第544話~ナウル火山の遺跡 第一階層 原初の森 後編 原初の森に潜む邪悪な意思~
俺達は原初の森の中を道を造ったり、薬草を取りながら森を進んだ。その途中、何度か当然のように魔物が襲って来た。
襲ってきたのはいずれの場合もゴーストやレイス、レギオンなどの実体のないアンデッドたちだった。
「敵はゴーストにレイスにレギオンですか。邪悪な意思を持ったアンデッド共ですね。ここはワタクシの出番ですね。『極大化 聖光』」
ということで、ヴィクトリアが自分の出番だとばかりに張り切り始めた。
道づくりの手を止め、魔法で攻撃し始める。
ただ、そんなヴィクトリアを見て俺はちょっと心配になる。
前にヴィクトリアが魔力切れで倒れたことを思い出したからだ。
だから、俺はヴィクトリアたちにこう指示を出す。
「ヴィクトリア、ここはなるべく魔力を温存しておけ。だからレギオンなんかの大物を狙え」
「ラジャーです」
「リネットとネイアはエリカに武器に『聖属性付与』をかけてもらって、ゴーストやレイスを攻撃だ」
「「了解!」」
「エリカとホルスターも『光の矢』で援護しろ」
「うん」
と、分担を決めて攻撃したのだった。
五分後、魔物たちの群れは全滅し、俺たちは移動を再開した。
★★★
しかし、ここは迷宮という訳でもないのに何でここには実体のないアンデッドがこうも多いのだろうか。
戦闘が終わった後、そんなことを思った俺は何となくヴィクトリアに聞いてみるが、ヴィクトリアから返ってきた返事はというと。
「さあ?何ででしょうね」
という、はなはだ頼りないものだった。
まあ、いつものヴィクトリアらしいと言えばそれまでなのだが、もうちょっと何か言えよ、とは思った。
俺がヴィクトリアに対してがっかりした思いを感じていると、おじいさんが話しかけてきた。
「ふむ、どうやらこのエリアにどうしてアンデッドが多いか気になっているようだな。知りたいか?」
どうやらおじいさんはこの場所にアンデッドがいる理由を教えてくれるようだった。
その理由が気になっていた俺の返事はもちろんイエスだった。
「ここにアンデッド、しかも実体のないようなのばかりが多い理由。それはここができたばかりの世界だからだ」
「そうなのですか?」
「そうだ。できたばかりの世界はまだ世界の境界があいまいなので、色々な世界から邪悪な意思が集まってきやすいのだ。それに加えて・……」
「それに加えて?」
「この世界には私のオヤジが封印されているからな。その邪悪な意思に導かれて、普通の世界よりもそういった連中がこの世界へと集まって来ているのだよ」
「なるほど、そういうことですか」
俺はおじいさんの説明に納得した。
つまりは、世界ができたてで防御能力が弱い上に、プラスプラトゥーンの邪悪な意思に導かれて、という理由で実体のない系のアンデッドのような魔物が多いらしかった。
まあ、それが分かったところで何が変わるわけでもないのだが、すっきりしたことは確かだ。
おじいさんの話を聞いてすっきりしたことだし、頑張って道づくりを再開しようと思う。
★★★
結局、目的の転移魔法陣のある場所まで移動するのに、途中一泊野営したのを含めて丸一日以上かかった。
とある丘に道を造営し、丘を乗り越えたところで転移魔法陣がある遺跡が見えてきた。
「あそこに辿り着けばこの階層はクリアですね!」
遺跡を発見した途端ヴィクトリアの声のトーンが上がる。
まあ、この階層、道を造って進むのは大変だったからな。その労働から解放されるとあってヴィクトリアも嬉しいのだと思う。
実を言うと俺も嬉しい。
道を造る作業って結構体力も魔力も使うからな。
それがようやく終わるとなれば、ヴィクトリアでなくとも嬉しいのだった。
ということで、もうひと踏ん張り、頑張ろうと思う。
★★★
遺跡の異変に気がついたのは、遺跡に大分近づいた時だった。
「ホルスト君。何だか遺跡の方から物凄く邪悪な気配を感じるよ。気を付けて!」
遺跡まであと数十メートルという場所まで来たところで、邪悪な気配に気がついたリネットがそう警告を発する。
それを受けて俺たちは武器を構えて次に来たる事態に備える。
数秒後。
「来たぞ!」
遺跡の中から黒い霧が現れたかと思うと、俺たちに襲い掛かって来たのだった。
★★★
転移魔法陣の遺跡から黒い霧が出て来たかと思うと、俺たちに襲い掛かって来た。
黒い霧は出てくるなり、『闇のオーラ』や『闇の矢』、『黒炎』と言ったような闇属性の攻撃を放ってくる。
「『防御結界』」
それらの攻撃はすべてヴィクトリアが魔法で防いでくれたが、普通に食らっていたらやばい攻撃のオンパレードである。
そうやってヴィクトリアが防御してくれるのを見ながら、俺は黒い霧の魔物について考える。
黒い霧の魔物か。
俺達はかつてああいう魔物と戦った経験がある。
確か『月のクレーター』だったかな?
あそこで戦った『漆黒の霧』とかいう化け物に気配がそっくりだった。
そう思った俺はヴィクトリアのおじいさんに聞いてみた。
「ヴィクトリアのおじいさん!あいつって、前に俺たちが戦った『漆黒の霧』とかいう化け物にそっくりなんですが、確か『闇の小精霊』の集合体だとかいう。あいつもそうなんじゃないんですか?」
「『漆黒の霧』?まあ、あいつは確かにあれと似たような存在だな。ただあいつは『闇の小精霊』の集合体ではないな。ほら、昨日言っただろう。この世界には邪悪な意思を持った存在が集まって来ているって。あいつはそういった邪悪な意思の集合体だよ。まあ言うなれば、『漆黒の霧 邪悪な意思.Ver』と言ったところだ」
なるほど、『漆黒の霧 邪悪な意思.Ver』ねえ。そいつは参考になるな。ありがとう、おじいさん。
そう感じた俺は、心の中でおじいさんにお礼を言うと、怪物と向かい合うのだった。
★★★
敵の情報を得た俺たちは戦闘を開始する。
まずは全員で聖属性の攻撃してみることにする。
聖属性攻撃なのは敵は邪悪な意思の集合体らしいので、聖属性攻撃ならもしかして通用するかも、そう思ったからだ。
「全員聖属性の攻撃で攻撃しろ!『天罰』」
「『光の矢』」
「ネイアちゃん、聖属性の矢で攻撃だ」
「はい、リネットさん」
と、全員が聖属性の攻撃方法で攻撃する。
しかし。
「チッ、こっちの攻撃は一切通用しないか」
こちらの攻撃は一切通用しなかった。
ただし、これは予想通りだった。いつかの『漆黒の霧』の時も同様だったからだ。
そんな訳で、こちらの通常攻撃が通常では通用しないとわかったことで、俺は次の作戦へと移行する。
★★★
「『神強化』。『神耳』発動」
俺は『漆黒の霧 邪悪な意思.Ver』に対抗するために『神耳』を発動する。
というのも、『漆黒の霧』にはイドと呼ばれる邪悪な意思の集合体の中心である心のような器官があって、そこを破壊しない限り倒せないのだ。
そういった理由で、『神耳』を使ってイドの部位を探っているわけだ。
前もこれでうまく行ったからこれでうまく行くはず!
そう信じて必死にイドを探すと。
「ニ、ニクイ。シネ、シネ、シネ」
そんな『漆黒の霧 邪悪な意思.Ver』の心の声が聞こえてきて、イドの場所の特定に成功する。
「よし!イドの特定ができたぞ!俺が最初にそこを攻撃するから、皆も続け!」
イドの特定ができた俺は全員で一斉に攻撃する。
「『極大化 天罰』」
「『極大化 聖光』」
「『極大化 光の矢』」
「『神激の矢』」
と、全員でイドに攻撃する。すると。
「……」
声なき悲鳴をあげて、『漆黒の霧 邪悪な意思.ver』が細かく揺れ動くと、最後はパーンと大きな音を出して弾けて、消え去ってしまったのだった。
「やったぞ!」
「やりましたね!」
こうして俺たちは『漆黒の霧 邪悪な意思.Ver』を倒すことができたのだった。
★★★
『漆黒の霧 邪悪な意思.Ver』を倒した俺たちは、転移魔法陣の遺跡に侵入した。
すると。
「お、あったぞ。転移魔法陣だ」
すぐに転移魔法陣が見つかった。
これでようやくこの階層もクリアだ。
「さて、行こうか」
そして、俺たちは順番に転移魔法陣へと入り、次の階層へと向かうのだった。
さて、次はどんな階層なのだろうか。




