第542話~ナウル火山の遺跡 入り口の船着き場~
オクトパスエンペラー討伐の祝宴をしてもらった日の翌日。
「それでは、俺たちは出発します。みなさん、お元気で」
「こちらこそ大変お世話になりました。戦士様方にセイレーン様のご加護あらんことを!」
そうやって村人たちと別れの挨拶を交わしてパシフィック村を出た。
潜水艇に乗り込み、海中を進んで行くとパシフィック村が段々と小さくなっていく。
そんな中、村の中央に置かれたオクトパスエンペラーの残骸が目に入った。
昨日、村へ帰還した時、回収したオクトパスエンペラーを村へ引き渡しておいた。
「ありがとうございます。これで憎きオクトパスエンペラーに復讐できます」
俺達にオクトパスエンペラーを渡された村人は物凄く喜んでくれた。
まあ、オクトパスエンペラーのせいでかなり村に被害が出たみたいだから、その復讐ができるとあって、村人は大喜びだったわけだ。
それで引き渡されたオクトパスエンペラーは復讐心に燃える村人たちの手により、細かく切り刻まれたり、燃やされたりしながら、リアルで魚の餌にされたり、見せしめに体の一部を飾り付けられているという訳だった。
これが悪行の報いか。
俺は無残な残骸となり果てたオクトパスエンペラーを見て、そんな感想を抱きつつ、一路『ナウル火山』へと向かうのであった。
★★★
パシフィック村から三日ほどの航海で『ナウル火山』へと到着した。
ナウル火山はトリトンの町から潜水艇で十日ほどの場所に存在する巨大な海底火山だ。
海底の深部から真っすぐ上に伸びた火山で、その高さは三千メートル以上ある。
少し離れた所から火山の様子を眺めるだけでもその巨大さがうかがい知れる。
こんな巨大な火山がもし噴火したら……。
そう考えただけでも恐ろしくなるくらいには巨大な火山だった。
そんな火山にある遺跡に俺たちは今から乗り込んで行くのだった。
★★★
遺跡の入口は火山の中腹にあった。
「こっち。こっちよ」
セイレーンに案内されて、遺跡の入口へと進んで行く。
遺跡の入口は巨大な大理石で造られた立派な構えのものだった。
入り口の扉も、ミスリルかな?、でできた立派なものであり、表面にはセイレーンの紋章がデカデカと彫られていて、神々しいオーラを放っていた。
こういうのを見慣れた俺でさえ、ちょっとした畏怖を感じるほどであった。
で、この門のことをセイレーンが自慢している。
「どう?立派な門でしょう?作る時に気合い入れすぎちゃって、時間が随分とかかったのよね」
「ええ、そうですね。こんな立派な門は見たことが無いですね。さすがはセイレーン様です」
「そんなに褒めてもらえると嬉しいわ」
そうやって門のことを褒めてやると、セイレーンは非常に嬉しそうにしていた。
本当単純な奴だと思うが、こうしておだてておいた方が後で良いことがありそうなので、これで良しとしておく。
さて、それでは早速遺跡の中へと入って行くとしよう。
★★★
遺跡に入るとは言ったものの、この扉、どうやって開けるの?
いざ入ろうとした俺は、そう悩んでしまったが、それに対してセイレーンがすぐにアドバイスをくれた。
「『王家の徽章』と『海竜の徽章』。その二つを持って、扉に『開け』と念じなさい。そうすれば開くわよ」
とのことだったので、早速実行することにする。
「ヴィクトリア。『王家の徽章』と『海竜の徽章』を出してくれ」
「ラジャーです」
まずはヴィクトリアに言って『王家の徽章』と『海竜の徽章』を出させる。
次にそれを手に持ち、扉に向かってこう念じる。
「『ナウル火山の遺跡』の扉よ!ここに海神セイレーンによって認められた者の印である『王家の徽章』と『海竜の徽章』を示さん。我を遺跡の中へ導きたまえ!」
俺がそう念じると同時に入り口の扉が光り始める。
そして。
「おおおお!!扉が開いたぞ!」
その光が止むと同時に扉が開いた。
これで入口への道も開いた。
「さあ、中へ入るぞ!」
俺達はそのまま遺跡の中へと入って行った。
★★★
入り口の扉から入って、水路を通り、遺跡の中の船着き場へとたどり着く。
船着き場は石と石膏できっちりと造られた一流の港のような場所で、王国でも珍しい位の立派な港であった。
そこへ潜水艇を船付けすると、全員が潜水艇から降りる。
「ヴィクトリア、潜水艇を回収しておけ」
「ラジャーです」
潜水艇はヴィクトリアに回収してもらった。
何せ潜水艇は俺たちの大切な財産だからな。
この先何が起こるかわからないし、第一この場所へ戻って来るかもわからないしな。
回収しておくのが最適解というものだろう。
さて、潜水艇も回収したことだし、遺跡の探索を始めるとしよう。
★★★
船着き場を離れてしばらく進むと、また扉があった。
扉にはやはりセイレーンの紋章が描かれていて、厳かな雰囲気を醸し出していた。
その雰囲気に俺は近づきがたさを感じたが、意を決し、扉を押してみる。
すると、あっさりと扉が開いたので、俺たちは中へと入った。
中へ入ると同時に、扉の中の部屋の地面が光っているのが確認できた。
この光っているものには見覚えがある。
「これは……『転移魔法陣』?」
それは転移魔法陣だった。
転移魔法陣。……それは魔法陣の中に入るとどこか別の場所へと転移してしまう魔法陣である。
これがここにあるということは?!
「セイレーン様。この魔法陣はもしかして?」
「ええ、想像通りよ。ここが遺跡の第一階層の入口ね」
やはり遺跡の階層への入口だったか。
そうと知った俺はちょっとだけ警戒する。
今までの経験からするに、遺跡で転移魔法陣から進んだ階層というのは危険な場所が多かった。
ということは、この先も……。
そう考えると、ちょっとだけ気が重くなったが、ここまで来た以上は行かないわけにはいかなかった。
「じゃあ、皆、行こうか」
「はい」
俺は皆を促して、転移魔法陣へと入って行った。
さて、この先、どんな冒険が待っているのだろうか。




