第535話~エリカのお父さんの依頼をこなせ 砦にこもる魔物を退治せよ! 前編~
ミラのお披露目会があった日の二日後。
「それでは、行くぞ」
俺達はエリカのお父さんに頼まれた魔物退治に出発した。
今回魔物退治に行くのは俺と嫁たち、妹とその仲間の子たち、それにそれにセイレーンとヴィクトリアのおじいさんだ。
ホルスターと銀はエリカの実家に置いてきた。
「おばあちゃん。しばらくはホルスター君と遊びたいわ」
そうエリカのお母さんが言うので、それならばと、エリカの御両親に預けてきたのだ。
「ホルスターと銀ちゃん。おじい様やおばあ様の言うことを聞いて大人しくしているのよ」
「「はい」」
「お義母さんにお義父さん。ホルスターたちのこと、お願いします」
「任せておきなさい」
「お仕事頑張ってね」
そんな感じで子供たちのことをお父さんたちに託して、家を出たのだった。
家を出た俺たちはそのままヒッグス家の軍へと向かう。
しばらくして軍の本部へとたどり着いた俺たちは、本部の受付に到着を知らせ、入り口の所で待つ。
すると、五分も経たないうちに五十人ほどの騎士と魔法使いの集団が出てきた。
その隊長であるシュルツという若い軍人が、なぜこの軍人の名前を俺が知っているかというと実は昨日打ち合わせをしていてその時に会っているからだ、俺の前に立つと挨拶してくる。
「ホルスト様。どうもこんにちは」
「ああ、シュルツさん、こんにちは」
「本日は私どもの魔物討伐の任務にご同行していただきありがとうございます。それで、早速なのですがすでに我々の方の準備は整っております。すぐにでも出発いたしますか」
「ああ、そうだな。すぐに出るとしよう」
こうして軍と合流した俺たちは、そのまま出発したのであった。
★★★
魔物討伐に向かう道中ヴィクトリアのおじいさんの機嫌が妙に良かった。
「ふん、ふんふ、ふ~ん」
と、魔法で呼び出したスレイプニルという八本も足がある自分の愛馬に乗って、鼻歌交じりに歩いている。
このスレイプニルはこの世界では目撃例の少ない馬であり、おじいさんの素性を知っている俺や嫁たちはともかく、軍の子たちや妹とその仲間の子たちが驚いていた。
「ホルスト様。あのダービー様というお方はすごいですね。あのような馬をどこで手に入れたのでしょうか?」
「ああ、あの人は魔法で珍しい生き物を召喚できるんだよ。今回のも魔法で召喚したんだよ」
だからシュルツさんにそんなツッコミを受けたりしたが、適当に誤魔化しておいた。
それはそれとして、なぜおじいさんの機嫌が良いのだろうか。
そう思った俺はヴィクトリアに聞いてみた。
「ほら、おじい様、昨日どこかへ出かけていたじゃないですか。その時に気分が晴れるような良いことがあったみたいですよ」
とのことだった。
具体的に何があったのかまでは知らないとのことだったが、あの様子だと余程良いことがあったのだと思う。
それとは対称的に、俺たちと一緒に馬車の中で過ごしている妹の奴の表情は優れなかった。
こっちの方の理由は知っている。
ミラのお披露目会の時にオヤジたちに説教されたのをいまだに引きずっているのだ。
「お父様、相当怒っていたから、今度不祥事を起こしたら、もしかしたら勘当されるかもしれない」
そんなことを言っていたから、余程オヤジたちに怒られたのだと思う。
うちのオヤジとおふくろは妹の奴のことを甘やかしていたと思うが、今回のことはさすがにオヤジたちも見過ごせなかったのだろう。
確か一時間以上は部屋から出てこなかったから、その間に随分と絞られたのだと思う。
でも、妹のしてきたことを考えれば親にその位怒られるのは当然だった。
むしろ一時間では短すぎるくらいである。
とはいえ、親に甘やかされた妹には相当こたえたようで、現在落ち込んでいるという訳である。
でも、そうなったのは全部お前のせいだからな。
少しくらい落ち込んで、しっかり反省しろ!
俺は落ち込んでいる妹を見ながらそう思うのだった。
★★★
二日ほど馬車に揺られた後、目的地の山の手前の町に到着した。
到着すると俺は部隊をいくつかの班に分け魔物の討伐を開始する。
前回魔物の討伐に失敗したという話だったので、今回の探索にあたって俺は十分な計画を準備してきた。
「前回の軍の指揮官から事情聴取した結果、前回お前らが魔物を討伐できなかったのは、お前らが相手を舐めて無計画に突っ込んで行ったのが原因だと判明した。多分、相手は要所に斥候を配置して、それらにお前らの動向を監視・報告させ、効果的にお前らの動向を探らせたのだと思う。そこで今回はまずは敵の斥候の排除から始めるぞ」
そう軍の子たちに説明した俺は、まず部隊を騎士と魔法使いの班に分けた。
山の地図を示して、担当エリアを分けそれぞれに班を派遣させた。
俺のプランとしては魔法使いに『姿隠し』と『遮音』の魔法を使わせ、姿を隠して斥候に接近し、斥候を発見し次第騎士たちが素早く始末する。
そういう作戦だった。
これでうまく行くといいんだが。いや、きっとうまく行くはずだ。
俺はそう思いながら、出発して行く軍の子たちを見送るのだった。
★★★
結論から言うと、俺の作戦は大成功だった。
「敵魔物軍の斥候を始末しました」
斥候退治に派遣した子たちが帰ってくる度にそういう報告が上がって来たのだった。
さらに。
「敵の砦の情報を手に入れてきました」
何と敵の砦の情報を探ってきた者たちまでいたのだった。
一応、「砦の情報を手に入れることができるのだったら手に入れて来い」という指示は出していたのだが、ここまでうまく行くとは思っていなかったので、望外のことだった。
それで、その報告によると。
「なるほど。砦に門は一つだけで、砦の中央には大きめの建物があり、周囲には倉庫や兵舎らしい建物がある、か。ここまで詳しい情報を手に入れて来るとは……でかしたぞ!」
と、結構詳しい情報を手に入れて来ていたのだった。
彼らはこの情報を木に登って砦を観察することで手に入れたということだから、中々優秀だと思う。
ここまで優秀な子たちが前回失敗したのは、多分指揮官のせいだと思う。
何せ前回の指揮官は相手を舐め切っていて、部隊の子たちにとにかく前へ進んで魔物を討伐して来いとしか命令していなかったらしいからな。
本当無能にも程がある指揮官だと思う。
まあ、前回の指揮官のことはどうでもよいか。
それよりも魔物退治だ。
「部隊の隊長たちは集合せよ!」
俺はそう言って各部隊の隊長を集合させると、今回の作戦を伝えるのだった。




