第547話~ナウル火山の遺跡 第二階層 農耕が始まった頃の村 後編 悪魔が遺した宝物~
再び巨大な悪魔グレートデビルが俺たちの前に現れた。
今回のグレートデビルは前回の時よりも巨大な力を有しているように感じられた。
なので、俺は警戒のレベルを上昇させて備えたのだが、同時になぜこいつがここに?という疑問もわいてくるのだった。
そんな俺の気持ちを見透かしたかのようにおじいさんがグレートデビルについて話してくれる。
「ほほう。さすがはオヤジの眷属の悪魔は強そうだな」
「え?オヤジの眷属?グレートデビルって、プラトゥーンの眷属なんですか?でも、プラトゥーンって一応神様ですよね。何で悪魔が眷属なんですか?」
「それはグレートデビルが元々オヤジの配下の大天使だったからだよ」
「え?グレートデビルって元天使なんですか?それが何で悪魔なんかに?」
「何だ知らんのか。悪魔とは堕天した天使の成れの果てなのだ。こいつもオヤジが邪に染まったのに応じて堕天して悪魔になったのさ。そして、こいつはオヤジと一緒に封印されていたのを出て来たところなのだ。ということで、今のこいつは長い眠りから覚めたばかりで力が溢れている。お前たちならそれほど苦労せずに勝てると思うが、くれぐれも注意することだ」
そうだったのか。グレートデビルはプラトゥーンの眷属で、しかも今目の前にいるグレートデビルは目覚めたばかりで力が溢れているのか。
俺はグレートデビルが強い理由が理解できて納得した。
……って、そんなことを考えている場合ではなかったな。
「来るぞ!」
おじいさんの説明が終わるのと同じくらいのタイミングで、グレートデビルが襲い掛かって来たのだった。
★★★
グレートデビルとの戦いは壮絶を極めた。
強さのランク的には四魔獣よりも大分落ちるはずなのだが、それでも力に溢れたグレートデビルは強力だった。
「『黒雷』」
グレートデビルは、俺たちに近づきつつ『黒雷』の魔法を放ってきた。
この魔法には見覚えがある。前にグレートデビルと戦った時に奴が使ってきた魔法だ。
確か闇のオーラをまとった雷の魔法だ。
以前の時は、ヴィクトリアの『神意召喚』を使った上で、『天雷』の魔法で何とか相殺したものだったが、今の俺はあの時よりもはるかに強い。
「『極大化 天雷』」
俺は奴の『黒雷』に対して『天雷』の魔法を放つ。
バリバリと音を立ててお互いの雷が消滅する。
今回は『神意召喚』無しでも前回と同じことができた。
これにより俺は自分が強くなったのだと実感した。
それはともかくグレートデビルの攻撃は続く。
「キシャアアア!!!」
手の爪を長く伸ばして、急接近してくる。
「俺に任せろ!お前たちは下がっていろ!」
俺は仲間を下がらせると、一人グレートデビルに立ち向かっていく。
そんな俺にグレートデビルが爪を振り下ろしてきて、それに俺は剣で対抗する。
キンギンキンギンキンギン。
爪と剣。固い物同士がぶつかり合う乾いた音が周囲に響く。
こういうと一見互角のように聞こえるかもしれないが、実は俺の方が優勢だ。
奴の爪の動きは、力に溢れているというだけあって、前回よりはるかに速く、威力もけた違いに感じられた。
だが、それよりも俺の成長が上回っていた。
ビシ、ビシ。
双方打ち合ううちにグレートデビルの爪にひびが入って行く。俺の剣技に対抗しきれず同じ場所を何度も強打され、爪が傷んだのだ。
そして、そのひびはどんどん大きく広がって行き。
「やった!グレートデビルの爪を粉砕してやったぞ!」
とうとうグレートデビルの爪をボコンと粉々に粉砕することに成功したのだった。
これで魔法と剣技。双方でグレートデビルを上回ったことが証明できたわけだった。
ただ、これで戦いは終わったわけではない。
爪を破壊されたグレートデビルは後方へ大きく下がると、両手を上にあげ、そこに魔力を集中させる。
たちまちグレートデビルの手に魔力が集まって来る。
俺はこれも知っている。
普通にやったのでは俺に勝てないと判断したグレートデビルは奴の最強魔法を使うつもりなのだ。
そうと分かった以上俺も手を打つ。
剣をいったん収め、俺も魔力を集中させる。
★★★
グレートデビルが最強魔法の準備をし始めたので、俺も対抗するための魔法を準備する。
「『神化 天罰』」
「『神化 天凍』」
「『神化 天土』」
そうやって魔法を三つ用意し、グレートデビルの魔法に備える。
俺が準備しているうちにグレートデビルの準備が終わったようで、手を前に出し、魔法を放ってくる。
「出でよ。我が眷属たる黒龍よ。我が敵をその地獄の火炎で焼き尽くせ。『黒龍火炎陣』」
『黒龍火炎陣』。炎をまとった闇のドラゴンを呼び出してすべてを焼き尽くすグレートデビルの切り札だ。
グレートデビルが魔法を発動させるなり、巨大な黒龍が出現し、俺たちに襲い掛かって来る。
前回よりもグレートデビルの力が強いせいか、黒龍もより大きい気がする。
だが、関係ない。俺の方も準備ができた。
「『神化 魔法合成』。『神化 天罰』と『神化 天凍』と『神化 天土』の合成魔法『神化 聖氷のダイアモンドスピア』」
俺は聖属性と氷属性を宿したダイアモンドの槍を黒龍目掛けてぶっ放す。
「ギャオオオオン」
そう咆哮をあげながら迫りくる黒龍に立ち向かう槍。その結末は……。
「ギャッ」
黒龍が短い悲鳴を残して真正面から俺の槍に貫かれる。俺の大勝利だった。
黒龍を貫いた槍はさらに。
「グホッ」
と、後ろに控えていたグレートデビルをも貫き、グレートデビルを地面に縫い付けてしまう。
地面に縫い付けられて身動きが取れなくなったグレートデビルに俺はとどめを刺しに行く。
「『フルバースト 五芒退魔陣』」
俺の必殺剣はまっすぐグレートデビルに迫って行き、
「グギャアアア」
グレートデビルを完全に消滅させたのだった。
俺たちの大勝利だった。
★★★
さて、グレートデビルも倒せたことだし、さっさと次の階層へ行こうとすると、ヴィクトリアが何かが地面に落ちているのを発見した。
「ホルストさん。こんなのが落ちていました」
「何だそれは?……爪?」
それは先程俺が粉砕したグレートデビルの爪だった。
どうやらグレートデビルの本体は消滅したが、爪だけは残ったようだった。
それで、その爪を見たおじいさんが近づいて来て、こう言うのだった。
「ほほう。良い物を手に入れたではないか」
「これはそんなに良い物なのですか?」
「うむ。グレートデビルは天使が堕天した存在だと言ったのを覚えているか?」
「はい」
「グレートデビルの爪はそのままの状態では穢れたままで『悪魔の爪』として使えないが、浄化すると『天使の爪』となり、神気を帯びた貴重な素材となるのだ」
「そうなのですか?」
「そうだ。ヴィクトリアなら浄化できるだろうから、浄化してもらってお前たちが使うと良い。宝玉にでも加工して、お前の剣の柄に嵌めたり、杖に装着すれば魔法の威力が上がるだろう」
まじか!そいつはすごいや!これでさらにパーティーが強化できる!
と、単純に俺は思った。
ということで、すぐにヴィクトリアにお願いする。
「ヴィクトリア。この爪の浄化をお願いしても大丈夫か?」
「ラジャーです!ただ、短時間で浄化できないので、少し待ってくださいね」
そう言うと、ヴィクトリアは収納リングに『悪魔の爪』を収納するのだった。
これで後はヴィクトリアが忘れずに浄化してくれるのを待つのみだ。
本当に楽しみだ。
そう思いつつ、俺たちは転移魔法陣へ入り、次の階層へと向かうのだった。




