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第525話~何だか、妹の様子がまたおかしいんだが……前編 レイラ、なんでお前急に髪を切ったんだ?~

 海底王との謁見を無事に終えた俺たちは再びノースフォートレスの町へと戻ってきた。


 次の目的地である海底火山へ行くためには潜水艇が必要だ。

 だが、その肝心の潜水艇は現在修理中である。

 ということで、今のうちに休んで英気を養っておこうと考えた俺たちはノースフォートレスへと帰って来たわけだ。


 別にトリトンの町で休んでも良かったのだが、あそこでは俺たちは完全にお客様扱いで少し気が休まらない時があるからな。

 何せトリトンの町を歩けば、「セイレーンの戦士様」と、町の人たちに拝まれるようになってしまったからな。

 この状況はさすがの俺たちでもしんどかった。


 それだったら拠点であるノースフォートレスの町の方がのんびりできると考えてこちらへ戻って来たという訳だ。

 そんな訳で、朝早くトリトンの町を立った俺たちはノースフォートレスの町へと戻って来た。


 そして、そのまま自宅へと入り、とりあえず荷物を置いて、朝ごはんを食べることにする。

 今日の朝ご飯は焼き立てのパンとウィンナーとサラダと牛乳だ。


 このうちのパンと牛乳は先程町で買ってきたものだ。

 パンはよく利用する近くのパン屋で買ったもので、焼き立ての小麦粉の香りがとても香ばしい逸品だった。

 牛乳も今日の朝牛から搾った搾りたての物らしく、とてもコクがあっておいしかった。

 サラダは総菜屋で買ったものだが、ウィンナーはエリカの実家製の物で、うちの家族の大好物だったので久しぶりに食べることができてみんな喜んだものだった。


 ということで、シンプルなメニューながらも十分に朝食を楽しむことができた俺たちは満足したのだった。


★★★


 朝飯を食べた後はリネットの実家に出掛けた。

 海底王国で買ったお土産を渡すためだ。


「お父さん、お母さん、ただいま!」

「おお、帰って来たか」

「リネット、お帰りなさい」


 リネットが先頭に立って実家に入って行くと、リネットのお父さんとお母さんは娘を温かく出迎え、娘を抱きしめている。

 俺はしばらく待って、リネットの御両親が娘を十分にかわいがって満足したのを確認してから二人に話しかけた。


「リネットのお父さんとお母さん。お久しぶりです」

「おう、お前も元気そうで何よりだ」

「ホルスト君も元気そうでよかったわあ。他のみんなもね」

「はい、おかげでみんな元気にやれています」

「それで、今日は皆で顔を見せに来てくれたの?」

「ええ、それもあるのですが、人魚の国へ行ってきたのでそのお土産を渡そうと思って来たんですよ」

「本当?うれしいわあ。人魚の国のお土産なんて初めてもらうわ」

「ははは、そうですよね。普通は簡単に行けないですからね。だから、俺たちも物珍しくて色々と買ってきたんですよ。ほら、ヴィクトリア」

「ラジャーです」


 海底王国で買ってきたお菓子や貝殻やサンゴの髪飾り、良い香りの海藻で造られているシャンプーや石鹸などを出して渡しておいた。


 ちなみに、言っていなかったがこれらの品は、この前一旦帰ってきた時にエリカの実家にもお土産として渡しておいたぞ。

 もちろん、とても珍しい品ばかりだったのでエリカの家族は喜んでくれていたぞ。


 当然、リネットの御両親たちも。


「おお、これは珍しいものばかりだな。ありがとうよ」

「あら、この髪飾りなんかとてもいいわね。今度鍛冶屋組合の奥様方で集まって奥様会をする予定だから、その時にでもつけて行こうかしら?」


 と、大喜びだった。


 俺はリネットの御両親がそうやって喜んでくれている姿を見て、こうやってお土産を買って来て良かったなと思うのであった。


★★★


 リネットの実家には五時間ほどいた。

 久しぶりにリネットの御両親と俺たちで雑談をして、セイレーンとヴィクトリアのおじいさんの紹介をして、昼ご飯をごちそうになったらその位の時間が経っていた。


 ちなみにリネットの御両親とセイレーンたちの紹介はつつがなく行われたぞ。


「リネットのお父さんとお母さん。こちらがヴィクトリアの親戚のお姉さんのセイラさんとおじいさんのダービーさんです。それで、セイラさんとおじいさん。こちらがリネットのお父さんのフィーゴさんとお母さんのマリーさんです」

「セイラさんにダービーさん、初めまして。リネットの父のフィーゴです。よろしくお願いします」

「リネットの母のマリーです。セイラさんとダービーさん、これからよろしくお願いします」

「フィーゴさんにマリーさん、初めまして。ヴィクトリアの祖父のダービーです。よろしくお願いします」

「セイラと申します。フィーゴさんとマリーさん。よろしくお願いします」


 こんな感じでお互いに紹介し終わった後は、セイレーンとおじいさんも俺たちとリネットの御両親との雑談に加わって楽しくやったものだ。


 セイレーンたちを見て、俺などよくいきなり見ず知らずの人と仲良くできるなと感心するのだが、セイレーンもおじいさんも神様だけあってこの辺りの順応力は高いようだった。

 まあ、実際二人はエリカの家族やフォックスたちとも親しげに話せていたしな。

 この点はさすがだと思う。


 それとリネットの家での食事はいつも通り、肉盛り盛りの脂っこい料理だった。

 まあ、リネットの実家は鍛冶屋で体力勝負の仕事だから脂っこい料理はいつものことだし、俺達は慣れているので別に構わないのだが、セイレーンとおじいさんの口に合うのだろうか?

 そう思って見ていると。


「うん、体力勝負の鍛冶屋さんらしく豪快な料理が多いけど、具材の良さを活かした丁寧な料理ばかりだし、味付けもしっかりしていておいしいわあ。リネットちゃんのお母さんて、本当料理上手ね」

「うん。セイラの言う通りだな。私もマリーさんの料理はとても気に入ったぞ」


 と、二人ともかなりリネットのお母さんの料理を褒めていたので、かなりお母さんの料理が気に入ったようだ。


 おかげで俺たちはリネットの家での五時間を和気あいあいとした雰囲気で過ごすことができ、次の目的地である冒険者ギルドへも楽しい気分のまま行くことができたのだった。


★★★


 俺達が冒険者ギルドに着いたのはちょうど夕方くらいだった。


 ここへ来たのは、海底王国のお土産をあげるためだ。

 一回はここまで来たのに渡しそびれていたのを思い出したから、急いで来たのだった。


 ギルドの受付へ行くと、ちょうど朝受けた依頼をこなしてきた冒険者たちが帰って来て依頼の報告をする時間だったので、ギルドの受付の辺りは冒険者でごった返していた。

 そんな冒険者ギルドの賑わいを見て、なぜかうれしくなり、妙にテンションが上がってしまった俺は冒険者たちにこう言ってやった。


「お前ら、元気にしていたか?」

「あ、これはホルストさん。俺たちは元気ですよ」

「うっす。ホルストさん」


 俺の声掛けに冒険者たちが元気に返事を返してきたので、俺は彼らにさらにこう言ってやった。


「実は俺たち、今度人魚の国から帰って来たんだ」

「人魚の国?あの伝説の?さすがはホルストさんだ。すごい所へ行ってきたんですね」

「まあな。それで、お前たちのために海底王国のお菓子をお土産に買って来てやったから、遠慮せずに食えよ。ヴィクトリア」

「ラジャーです」


 そう言ってヴィクトリアにお土産のお菓子を出させると、受付の机に置いてやる。

 すると、受付の所に居た冒険者たちがお土産に群がって来た。


「ゴチになります!」

「ホルストさん、いつもありがとうございます」

「おう。しっかり食えよ!」


 冒険者たちは口々に俺たちにお礼を言いながら遠慮することなくお土産を持って帰るのだった。

 お前らのそういう遠慮がないところ好きだぞ、と思いつつ、俺はそんな冒険者たちを笑顔で見つめのだった。


★★★


 冒険者たちがお土産を持って帰るのをしばらく見届けた後、ギルドの受付にも行きお土産を渡しておく。


「ホルストさん。ありがとうございます」

「いえいえ、大したものではありませんが、皆さんで食べてください」


 そう言いながら受付にもお土産を渡し終えた俺たちは良い時間になったので帰ることにし、出口へと向かった。

 すると、よく見るやつに遭遇した。


「うん、レイラか?」

「あ、お兄ちゃん」


 それは妹とその仲間たちだった。

 出会ったのが俺たちだとわかった妹の仲間の子たちはすぐに挨拶してきた。


「「「ホルストさんにエリカさん。ヴィクトリアさんにリネットさん。ネイアさんにホルスター君と銀ちゃん。お久しぶりです」」」

「ああ、久しぶりだな。元気にしていたか」

「「「はい」」」


 と、そんな感じで元気に挨拶してきたのだが、妹の奴だけ様子がおかしかった。


「お兄ちゃんたち、お久しぶり」


 そう一言元気がない声で言ったきり、下を向いてうつむいている。

 それに普段被らないような帽子を深くかぶって頭が見えないようにしていた。

 何だろうと思った俺は妹のことをよく観察する。すると、ある事実に気がついた。


「レイラ、お前、髪の毛切ったのか?」


 その俺の質問を聞いた妹の奴は体をビクッとさせる。どうやらあまり聞かれたくない質問だったようだ。


 だが、聞かれた以上質問に答えないわけには行かなかったようで、渋々と言った感じで答える。


「うん。切ったよ。ちょっとだけね」

「ちょっと?俺にはずいぶんと切ったように見えるんだが……」

「そうかな?……まあ、そうかもね。思い切ってバッサリとショートカットにしたから」

「へえ、ショートにしたのか。思い切ったじゃないか。どれ、ちょっと見せてみろよ」

「いや、それは……恥ずかしいよお」


 俺に新しい髪形を見せろと言われた妹の奴は嫌がって、帽子を押さえて髪を見せないようにしようとしたのだが。


「ほら、見せたらいいじゃない」

「あっ」


 妹の背後から忍び寄ってきたフレデリカによって帽子を取り上げられ、そのショートヘアの髪形を俺たちに見せることになった。


「フレデリカ。何するのよ!」


 と、妹の奴は当然フレデリカに文句を言ったのだが。


「別に恥ずかしがらなくていいじゃない。折角の可愛い髪形なんだから、お兄さんたちに見せてあげたら。それに、あんたは切り過ぎたとか言っていたけど、めっちゃ可愛いと思うよ。だからお兄さんたちに見せて、褒めてもらいなよ」


 と、どこ吹く風だった。


「おっ。中々似合っているじゃないか。可愛いと思うぞ」


 実際、妹の髪型は活発な女の子らしい感じのショートヘアで兄の俺から見てもかわいいと思えた。

 嫁たちの反応も良く。


「あら、レイラさん、かわいくなったじゃないですか。短いのも夏らしくて良いですね。それにしても、長い髪が好みだったあなたが思い切りましたね」

「まあ、妹ちゃん。短いのもサッパリしていて、とてもかわいいと思いますよ」

「切り過ぎたとか自分では思っているみたいだけど、そんなことは全然ないよ。似合っているよ」

「妹さん、短いのもかわいいですよ。まあ、ロングをいきなりショートにしたので最初はちょっとだけ恥ずかしく感じるのかもしれないですけど、すぐに慣れますよ」


 と、妹の髪型を褒めていた。


 嫁たちにここまで褒められた妹の奴は悪い気はしなかったのか。


「そ、そうかな?褒めてくれてありがとう」


 そうやって嫁たちにお礼を言うのだった。


 と、ここで俺は妹の態度に違和感を覚えた。

 俺の妹は褒められたりするとすぐに調子に乗るタイプだ。

 人に褒められたりすると、すぐに調子に乗ってもっと褒めてという感じで自慢したりするような奴だ。


 それなのに、今回嫁たちに髪型を褒めてもらったのに調子に乗って自慢したりせず、妙にしおらしくお礼を言ったりしている。

 明らかに妹らしくない行動だ。


 だから、今回妹の奴が髪をいきなり短くしたりしたのには何か俺に話したくない理由があるのではないか?


 そんなことを妹の態度から感じ取ってしまったしまった俺は、妹の奴に問いただそうとした。したのだが……。


「レイラさん。髪型を褒められて素直にお礼を言うとか、珍しいこともあるものですね」


 勘の鋭いエリカが俺よりも先に妹の違和感に気がつき、先に言葉を発していた。


「エリカお姉さん。そうですかね?私だってそういう気分の時もあるんですよ」


 エリカの鋭い攻撃を受けた妹の奴は、そう言って何とか誤魔化そうとするが、エリカに対して何か後ろ暗い気持ちを抱いていたのか、そう発言する時にエリカと目が合わないように若干視線を下に向けてしまっていた。

 その妹の態度を見たエリカは、確信めいたものを妹の奴に感じたのか、さらに妹の奴を追求し始めた。


「レイラさん。長い髪が好みだとか言っていたあなたが急にショートヘアにしたりして何か変だなと思ったのですが、やはりあなたが髪を切ったのには何か理由がありますね?」

「いや、そんなことは……」

「私に嘘をついても無駄ですよ。何せ子供の頃からあなたのことは知っていますからね。あなたの態度を見れば、あなたが私に何か隠し事をしているのは丸わかりですよ。さあ、正直に話しなさい。正直に話せば、許してあげますから」

「ううう~」


 そう言いながら、妹の手を引っ張って行って、近くのレストランへ行き、そこの個室を借りて、妹とお話を始めるのであった。

 妹の奴も逃げられないと観念したのか、エリカに大人しくついて行くのだった。


 ……さて、妹よ。こうなったらエリカからは逃げられないぞ。

 大人しく白状した方が身のためだと思うぞ。

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