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第534話~ミラのお披露目会 式自体は滞りなく進んだが、妹が両親に捕まってしまった~

 とうとうミラのお披露目会の日がやって来た。


 ということで、エリカの実家は朝からてんやわんやの大騒ぎだった。


「おい。ミラお嬢様のお披露目会に使う食材の肉、五番倉庫に運び入れろと言っておいたのにまだできていないのか?早く五番倉庫に運び入れないと肉が傷んでしまうだろうが!あそこしか冷蔵設備はないんだぞ!」

「も、申し訳ありません!」

「謝っている暇があったらさっさと運べ!」

「はい」

「ちょっとメイン会場の飾りつけ用のカーテンが何でこんな所に置いてあるのかしら。確か、昨日までに飾りつけは済ませておきなさいと言っていましたよね?」

「すみません。手違いでできておりません」

「手違い?この程度の指示も満足にできないというのですか?」

「すみません。今すぐやってしまいます」


 と、こんな感じで屋敷中の使用人たちが一生懸命走りまわっていたのだった。

 俺はその光景を、皆大変そうだな、と人ごとのように見ていたのだが、この騒動にすぐに巻き込まれる羽目になってしまった。


「旦那様、私たちも準備しないと」


 そうやってエリカたちが俺に準備するように促してきたからだ。


 エリカたちには逆らないし、今日は息子の嫁になる子のお披露目会だしということで、俺も渋々と準備を始める。

 服装のチェックをしたり、客の対応の準備をしたりと色々とやらされた。


 ちょっと面倒くさい感じもしたが、これもかわいい息子の嫁のためだと諦め、お披露目会が始まるまで頑張ることになったのだった。


★★★


 夕方になるとミラのお披露目会が始まった。

 ヒッグス一族の本家の娘のお披露目会と言うだけあって、一族中からお祝いの人たちが駆けつけてきた。


 ということで。


「ユリウス様。ヘレン様。この度は御息女の御誕生、おめでとうございます」

「「ありがとうございます」」


 屋敷の入口ではエリカのお兄さん夫婦が頑張ってお客さんんに挨拶をしていた。

 額に汗を流しながら次から次へとくるお客さんたちの対応をしていた。とても忙しそうだ。

 でも、まあ仕方がない。だって今回はお兄さんたちの娘のお披露目会なのだから、お兄さんたちが頑張るしかないのだ。


 え?お兄さんたちはそれとして、エリカのお父さんたちはどうなのかって?

 もちろん、お父さんたち、それにおじいさんたちも忙しく挨拶をしているぞ。

 ただし、彼らは入り口ではなく会場の一番の上座で椅子に座ったまま一族の相手をするのだった。


 何せお父さんは現当主でおじいさんは前当主なのだから、格式的にもこうやって上座で一族から挨拶を受けるのが普通なのである。


 そんなお兄さんたちを横目に俺としては、のんびりとしたかったところなのだが。


「旦那様。何をなさっているのですか。私たちもお客様の相手をしないといけませんよ」


 と、エリカに引っ張られてお兄さんたちの横に連れて行かれて一緒に挨拶させられた。


 これもよく考えたら当然だった。

 ミラはエリカの姪っ子なのだ。だから俺とエリカが挨拶から逃げられるわけがなかったのだ。


「この度はミラ様のお誕生、おめでとうございます」

「「ありがとうございます」」


 ということで、俺とエリカもそんな風に挨拶をするのだった。


 俺達がそうやって苦労している横では、他の嫁や子供たち、セイレーンとヴィクトリアのおじいさんがテーブルに座ってのんびりとお茶を飲みながらおしゃべりしていた。


「今日のパーティーではどんなごちそうを食べさせてくれるのかしら」

「楽しみですねえ」


 そんな感じで今日の晩御飯を話題にして時間を潰していた。


 まあ、ヴィクトリアたちは完全にお客様扱いだし、ホルスターの出番は後だからこの状況は仕方がないのだが、それにしても羨ましかった。

 できる事なら変わってほしい位だ。

 ただそれが無い物ねだりであることは俺も理解しているので、お披露目会の本番が始まるまでは頑張ろうと思う。


★★★


 とうとうお披露目会の本番の時間になった。

 お披露目会の本番はエリカのお兄さんの挨拶から始まる。


「この度は私の娘ミラのお披露目会にお集まりいただき、ありがとうございます。私の娘ミラは……」


 そんな感じでお兄さんが挨拶をし、続けてエリカのお父さん、おじいさんと挨拶をする。


「この度は私の孫のミラの……」

「この度は私のひ孫のミラの……」


 そうやって二人の挨拶が終わった後は再びお兄さんの順番となり、今度はミラとホルスターの婚約の発表をする。


「それではここで重要なご報告をさせていただきます。今回、私の妹エリカとその夫のホルストの息子であるホルスターとの婚約が正式に決まりました。ホルスターはまだ幼いながらも……」


 そういった感じでお兄さんが婚約の発表を終えると、最後に「それではホルスターとホルストから皆様に挨拶いたします」と紹介があり、それに応えて、俺とホルスターが順番に挨拶をする。


「次期ご当主様よりご紹介いただきましたホルストです。この度私の息子のホルスターと本家のお嬢様であるミラ様の婚約が正式に決まりました。ホルスターはまだ幼く未熟ではありますが、これからはミラ様と二人ヒッグス一族の将来を支えて行ってくれると信じております。皆様におかれましても、ホルスターに目をかけてくださいますよう、よろしくお願いします」


 そうやって挨拶し、最後にぺこりと頭を下げた俺は、ホルスターの肩を叩くと、「ホルスター、皆さんに挨拶しなさい」と、ホルスターに挨拶をするように促す。

 それに応えてホルスターは。


「ホルスター・エレクトロンと申します。この度、私とミラ様が婚約いたしました。皆様、よろしくお願いします」


 と、立派に挨拶をしたのだった。


 ホルスターの挨拶で会場中が拍手の音に包まれる。

 特にエリカとエリカの実家の家族の方たちの拍手の音が大きく、手が腫れそうな勢いで拍手をしていた。

 多分ホルスターが子供ながらも立派に挨拶をしたのが嬉しいのだと思う。


 その気持ちは俺も同じで、我が子が立派に務めを果たしてくれたことに感動した。

 これを親バカだと思う人もいるかもしれないが、言わせたいやつには言わせておけばよい。

 そんな悪口程度で俺の息子への気持ちは揺るがないのだから。


 まあ、俺の気持ちなんてどうでもいいか。

 それよりも、これでお披露目会の本番の挨拶は終わりだ。

 後は、食事会だけなのでゆっくりするとしよう。


★★★


 食事会は賑やかに行われた。


 まあ、今回は本家の長女であるミラのお披露目会だから一族中から人が集まっている訳なので、人が多くて賑やかなのは当然だ。

 それに伴い出された料理も豪華なものだった。


「これはレッドドラゴンのお肉ですか?おいしそうです」


 ヴィクトリアが料理の置かれたテーブルを見て、今日はビュッフェ形式なのだ、驚いている。

 そう何とレッドドラゴンの肉が並んでいたのだ。

 この世界ではドラゴンの肉は美味しくて高級品なのは周知の通りだが、レッドドラゴンは数が少なく、それに合わせて討伐数も少なくて普通のドラゴンの肉よりも高額なのだ。


 というか、あのレッドドラゴンの肉って、昔俺が討伐した奴だったりして……。

 いや、最近レッドドラゴンが討伐されたという話を聞かないから、その可能性はかなり高いな。

 俺がそう思うくらいには世の中に出回る量は少なかった。

 実際、俺が昔狩ったレッドドラゴンもギルドが冷凍して保管していて、それが少しずつ売られているみたいだし。


 とにかく、そんな貴重な肉を惜しげもなく出してくる所にお父さんのやる気を感じられたのだった。

 ということで。


「ヴィクトリアさんもセイラさん(セイレーン)もレッドドラゴンの肉が食べたいからと言って、独り占めしてはいけませんよ」

「「は~い」」


 エリカにたしなめられたヴィクトリアとセイレーンの二人は軽く了解の返事をすると、レッドドラゴンの肉を取りに突撃して行くのであった。


 他の嫁たちや妹の仲間の子たち、ヴィクトリアのおじいさん、子供たちも、


「今日のご飯は美味しいですね」


と、皆上機嫌で楽しそうにやっているみたいだし、ちょっとした苦労もあったけど、今日のお披露目会に参加して良かったと思う俺なのであった。


★★★


 そんな中、一人あくせく働くやつがいた。

 もちろん、妹の奴だ。


「お酒はいかがですか?食べ物をお取りしましょうか?」

「ああ、頼むよ」


 そんな感じで、愛想笑いを振りまきながら参加者たちにお酒や料理を配る役目をしていた。

 一応メイド服ではなくちゃんとしたドレスを着ているので、使用人というよりは他の客に良いように見られたいので頑張っている参加者という感じだった。


 妹がこんなことをしているのはもちろんエリカの指示である。


「レイラさん。あなたのしでかしたことは一族の人たちにもう知れ渡っているのですよ。ですから一族の中であなたの評判は決して良くはありません。でも、あなたは騎士団の子を婿にしてここで生きて行くのでしょう?でしたら、この機会に一族の方々を接待して、あなたが反省して頑張っていますよという姿勢を一族の方々に見せておきなさい」


 と、指示があったので、自分が楽しむのはほどほどにして一生懸命働いているという訳なのだった。


 お前、人が働かなくてもいい時に働かなければならないなんて、本当不幸だよな。

 俺は一生懸命接待にいそしんでいる妹を見てそんなことを思ったが、妹に待っていた不幸はこれで終わりではなかった。


「「レイラ!」」

「あっ!お父様。それにお母様」


 何と、妹の奴が俺のオヤジとおふくろにばったりと遭遇してしまったのだった。

 これは俺的には全く予想していない事態だったのだが、よく考えれば起こりうる可能性が高い事象だったのだ。


 今日のミラのお披露目会ではホルスターの婚約発表も一緒にやった。

 そんな大事な会にホルスターの祖父母であるオヤジやおふくろが来ないわけがなかったのだ。


 ということで、妹の奴とオヤジたちが久々の再会を果たすことになったわけだが、会うなり、妹の奴はオヤジたちに怒られることになった。


 まあ、当たり前だ。

 修道院を出た後、冒険者になるとか言って一度も家に帰らず好き放題にやって親に心配をかけまくった上、借金を作ったりして俺やエリカに迷惑をかけまくったのだから。

 それらの経緯はエリカのお父さんからオヤジに全部伝わっているので、オヤジが妹の奴に怒るのは当然なのだ。


 実際。


「レイラ!修道院を卒院した後、私たちの所へ一度も顔を出さないとはどういう事なんだ!本当、心配をかけおって!しかも、ホルストたちにまで迷惑をかけたというではないか!いい加減にしなさい!」

「お父様の言う通りですよ。お母様もお父様もずっとあなたのことを心配していたのですよ。それなのにあなたときたら……少しは反省しなさい!」

「お父様、お母様。ごめんなさあああい!」


 オヤジとおふくろに怒られて、妹の奴泣いちゃったしね。

 さらにそれだけでは終わらず。


「こっちへ来なさい!」


 と、オヤジに引っ張られて妹の奴どこかへ連れて行かれちゃったし。


 多分、これからこの屋敷のどこかの部屋を借りて、オヤジたちのお説教タイムが始まるのだと思う。

 かわいそうだが、しょうがないよね?

 今までお前がしてきたことのツケを支払う時が来た。それだけの話なのだから。


 そんなことを思いながら、俺はオヤジたちに連れて行かれる妹の背中をただ見守るだけなのだった。


★★★


 妹の奴が俺のオヤジに連れて行かれるなどのハプニングもあったお披露目会も日付が変わる前には終了した。


「それでは、失礼します」


 そう言いながら、次から次へと客たちが帰って行く。


「本日はお越しくださり、ありがとうございました」


 そんな客たちをエリカのお兄さん夫婦と俺とエリカの四人で見送っている。

 まあ、今日はミラのお披露目会とホルスターの婚約発表があったからな。

 ミラやホルスターの親である俺たちは最後まで客の接待をしなければならないのでこうしているという訳だ。


 そうやって次々と客を送り出し、そろそろお開きかなと思ったころ。


「ホルスト君、いいかな?」


 と、エリカのお父さんに声をかけられた。


「何でしょうか?お義父さん」

「実はね。ホルスト君たちに頼みがあるんだ」

「頼みですか?」

「うん。実はね、最近うちの領内のとある山にね、魔物が出現して旅人や商人が襲われて困っているんだ。それで、ホルスト君たちにその魔物の退治をお願いしたいんだ」


 どうやら領内に魔物が現れたので、お父さんは俺たちにその魔物の退治を頼みたいようだった。


 それはいいのだが……少し腑に落ちないことがある。

 うちには騎士団や魔法使いも大勢いるのにそいつらはどうしたんだ。


 その点をお父さんに聞いてみると。


「うん。実はもう一回派遣したんだけど、失敗したんだよ」

「失敗……ですか?」

「そうなんだ。若い連中を訓練がてら送り込んだんだけど、相手の魔物に負けてすごすごと帰って来たんだよ。どうやら連中、山の中に砦を築いて、それを利用して軍を追い払ったみたいなんだ」


 ヒッグス家の軍ともあろう連中が魔物に負けて逃げ帰って来たのか。

 それはさぞかしお父さんも落胆したことだろう。


 それはそれとして、精強なヒッグス軍を追い返すとか中々相手の魔物もやるようだ。

 これではお父さんも悩ましいことだろう。


 そう考えた俺はお父さんの依頼を引き受けることにする。


「わかりました。そういう事なら引き受けますよ」

「本当かい?」

「ええ、もちろんです。ついでに、その任務に失敗したとかいう連中も連れて行って、魔物退治のイロハを仕込んでおきましょうか」

「そこまでやってくれるのかい?」

「はい」

「では、よろしくお願いするよ。すぐにでも軍に連絡して、出発の準備をさせることにするよ」


 これでお父さんとの話はまとまった。

 この後は部屋へ戻ってゆっくり休んで、明日にでも嫁たちや軍と依頼の打ち合わせをすることにしよう。

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