第556話~ナウル火山の遺跡 第六階層 煮えたぎる溶岩の世界 後編 おじいさん、二体目がいるなんて聞いていないですよ!~
溶岩エリアの転移魔法陣の島へと移動したら氷龍が現れた。
突然の『氷龍』の登場に俺たちが驚いていると、ヴィクトリアのおじいさんが説明してくれた。
「ようやく現れたようだな。この階層のボス『氷龍』だ。まあまあ強い相手だから、心してかかるがよい」
「やっぱりあいつはここのボスですか。ていうか、溶岩エリアに『氷龍』って、あまりにも場違いな気がするんですが?」
「そうかな?溶岩のエリアを支配するのが『氷龍』って、ミスマッチな感じがして逆に良いと思わぬか?」
「そうですかね?」
「それにこの熱いエリアを潜り抜けてきた者たちを極寒の氷でお出迎えるのも乙なものだろう?ということで、頑張れ!」
「しょうがないですね。まあ、やりますか」
こんな風に、おじいさんとの会話ではそんなに役立つ情報は得られなかったが、まあ、いいや。目の前の『氷龍』がここのボスだとわかっただけでも収穫だし。
さて、さっさと『氷龍』を倒してしまおう。
★★★
「『極大化 精霊召喚 炎の精霊』。さあ、炎の精霊よ!ワタクシたちの準備が調うまで『氷龍』を足止めしておくのです!」
そうやってヴィクトリアの炎の精霊が足止めをしてくれている間に準備を調える。
「『炎属性付与』。『氷属性耐性付与』」
まずはそんな感じでリネットとネイアの武器防具に氷龍対策の属性を持たせる。
「『極大化 火槍』」
「『極大化 鬼火』」
「『極大化 火球』」
そして、エリカ、銀、ホルスターが炎の魔法の用意をして準備完了だ。
さあ、氷龍よ!一気に決着をつけてやる!
★★★
準備が調った俺たちは一気に決着をつけに行く。
「ホルスターと銀ちゃん。私に合わせて魔法を放ちなさい。行きますよ……えい!」
「「えい!」」
まずはエリカたち三人が氷龍に向かって、一斉に魔法を放つ。
それに対して、氷龍も氷のブレスで迎撃する。
「ブオオオオオ」
と、すさまじいブレスが三人の魔法に向かって行く。
炎と氷。相反する属性の魔法がぶつかり合って、ドゴーンとすさまじい轟音が周囲に響き、爆発した周囲を大量の水蒸気が覆い、一時的に視界が悪くなる。
その隙を縫ってリネットとネイアが氷龍へと近づいて行く。
水蒸気による視界悪化のせいで、氷龍は二人の接近に気づかず、十分な距離まで二人は近づくことができた。
そして。
「『フルバースト 飛翔脳天撃』」
「『武神昇天流奥義 フルバースト 龍殺飛翔撃』」
氷龍に対して思い切り必殺技をぶつける。
「ピギャー」
二人の必殺技をもろにその身に受けた氷龍は、体から鮮血を吹き出すと、苦しいのか、地面に落下し、その場でのたうち回る。
よし!とどめだ!
そう思った俺は、上空へ飛びあがると、そこから必殺剣を放とうと構える。
「『フルバースト 究極……』」
そして、いざ技を放とうとした時、再び異変が起きる。
うん?影?
俺の周囲に再び黒い影が差したのだった。
危ない!
そう感じた俺は急いで避難する。
すると、今俺がいた場所をゴオーーという音と共に炎のブレスが通過する。
俺の傷場所を通過した炎のブレスはそのまま近くに命中し、ドカーーンという轟音と共に壁の一部をきれいに吹き飛ばしてしまった。
「何事だ!」
事態の急展開を怪訝に思った俺が炎のブレスが飛んできた方を見ると。
「炎の龍?」
そこには炎の龍。火炎龍がいた。
★★★
事態の急展開に、俺は大急ぎでヴィクトリアのおじいさんに説明を求めた。
「おじいさん!火炎龍がいるなんて聞いていませんよ!それにボスが二体いるってことも!」
それに対して、おじいさんは特に謝ったりすることもなく、平然とこう答えるのだった。
「ここは溶岩のエリアだろ?炎を使う魔物がボスなのは当然であろう。それにボスが一体だとは一言も言っていないぞ。ボスが一体だと思い込んで、氷龍に集中し過ぎたお前たちが悪い。まあ、これも私が用意した試練なのだから頑張って突破しなさい」
「むう」
これはおじいさんの言うことの方が正論だったので、俺は何も言い返せなかった。
まあ、元々こういう試練だというのなら仕方ない。
気持ちを切り替えて行こう。
俺は仲間に指示を出す。
「エリカ!お前が指揮して弱っている氷龍にとどめを刺せ!その間に俺が火炎龍を倒す!」
「はい!旦那様!」
こうして指示を出し終えた俺は、単身火炎龍に向かって行った。
★★★
エリカたちが氷龍に対応している間、俺は一人火炎龍と戦った。
「『重力操作』」
俺は魔法で空を飛び回りながら、火炎龍と相対している。
なぜ不利な空中で戦っているのか?
そう思われるかもしれないが、これには理由がある。
「万が一エリカたちに炎のブレスが飛んで行って、エリカたちに被害が出るのは嫌だからな」
そう。エリカたちの方に炎のブレスがトンで行かないよううまい具合に飛んでいるのだった。
まあ、一応ヴィクトリアが『防御結界』の魔法で防御しているので、ブレスが飛んで行っても大丈夫だろうが、万が一ということもある。
そこでエリカたちの方へ炎のブレスが飛んで行かないように注意しつつ、今のところは火炎龍の隙を伺いつつ、空中を飛び回っているのであった。
★★★
しばらく空中を飛んでいるうちに待っていたチャンスが来た。
「ブオオオオオ」
火炎龍が魔力を口に集中し始める。
これはこまごまとした炎のブレスでは俺にダメージを与えられないと気付いた火炎龍が、特大の炎のブレスを放つために力を集めているのだ。
この分なら、この転移魔法陣がある島を吹き飛ばすくらいの威力の炎のブレスを放つことができると思う。
こう言うと一見窮地なように見えるかもしれないが、これは逆に攻撃のチャンスでもあるのだ。
何せそれだけの炎のブレスを放つにはかなりの魔力を集中させなければならないわけで、当然時間がかかる。
その間に俺も準備させてもらう。
俺は手に魔力を集中させる。
★★★
「『神化 天凍』」
「『神化 天風』」
「『神化 魔法合成』。『神化 天凍』と『神化 天風』の合成魔法『氷刃の嵐』」
火炎龍が特大の炎ブレスの準備をしている間に、俺も合成魔法『氷刃の嵐』の準備を終えてしまう。
その時、火炎龍もちょうど特大の炎ブレスの準備が終わったようで。
「ゴオオオオオオオーーーーー」
と、俺めがけて特大の炎のブレスを放ってきた。
だが、一歩遅かったな。俺の方も準備は終わっている。
「『氷刃の嵐』」
俺は準備していた魔法を解き放った。
★★★
火炎龍の特大炎ブレスと俺の魔法が激突する。
パチーンというすさまじい音を出しながら、両者の攻撃がせめぎ合いを始める。
炎と氷がせめぎ合ううちに先程と同じように水蒸気が生じ、視界が不良となって行く。
このまま先程のように両者の攻撃が相殺されるのか?
俺がそう思っていると、状況に変化が起きた。
ドゴーンというものすごい音と共に俺の魔法が火炎龍の炎ブレスを突き破ったのだ。
「行け~!」
俺は歓喜の声を上げながら、魔法の行く末を見守る。
俺の魔法はどんどん火炎龍へと迫って行き、
「ギャオオオオ」
無数の氷の刃が火炎龍を切り裂き、火炎龍が全身血まみれになり絶叫をあげる。
「今だ!」
俺の魔法をまともに食らってしまい、動きが一気に鈍くなった火炎龍にとどめを刺しに行く。
一気に火炎龍の間近まで接近すると、
「『フルバースト 一点突破』」
と、必殺剣で一気に火炎龍の心臓を一突きにしてしまう。
「グヘッ」
心臓を貫かれた火炎龍はひとたまりもなく、最後にうめき声を発すると、そのまま息絶えた。
「エリカたちは?」
火炎龍を倒した俺は、エリカたちのことが気になってエリカたちの方を見る。
すると。
「旦那様、やりました!」
エリカたちも氷龍を仕留めたところだった。
これでこの階層のボスを二体とも倒したことになる。
何とかこの階層の試練もクリアできたようだった。
★★★
火炎龍と氷龍を倒した俺たちは、後の売却用に二体の遺骸を回収すると、おじいさんの話だとこの二体は素材として高く売れるらしかった、転移魔法陣へと入って行った。
俺達が転移魔法陣へ入ると同時に転移魔法陣が光り輝き始め、俺たちを次の階層へと導いてくれる。
さて、次はどんな階層なのだろうか?




