの歌は頑張って練習して来たという甲斐があって立派なものだった。

 エリカのバイオリンによる伴奏に沿って。


「ラララ~。私の愛しいおじい様とお姉ちゃん~。家に帰ってもお体を労わって元気でいてくださいね~。それと、遊びに来たかったらいつでも来てくださいね~。歓迎しまあす~」


 と、ヴィクトリアが一生懸命考えたおじいさんたちへの思いを綴った歌を披露していた。

 それを聞いたおじいさんとセイレーンは余程嬉しかったのか、手を叩いて喜んでいた。


 なおヴィクトリア以外も歌を披露していた。


「「それでは、私たちはエルフの国の歌を歌います」」


 リネットとネイアはネイアの故郷であるエルフの国の歌を披露した。


「「子ブタのピーちゃん、ママのおっぱい飲んでおねんねしちゃった。さあ!僕らも寝ちゃおう!」」


 ホルスターと銀は童謡を歌っていたし。


「「「「私たちは今ノースフォートレスの町ではやっている歌を歌います」」」」


 妹たちは今町ではやっているという歌を歌っていた。

 かくいう俺も歌わされた。


「俺は海底王国で聞いた歌でも歌おうかな」


 と、海底王国の音楽祭で覚えた歌を歌ったりしていた。

 俺の歌を聞いた妹の奴なんか、「え?お兄ちゃんが人前で歌を歌うのなんて初めて見た!」とか言っていたが、別にいいだろう。今日はおじいさんたちのために歌っているんだし。


 そんな感じで歌で宴を盛り上げている中、皆の食欲もすごいものだった。


「ねえ。ヴィクトリアお姉さん。これは何のお肉ですか?」

「そっちのは海牛という海底王国で飼われている牛さんのお肉ですね。後、こっちのは海ブドウという海底で採れる階層を使ったゼリーですよ。どちらもおいしいんで、妹ちゃんもたくさん食べてください」

「それは珍しいですね」

「とてもおいしそうじゃない。そういう珍しいものなら、この機会にたくさん食べちゃおっと」


 俺の妹のやつとその仲間の子たちは、ヴィクトリアから料理の説明を聞くと、ここぞとばかりに食べていたし、他の嫁たちや子供たちも。


「今日のケーキはヴィクトリアちゃんが焼いたんだって?スポンジがフワフワでとてもおいしいよ」

「ヴィクトリアお姉ちゃんが焼いてくれたハンバーグは美味しいな」


 と、大喜びで食べていた。

 そんな中、ヴィクトリアは珍しく自分の分を食べるのはそこそこにして、おじいさんとセイレーンの世話を焼くのに忙しそうだ。


「お姉ちゃん。ケーキを切り分けましょうか?」

「ええ、ヴィクトリア、頼むわ」

「おじい様。今日はワタクシがお肉を食べさせてあげますね。あ~んしてください」

「あ~ん」


 そんな感じで一生懸命世話をしていた。

 多分今回おじいさんやセイレーンにはたくさん世話になったから、その恩を少しでも返そうとしてヴィクトリアなりに頑張っているのだと思う。

 その姿はとても慈愛に満ちていてまるで女神のようで、いやまあ本物の女神ではあるのだが、とてもかわいらしかった。


 そして、俺はこういう女性を嫁さんにできたことを誇りに思うのだった。

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