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第540話~生贄を要求する謎の魔物を退治せよ! 前編 生贄になるっていうのに、うちの嫁たち余裕過ぎる!~

 トリトンの町へと戻ってきた俺たちは海底王へと挨拶をするため謁見をした。


「海底王陛下。準備が調いましたので、今から『海底火山の遺跡』へと向かおうと思います」

「そうか。とうとう『ナウル火山の遺跡』へと向かう準備ができたのか。あいわかった。頑張るがよい」


 謁見はこれで終わりだった。

 短いが、気持ちは十分に伝わったと思うのでこれで十分だ。


 謁見を終えた俺たちはそのままトリトンの町の外へと出て。


「ヴィクトリア」

「ラジャーです」


 ヴィクトリアに潜水艇を出させると、それに乗り込む。


「さて、それでは出発するぞ。目的地は『ナウル火山』の近くの『パシフィックの村』だ」


 そして、そのまま潜水艇を発進させ、目的地へと向かう。

 最初の目的地は『パシフィックの村』。『ナウル火山』から一番近い場所にある村だった。


★★★


 『パシフィック村』には一週間ほどで着いた。

 特にイベントのない旅であったが、途中何回か魔物に遭遇したので。


「ホルスターと銀。お前たち二人だけで魔物を倒してみろ」

「「は~い」」


 と、練習がてらホルスターと銀に相手をさせた。

 二人の戦闘レベルは確実に向上していて。


「『電撃』」

「『雷光術』」


 そうやって魔物をあっさりと倒してしまうのだった。

 それを見て俺は、ホルスターたちも大分成長したなと嬉しくなり、


「お前たち、頑張ったな」


と、我が子と銀を抱きしめてやるのだった。


 こんな感じで旅を進めながら俺たちは『パシフィック村』へと到着したのだった。


★★★


 『パシフィック村』はのどかな感じの田舎の村だった。

 トリトンの町より人の数は少なく、土地は広々とした感じだった。

 その中で人々は働き、農作業に牧畜を主産業として暮らしていた。

 それと村の中心部に工房があるらしく、そこで布地や工芸品を制作し大きな町へ卸して現金収入を得ているようだった。


 と、こんな感じでここは至って普通の村な訳であるが、ちょっとだけ違和感を覚えた。

 何だろう?と思い、人々の様子を観察してみる。すると。


「何だか人々の表情が暗いような気がする。何かあったのだろうか?」


 理由はわからないが、人々の表情が暗い気がしたのだった。

 それは俺の嫁たちも思ったようで。


「旦那様、何かあったのでしょうか?」

「気になるよね」

「もし困っていることがあるのなら助けてあげたらどうでしょうか?」

「そうだ!村長さんなら何か事情を知っているかもしれません。訪ねてみませんか?」


 と、嫁たちの間でどんどん話が進んで行き。


「「「「それでは、村長さんを訪ねましょう」」」」


 そうやって話がまとまってしまったので。


「しょうがないな。そういう事なら村長を訪ねてみるか」


 村長の家に行ってみることにしたのである。


★★★


「あなた方が海底王国を危機から救ってくれていると都で噂の『セイレーンの戦士』様ですか。こんな田舎の村にようこそお越しくださいました。私、この村の村長のソロと申す者です」


 村長の家を訪ね海底王から旅立つにあたってもらっていた鑑札を見せると、村長のソロさんは俺たちを歓迎してくれた。


「それで、『セイレーンの戦士』様が何のようでこんな所までいらっしゃったのでしょうか?」

「実は俺たちはこれからこの近くにある『ナウル火山』へと向かう予定でして、その前にここで一泊して行こうと思ってここへ来ました。それで、折角来たのだから村長さんにもご挨拶をしようと思ってこちらへ参ったのです」

「これはこれは、ご丁寧に。ありがとうございます」


 そう言うと、ソロさんはペコリと頭を下げた。

 ここで俺は気になっていた事をソロさんに聞いてみることにする。


「ところで、ソロさん。一つお尋ねしてもよろしいですか?」

「何でしょうか?」

「実はこの村に入った時、のどかでいい村だなと思い感銘を受けたのですが、その時に村の人々の表情がどことなく暗いのが気になりましてね。最近、この村で変わったことがあったりしましたか?」


 俺のその質問を聞いたソロさんは、天を仰ぐような感じで上を見ると、目を閉じると、しばらくの間ジッと動かなかった。

 しばらくして、目を開けると、こう縋るような声で俺たちにこう頼んで来るのだった。


「さすがは『セイレーンの戦士』様。この村を一目見ただけでこの村に訪れている危機に気がつかれるとは。ここで『セイレーンの戦士』様と知り合えたのも何かの縁です。どうかわが村をお救いいただけないでしょうか」


 そう言うと、ソロさんはその村に訪れているという危機について話してくれたのだった。


★★★


 その日の夜半。


 俺達は『パシフィック村』近くの山の村の頂に来ていた。

 ここにはセイレーンの祭壇があり、そこに用事があったのだ。


 その用事とは。


「よりにもよって、私の祭壇に『生贄』を置くように要求してくるとか、本当ふざけた魔物ね!」


 そうやって自分の祭壇が生贄の儀式に使われていると聞いたセイレーンの怒りっぷりからもわかるように、『生贄の儀式』が行われているのだった。


 村長さんの話によると、最近この村の近くに強力な魔物が棲みついたらしい。

 それで、その魔物は時々この村を襲って来ては村の家屋が壊されたり、家畜が食わたりしているのだという。


 困った村人たちは、有志や冒険者を雇って魔物の退治を試みたのだが、ソロさんによると、「魔物退治に行った者は、魔物に待ち伏せされ、暗がりから奇襲されて、何が何だか魔物の正体もわからぬまま、訳が分からないまま大けがを負わされて、ほうほうの体で逃げ帰ってきました」ということのようだ。

 魔物の退治に失敗し、余計な被害が増えただけだったとのことだった。


 魔物退治に失敗した村人はどうすればよいか困り果てたのであるが、そんな村人たちに魔物が取引を持ち掛けてきたのだ。


「半年に一度。セイレーンの祭壇に若い娘を一人生贄に捧げよ!そうすれば村を襲うのは勘弁してやろう」


 そうやって脅してきたのだ。

 他に取る手段がなかった村としてはその要求を受け入れることに決め、その準備を進めていて、今日がたまたまその第一回目の日だったという訳で、そのことに心を痛めていた村人たちの表情が暗かったのだった。


 ここまで話を聞いた俺たちにkの村を放って置くなどということができるはずがなく。


「わかりました。俺たちがその魔物を何とかしましょう」


 と、魔物退治を引き受け、今こうしてここにいるという訳なのだった。


★★★


 ということで、魔物退治を引き受けた俺たちなのだが、魔物をおびき出すためにはまず生贄となる若い女とやらを用意する必要があった。


「「「「ジャンケン、ポン!」」」」

「「「「あいこでしょ!」」」」


 と、なぜか俺の嫁たちが生贄の座を巡ってじゃんけんで勝負をしていた。


 まあ、俺の嫁たちは若くてかわいいから生贄にふさわしいというのはわかるが、お前ら、何でそんなに生贄になりたいんだ!

 そう思った俺たちが嫁たちに聞くと。


「「「「だって、魔物に捧げられる生贄って、悲劇のヒロインっぽくて、素敵な役回りじゃないですか」」」」


 という俗な答えが返ってきたのだった。


 お前ら、何て能天気なんだ。まかり間違ったら魔物に食われるかもしれないのに。

 そうも思ったが、よく考えたら余計な心配だった。


 何せ俺の嫁たちは強いからな。今回の魔物がどんな奴か知らないが、そんじょそこらの魔物なら返り討ちにされるだけの話だろう。

 そう考えたら嫁たちの余裕ある態度にも納得がいくのだった。


 そんなわけで嫁たちのじゃんけん勝負に決着がつくのをしばらく見守ろうと思う。


★★★


「やりました!ワタクシの勝ちです!」


 結局ジャンケンに勝ったのはヴィクトリアだった。

 こいつ、普段運が悪い割にはこういう時のジャンケンには強いのだった。


 他の嫁たちは悔しそうな顔でヴィクトリアのことを見ている。

 普通なら生贄にならないことを喜ぶべきはずなのに、うちの嫁たちって……。

 とは思ったが、野暮なツッコミは止めておく。


 それはそうと、これで生贄役が決まったので、俺は喜ぶヴィクトリアを呼び、


「『神獣召喚 ミー』。『ネコを被る』発動」


 神獣召喚の魔法で神猫のミーを呼び出し、ヴィクトリアを変身させる。


「うわー、人魚さんです」


 魔法の効果でヴィクトリアは人魚の姿になった。

 海底人の女性は水中だと人魚の姿になるから、こうしておかないと魔物に生贄ではないとバレてしまうからな。

 だからヴィクトリアを人魚にしたのだった。


「それじゃあ、ヴィクトリア、来い!」

「はい!」


 俺はヴィクトリアを抱きかかえると、セイレーンの祭壇へと連れて行き、そこに置く。


 これで魔物をおびき寄せる準備は完了だ。

 後は近くの岩陰に隠れて、魔物が来るのを待つだけである。


 さて、やってくるのはどんな魔物なのだろうか。

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