第552話~ナウル火山の遺跡 第四階層 滅びかけの世界 後編 抵抗し続ける人々の意思に希望を見た~
町へは一時間ほどで着いた。
道中魔物に襲われた以外は特にイベントもなかったが、その魔物との戦闘さえ。
「またスケルトンか」
出てきたのはさっきと同じような弱いアンデッドばかりだったので。
「『天火』」
俺が魔法を使えば一瞬で決着がついてしまい、大したことにはならなかった。
そうこうしているうちに町に着いた。
町は頑丈な城壁に囲まれた立派な町だった。
前回町ができ始めた頃に見た町より文明が大分進歩して、その結果生まれた町という感じだった。
こんな頑丈な城壁に囲まれた立派な町が残っているのなら、まだ魔物たちにも対抗できるだろう。
俺達は絶望にさいなまれる人々の間にもまだ一筋の光が残っていることに心底ホッとした。
それで、町の門にいた軍の幹部らしき人物に事情を話すと救助した人たちは無事受け入れてもらえるようだった。
「今、この町は魔物との激しい戦闘が繰り返し行われていてね。全然人手が足りないんだ。戦闘の度に人員に損耗が出るし、城壁の修繕にもたくさんの人出がいる。だから新しい人は大歓迎だ」
幹部の話だとそういうことらしかった。
こんな荒廃した世界だから町によそ者を受け入れる余力が無くて、もしかしたら助けた人たちが受け入れてもらえないかもと心配していた俺としては、ホッと一安心できたのであった。
さらに幹部はこんなことも言った。
「我々としてはこのまま魔物の攻撃をはね返し続け、いずれは魔物をこの辺りから駆逐したいと考ええいるんだ」
「反撃を考えているのですか?」
「そうだ!そのために今は力を蓄えているのだ」
何という事だろうか、と俺は思った。
この絶望的な状況の中でも人々は希望を決して捨てず、必死に魔物たちに抗おうとしている。
町の外見だけでなく人々の心の中にもまだ希望はちゃんと残っていた。
そのことに勇気づけられる思いだった。
同時にこの人たちに少しでも協力してあげたいなと思った俺は、こう申し出てみた。
「武器とか食料は足りているのですか?」
「食料は城壁内に農地を作ってそこで生産しているので割と余裕があるのだが、戦闘が激しくて武器の消耗が激しくて不足しているんだ」
「それでしたら、俺たちに使っていない武器があるので是非提供させてください」
「本当か?もし協力してくれるのならありがたい」
よほど武器不足に困っているのだろう。幹部は俺の申し出を遠慮なく受け入れてくれた。
俺はヴィクトリアに指示を出す。
「ヴィクトリア。売却用に取っておいた武器があるだろう。あれを出せ」
「ラジャーです」
俺の指示でヴィクトリアが収納リングから武器を取り出し、門から少し入ったところにある広場に並べて行く。
「これは凄い量だ」
幹部がそう驚くくらいに提供した武器の数は多かった。
全部で五百人分くらいはあると思う。
それを見た幹部はすぐさま物品部の人間とさらには軍の司令官まで呼んで来た。
「ほれ、これらの品をすぐに前線の部隊に送れ!」
物品係はそうやってすぐに武器を前線に提供するため行動を起こし、司令官と幹部は俺達に口々にお礼を言って来た。
「我が町のためにたくさんの武器を提供していただき、本当にありがとうございます」
「これだけの武器があれば我々は十分に魔物に対抗できます。ありがとうございます」
「いえ、当然のことをしたまでです」
二人はそう言いながら、何度も頭を下げて俺たちにお礼を言って来たのだった。
そんな二人を見て、これでこの町の状況が多少でもよくなるといいな、と願うのだった。
★★★
武器を引き渡した俺たちは、すぐに町を離れた。
「それでは、俺たちは旅を急ぎますので」
「お気をつけて」
軍の幹部や司令官、助けた人々に見送られながら、再び遺跡へと向かう。
向かうのだが、その前に助けた人たちの中から女の子が寄って来て、俺たちにこう言ったのだった。
「お兄ちゃんたち、ありがとう。ご飯とってもおいしかったよ。それと動物さんたちと遊ばせてくれて、ありがとうね。とても楽しかったよ。だから、これをお礼にあげるね」
そう言いながら小さな紙袋をくれた。
何だろうと思って中を見て見ると。
「ヒマワリの種?」
ヒマワリの種だった。
「うん、そうだよ。とてもきれいな花が咲くんだよ。だからお兄ちゃんたちがどこかに植えて育ててくれたら嬉しいな」
「ああ、そうだな。きっと育てるよ」
こうして俺たちは女の子の心のこもった贈り物を受け取り、今度こそ遺跡に向かうのだった。
★★★
ところで、このヒマワリの種。実は秘密があった。
ヴィクトリアのおじいさんの話によると。
「その種類のヒマワリ。この時代の混乱のせいで絶滅して、お前たちの時代にはもうない物だぞ」
ということらしい。
「それはすごいものをもらいましたね。これは帰ったらぜひ庭に植えて育てなければ!」
その話を聞いたエリカたちが張り切っている。
まあ、エリカたちは庭に花を植えて育てるのが趣味だからな。
珍しい花が手に入って大喜びなのだと思う。
そんな嫁たちを見て、俺は可愛いなと思うのであった。
★★★
さて、町を離れ、遺跡へ向かう道中もやはり頻繁に魔物が出た。
「ふ~ん。今度はスケルトンメイジの部隊か。リネット、やってしまえ!」
「任せて!」
しかし、弱い魔物しか出てこなかったので、難なく切り抜けて移動することができた。
そして、数時間後。
「ようやく転移魔法陣に着いたか」
やっと目的地の遺跡へと到着した。
早速遺跡の中へ入ると。
「やった!転移魔法陣だ!」
すぐに次の階層へ行くための転移魔法陣が見つかった。
「さあ、それじゃあ次へ行くぞ!」
ということで、順番に転移魔法陣に入って行く。
転移魔法陣に入りながら俺は思った。
荒廃した世界だったが、その中でも人々が必死に生きよとする姿を見られたし、こんな世界でも無邪気な子供たちがいて、俺たちに安らぎを与えてくれた。
そういう人たちを見ていると、人間ってこんな世界でも最後まで希望を捨てない生き物なんだなと、人間に対して希望を持てて、とても勇気づけられたのだった。
だから、この世界から出る前にここの人たちのためにこう願っておこうと思う。
願わくば、この世界の人たちに幸あらんことを!




