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第551話~ナウル火山の遺跡 第四階層 滅びかけの世界 前編 魔物に襲われている人々を救助せよ!~

 第三階層の転移魔法陣をくぐった先は、これまでの穏やかで牧歌的な世界とは全く異なる世界だった。

 空は常に雲で覆われた灰色で、草木は枯れ、動物たちの気配もほとんど感じられない。

 聞こえくるるのは魔物たちの雄たけびと人間たちの悲痛な悲鳴だけ。そんな世界だった。


「何だ!これは!」

「旦那様、これは酷いですね」

「リネットさん、私、こんなひどい世界見たくないです」

「アタシもだよ。ネイアちゃん」

「銀姉ちゃん、僕何だか寒気がするよ」

「銀も怖いです」

「ワタクシ、いくつか世界を見てきましたが、こんなひどいことになっている世界は初めて見ました」


 と、俺の嫁や子供たちはこの世界について良いように言わなかった。


 冷静だったのは、ここがどんな場所かあらかじめ知っているセイレーンとヴィクトリアのおじいさんくらいだった。

 それで、そのおじいさんがこの状況について説明してくれた。


「ここは前回、私のオヤジが復活しかけた時の世界。私のオヤジが復活しそうになったせいで、地脈が乱れ、世界の気候がおかしくなり、生物はどんどん死んでいき、そして大量に増えた魔物によって人間が滅びかけている世界だ」


★★★


 プラトゥーンが復活しそうになったので世界が滅びかけている。

 それがこの階層の世界の現状の様だった。


 おじいさんはそこからさらに詳しい話をしてくれた。


「ここは先程までいた第三階層の世界から数百年が経過した世界だ。あれから随分文明が発達し、人間たちはさらなる豊かな暮らしを手に入れた。手に入れたのだが……それは一瞬の間に崩れ去ってしまった」

「それもこれもプラトゥーンが復活しかけているからですか?」

「そういうことだ。そして、過去に起こったこの状況も、お前たちの行動次第では現代でも現実になる恐れがある。そのことを忘れないことだな」


 そうだった。おじいさんの言う通りだ。

 この過去の世界での出来事は俺たちがいる現代でも起こる可能性があるのだった。

 その可能性を回避するためにも俺たちは頑張らないといけないのだった。


 そのことを改めておじいさんに教えてもらった俺は、必ずプラトゥーンの復活するという決意を表すかのように、短く「はい」と答えた。

 それを見たおじいさんは満足したようで。


「うむ。理解できたのならそれでよい。それでこそわざわざこの階層を用意した甲斐があるというものだ。これで十分にこの階層の目的は果たせただろう。それでは、私が次の階へ行くための転移魔法陣へと案内してやろう」


 と、転移魔法陣へと連れて行ってくれることになったのだった。


★★★


 おじいさんの話によると、転移魔法陣の遺跡はそんなに遠くはないらしかった。

 街道を歩いて四、五時間ほどの距離だという話だ。


 ということで頑張って歩いて行くことにする。

 歩いていると、この世界の悲惨さがより深く分かってきた。


「旦那様。ここにはかつて森があったのでしょうか?炭化した木の破片のような物が大量に落ちていますよ」

「ホルスト君、こっちにはたくさんの動物の骨が散乱しているよ。多分魔物にやられたんだろうね」


 と、街道沿いには思わず目をそむけたくなるような光景が広がっていたのだった。

 ただ目をそむけたいからと言っても道はここしかないのだから、俺たちは我慢して進んだのだった。


 そうやってしばらく進んでいると。


「きゃ~。誰か~。助けて~」


 街道の少し先の方から助けを求める少女の悲痛な叫び声が聞こえてきたのだった。


 これは助けなければ!

 そう思った俺は仲間たちに指示を出す。


「行くぞ!お前ら」

「はい!」


 指示を出すと同時に、俺は脱兎のごとく駆け出していた。


★★★


 現場に急行すると、十人程の人たちが三十匹ほどの魔物たちに襲われていた。

 魔物はゾンビ、スケルトン、スケルトンメイジといった弱いアンデッドの軍団で大した相手ではなかったが、人間たちの状況が最悪だった。


「大人の男性が三人に女性が三人。それに子供が四人ですか。この中で戦力になるのは男性三人だけですね。その男性三人にしても剣をただ振り回しているだけで、満足に剣を使えていません。それに剣自体も碌に手入れがされていなくてさび付いています。これではまともに戦えないでしょう」


 そうネイアが分析した通り、ここにいる人々はまともに戦えるような状態ではなかったのだ。


 このままではこの人たちは皆殺しにされる!

 そう感じた俺は、


「皆、俺に続け!」


 と、仲間に声を掛けつつ、魔物の軍団に突撃して行くのだった。


★★★


 戦闘はものの一分も経たないうちに終わった。


「うりゃああ」

「おりゃあああ」

「『火球』」

「『聖光』」


 元々弱いアンデッドばかりだったので、俺たちがそうやって剣や魔法で攻撃を仕掛ければ、あっさりと片が付いたのだった。

 戦闘終了後は負傷者の治療を行った。


「『範囲上級治癒』」


 幸いなことに死者も重傷者もおらず、負傷者たちにヴィクトリアが魔法を使うと、あっさりと全員の傷が癒えたのだった。

 ただ傷は癒えたが、心に恐怖は残っているらしく、特に子供たちが怯えていた。


「怖かったよ~」

「もう魔物は嫌だよ~」


 と言いながら、体を震えさせていた。

 中でも一人だけいた女の子、多分助けを呼んでいた子だと思う、の怯えようがひどく。


「うわああああん」


 と、ただただ泣きわめくばかりだった。。よほど怖かったのだと思う。

 俺はそんな子供たちを慰めるために神獣を呼び出すことにする。


「『神獣召喚 ミー、ネズ吉』」


 と神猫のミーと、白ネズミのネズ吉を呼び子供たちをあやしてもらうことにする。

 この効果は絶大で、子供たちはミーとネズ吉を見ると。


「わーい、ネコさんとネズミさんだ~」


 そうやって怖いのも忘れて、喜んでくれたのだった。

 ミーとネズ吉も状況を察したのか、「ニャー、ニャー」、「チュー、チュー」と、子供たちに精いっぱいの愛想を振りまいてくれていた。

 この滅びかけの世界に子供たちの笑顔が満ち溢れ、しばらくの間場の空気が平和な世界のそれへと変化したのだった。


 その後しばらく、ミーたちは子供たちの相手をした後、「またね」と言って帰って行った。

 短い間ではあったが、子供たちも久々に楽しむことができ、子供らしいとても可愛らしい笑顔を浮かべるようになった。

 これで子供たちの心のケアができたと思うので、俺も一安心だ。


 その後は、この人たちに食事を提供した。


「もう何日も満足に食べていないのです。何か食べ物を分けていただけないでしょうか?」


 そうお願いされたので、


「どうぞお食べください」


と、食べ物をあげたのだった。

 久しぶりの彼らの食欲はすさまじく。


「はぐぐぐ」

「むしゃ、むしゃ、むしゃ」


 と、激しい勢いで食べるのだった。


 それを見た俺は、「この人たちよほどお腹が空いていたんだな。助けてあげられてよかった」と、食べ物をあげたのだった。心から思うのだった。


★★★


 そうやって人々を救出した後は人々を近くの町まで送ってあげることにした。

 俺達が助けた人々から聞いた話だと、この世界にもまだまだ健在な町が存在し、それらの町に人々が集まって頑強に魔物たちと戦っているらしかった。


 今にも滅びそうな世界にもまだ希望はまだ残っている!

 まだ人が暮らせている町という希望の種が残っていると聞いて、俺たちは何だか救われるような思いだった。


 俺達が助けた人々はそういった町へ向かう道中で魔物に襲われたということのようだった。

 それで、その町は転移魔法陣の遺跡へ行く途中にあるらしく、ついでなのでそこへ人々を送って行くことになったのだった。


「戦士様。よろしくお願いします」

「ああ、任せておけ」


 ということで、俺たちは人々を連れて町へと向かったのだった。

 この人々を無事町へと送り届け、この世界に平和を取り戻す一助とならんことを願って。

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