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第530話~一番星に願い事をする嫁たち そして、妹メイドをする~

 ヴィクトリアのおじいさんの話が終わりしばらくくつろいだ後は、天空の塔を降りた。

 俺としては魔法で一気に降りようかと思って待ち構えていたのだが。


「折角なので、風景を楽しみたいので歩きます」


 と、うちの女衆が言い始めたので歩いて帰ることにした。


 お前ら、リネットとネイア以外さっきまで辛そうにしていたのに、帰りの方が楽だと思った途端強気になったな。

 俺はそんなちょっと皮肉めいたことを思ったが、もちろん賢い俺はそんなことを口に出したりしない。


「帰りは暗くなるかもしれないから気をつけるんだぞ」


 そう優しい言葉をかけて男としての懐の深さを見せた後は、大人しく皆について行くのみである。

 歩きながら女たちは楽しそうに話していた。


「リネットさん、一番星が見えますね。素敵ですね」

「本当だね。きれいだよね」

「知っていますか。エルフの国では、東の一番星に願い事をすると、願いを叶えてくれると言い伝えられているんですよ」

「へえ、ネイアちゃんの国ではそうなんだ」

「ネイアさん、それは本当ですか!」


 今もそうやってネイアの話に乗っかって行き。


「東の一番星さん。願いを叶えてください!」


 全員で揃って東の一番星とやらに一生懸命お願いしていた。

 女の子らしくて、とてもかわいらしい光景である。

 男の俺としてはとても癒される限りである。


 ただ一つ解せなかったのは。


「東の一番星様。今日の晩御飯のデザートはチーズケーキがいいなあ」


 と、セイレーンの奴までお祈りしていたことだった。


 神様として能力不足なヴィクトリアと違って、お前は立派な神様だろうが!。

 どちらかというと、願いを叶える方だろうが!

 しかもチーズケーキって何だよ。この前、商品の売却代金をやったんだから、自分で好きなだけ買えよ!


 そう思ったが、もちろんそんなことを口には出さない。

 何せ俺は利口だからな。セイレーンの怒りを買うようなことをしたりしない。


 代わりに俺も一番星にこう祈っておいた。


 一番星様。どうかセイレーンが今後大人しくなりますように!


★★★


 塔から降りた後は食事へ行った。

 天空の塔のあるシエラの町は観光都市でるため、観光客向けのレストランが多い。

 そして、それらのレストランは俺の嫁たちが大好きな観光ガイドブックに載っていたりする。


「ワタクシは今日は塔に登って疲れたので、がっつりお肉が食べたいですね」

「私は美味しいお酒の飲めるレストランがいいですね」

「私は断然おいしいケーキが食べられる店がいいわね」


 そんな嫁たちとセイレーンによる厳正な審査の結果。


「今日はこの町唯一の三ツ星レストラン『シエラの園』で食べましょう」


 ということで落ち着いたのだった。


★★★


 レイラです。

 今、私はレストランでメイドをしています。


 え?意味が分からないって?

 いや、そのままの意味ですよ。私は現在レストランでメイドをしているんです。


 今兄貴たちと私の仲間たちは『シエラの園』というレストランで絶賛食事中です。

 ここで大きな個室を借りて皆で食事中なのです。


 しかも兄嫁たちが注文したのはこのレストランで一番高いメニューです。

 こういう大口の顧客の場合、レストランの方も気を利かせてくれてウェイターなどをつけてくれたりするものなんですが。


「私どもには世話係のメイドがいますので」


 と、兄嫁が断わってしまいました。

 兄嫁の言うメイドとはもちろん私のことです。


 ということで、皆が豪勢な料理を食べるのを横目に私は一人皆のお世話係をしています。

 兄嫁から支給されたメイド服を、そのメイド服は私のサイズにピッタリのものでした……というか兄嫁は何で私の体のサイズを知っているのでしょうか……恐!


 まあ、それは一旦置いておくとして、メイド服を身に着けた私は、汗水たらして働きます。


「妹ちゃん、メインのお肉を食べちゃったので、おかわりを注文してくれませんか?」

「はい!ただいま!」

「レイラさん、ワインが空になったのでもう一杯くれませんか?」

「はい、畏まりました」


 という感じで忙しく働いています。


 私がこうやって忙しく働く羽目になったのは、私に対する罰な訳ですが、それにしてもひどすぎると思いませんか?

 いくら罰だからといって、私だってお腹が空いているのに、そんな私に食事も食べさせずにこうやって働かせるとか……兄嫁は鬼です!

 悪魔です!いや、魔王です!


 私はそうやって心の中で兄嫁に対して毒づいていましたが、それもしばらくの間でした。

 私の方のお腹の減りが極限に達してそんな元気がなくなってしまったからです。


 皆、いいなあ。私もご飯食べたいなあ。

 最後には愚痴の感情もどこへやら、そんな情けない気持ちでいっぱいになりながら淡々とお仕事をしていました。


 そして、皆が食事を終えた頃、兄嫁が私の側にやって来てこう言いました。


「レイラさん、今日の仕事はこれで終わりです。別室にあなたの分の料理は用意してもらっていますから行ってご飯を食べてきなさい。もちろん、メニューは私たちと同じ物を頼んでいますからね」

「え?エリカお姉さん。私にもあの御馳走を食べさせてくれるのですか?」

「ええ、当たり前じゃないですか。一応あなたも一緒に旅行に来ているのですから、仕事さえきちんとこなせばその辺で差をつけたりしませんよ」

「やったー!」


 皆と同じものが食べられる!

 そう思った私は小躍りして喜びます。


 そんな私に対して兄嫁はさらに続けます。


「私たちは先にホテルに行って美容マッサージをしてもらっていますからね。あなたの分も支払っておいてあげますから食事が終わったらあなたもホテルに合流して美容マッサージを受けなさい」

「え?私もその美容マッサージを受けさせてもらえるのですか?」

「まあ、あなたもフレデリカさんたちも嫁入り前で大切な時期ですからね。美容マッサージを受けて、旦那様となる人たちに気に入ってもらえるように頑張りなさい」


 兄嫁の話を聞いて、私の心はさらに喜びに沸いた。


 ノースフォートレスの町にも美容マッサージとかそういった施設はあるのだが、私も仲間たちも行ったことがなかった。

 一度行ってみたいとはみんな思っていたのだが、お値段が高いのと心理的な敷居が高いので行ったことがなかった。

 それがただでさせてもらえるというのだから、私の喜びは大変なものであった。


「レイラがご飯食べるまで私たちも待ってあげるから、一緒に美容マッサージへ行こうよ」


 その上、仲間のみんなが私が食事を終えるまで待ってくれ、一緒に美容マッサージへ行こうと誘ってくれたのだった。

 これには私は驚いた。てっきり自分一人で寂しく美容マッサージを受けるのだと思っていたからだ。

 だから私は仲間にお礼を言うのだった。


「みんな、本当にありがとう」

「いいじゃない。私たち仲間なんだから」


 ぺこりと頭を下げてお礼を言う私に対して、仲間たちはそう言って私のことを気遣ってくれるのだった。


 この光景には兄嫁も感じいったらしく。


「レイラさん。良い仲間を持ちましたね。これからも皆で仲良くするのですよ」


 と、褒めてくれたのでした。


 これで、兄嫁の許可ももらったことだし、私は美容マッサージを楽しむつもりだったのですが、ここで私の悪い癖が出てしまいました。

 いつもの良いことがあったら調子に乗るというやつです。


 おかげで、また兄嫁に怒られることになったのですが、それはまた別の話です。

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